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  • 昭和36年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第6節 各所管別の事項|
  • 第5 農林省|
  • 不当事項|
  • 補助金

公共事業に対する国庫補助金等の経理当を得ないもの


(224)−(378) 公共事業に対する国庫補助金等の経理当を得ないもの

(一般会計) (組織)農林本省 (項)土地改良事業費 (項)農業施設災害関連事業費 (項)昭和36年発生農業施設災害関連事業費 (項)農業施設災害復旧事業費 (項)昭和36年発生農業施設災害復旧事業費 (項)北海道土地改良事業費
(組織)林野庁 (項)林道事業費 (項)山林施設災害復旧事業費 (項)昭和36年発生山林施設災害復旧事業費 (項)北海道林道事業費 (項)離島振興事業費
(組織)水産庁 (項)漁港施設費 (項)海岸事業費 (項)漁港施設災害復旧事業費 (項)昭和36年発生漁港施設災害復旧事業費 (項)北海道漁港施設費 (項)離島振興事業費
(国有林野事業特別会計) (治山勘定) (項)治山事業費 (項)特別失業対策事業費

 地方公共団体、土地改良区、森林組合等が施行した土地改良、治山施設、林道開設、漁港修築および災害復旧等の工事に対する国庫補助金または国庫負担金(以下「国庫補助金」という。)は、農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律(昭和25年法律第169号)、漁港法(昭和25年法律第137号)等の根拠法規に基づいて交付されるものである。昭和37年中、その経理および工事施行の状況について、全国の工事現場54,614箇所のうち北海道ほか32府県につきその5.5%に相当する3,017箇所(工事費17,864,174,535円、国庫補助金11,462,315,924円)を実地に検査したところ、コンクリート工事において粗悪な骨材を使用したり、配合の悪いもので施行したりしているものが多く見受けられるほか、頭首工、治山えん堤、防波堤等の工事において玉石を中詰めとしてその表面を粗悪なコンクリートで被覆したり、石垣、石張り工事において胴込、裏込のコンクリート量が設計に比べて不足していたり、防波堤根固め等の捨石工事において捨石量が設計に比べて不足していたりしているなど工事の施行が不当なもの、工事の計画が適切と認められないもの、事業主体が正当な自己負担をしていないものなとがあり、国庫補助金を除外すべきことの判明したもので除外すべき額1工事10万円以上のものが北海道ほか27府県(注) において229工事118,178,202円となっていて、前年度に比べて125工事63,013,997円増加しており、このうち国庫補助金を除外すべき額1工事20万円以上のものをあげると別表第2のとおり155件107,044,380円である。

 しかして、この種不当な事例が増加する傾向にあるのは、主として、近時大規模な災害が相次ぐなどの理由により工事量が漸増しているのに対し、事業主体とくに市町村、組合等における工事の実施体制が不十分なため、現場の指導監督が行き届かなかったり、工事の発注にあたって業者の資力、受注工事量等を十分に調査、検討しないで契約したり、工事の着手が遅延したため年度末近くに工事が集中して年度内完成を急ぐあまり適正な工事を施行することが困難となったりしていることにもよるが、なお関係当局における指導および検査等が十分に行なわれていないことによるものと認められ、とくに不当事項の多くを占める市町村等を事業主体とする間接補助事業については、検査等を実施するのは補助事業者である都道府県であるが、その実施体制が十分でないため、粗漏工事がそのまま見逃されているものが依然として跡を絶たない状況である。
 また、工事の着手が遅延し、または工事が予定どおり進ちょくせず、当該年度内に工事が完成しないばかりでなく、その一部については翌年度の第3四半期にも及ぶものがあるのに繰越しの手続きをとることなく年度内に完成したものとして実績報告書を作成するなど事実と相違する経理を行なっている事例が少なくない。

 さらに、国庫補助金の効率的な使用についても、従来からしばしば不経済となっているものにつき注意を喚起してきたところであるが、とくに漁港修築事業のうち、事業の全体計画からみて毎年小部分の工事を施行しているにすぎないため、完成までに長期間を要し、事業の効果の発揮が遅延しているばかりでなく、なかには工事の手もどりを生じたり、漁船、漁家等が著しく減少し漁港の利用態勢が失われつつあるのに当初の計画のまま工事を継続施行したりしているものなどが見受けられ、この種事業に対する国庫補助金の効率的な使用については特段の配慮をすべきものと認められる。  

(注)  別表第2に掲記した道府県のほか岡山、高知両県