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  • 昭和36年度|
  • 第2章 国の会計

是正改善の処置を要求しまたは改善の意見を表示した事項


第8節 是正改善の処置を要求しまたは改善の意見を表示した事項

 昭和36年12月から37年11月までの間に、会計検査院法第34条または第36条の規定に基づき、主務大臣に対し、不当と認めた事項につき是正改善の処置を要求し、または法令、制度、行政に関して改善の意見を表示したものは次のとおり6件である。

(1) 国立学校に所属する国有財産の管理について是正改善の処置を要求したもの (昭和37年11月14日付け37検第537号 文部大臣あて

 文部省所管の国有財産のうち国立学校に所属する財産の管理については、昭和31年および34年その是正方につき注意を促してきたところであるが、37年中、北海道ほか19大学につき実地に検査したところ、農場および演習林等の土地を長期間にわたってその使用目的にそわない農耕地または一般住宅敷地等に使用させているもの9件土地約8,773,000坪、土地および建物が利用されず遊休しているもの6件土地約86,000坪、建物延70坪、土地を長期間にわたって許可なく使用されているもの1件約150坪計16件土地約8,859,000坪、建物延70坪あり、そのうちおもな事例は下記のとおりである。
 このような事態を生じたのは、学制改革当時の事情等にもよるが、その後の財産管理が適正に行なわれなかったことによるものと認められる。ついては、国立学校所属の国有財産について検討のうえ用途廃止を適当とするものまたは行政財産の使用目的に供する必要のあるものはすみやかにそれに対する適切な処置を講じ、国有財産保有の目的に応じた用に供するように努めることが緊要である。

1 行政財産の使用目的にそわないもの

(1) 北海道大学農学部附属富良野(北海道空知郡富良野町所在)ほか4農場の土地は、明治21年ないし34年から小作農場となっていたもので、その後昭和24、25両年度に農林省へ所管換した残地3,716,191坪の大部分を従来どおり小作農場として耕作者に使用させ現在2,936,429坪に上っているが、本件土地を長期間にわたって研究目的に利用した実績が見当たらない。

(2) 北海道大学農学部附属雨龍(北海道雨龍郡幌加内町所在)ほか2演習林のうち農耕適地を明治43年ないし昭和3年から林業労務者確保等の目的で入植者に使用させ、現在4,843,965坪に上っているが、入植者が出役するのは経済的、地理的理由によるものと認められるのに、土地の使用許可の関係によるものであるとして管理している。また、本件演習林うちには小中学校、農業協同組合事務所敷地ならびに送電線路敷地および道路敷地等として使用させているものが現在641,585坪に上っている。

(3) 宇都宮大学農学部附属演習林(栃木県塩谷郡塩谷村所在)の土地7,249坪は、昭和24年5月旧宇都宮農林専門学校から引継を受けた当時から宅地および耕作地として部外者に使用させている。

2 遊休と認められるもの

(1) 大阪大学医学部附属病院白浜温泉気候療養所用敷地(和歌山県西牟婁郡白浜町所在)10,000坪は、昭和13年6月、株式会社白浜温泉土地倶楽部から寄付を受け、16年3月看護婦寄宿舎(木造セメントかわらぶき一部2階建て)1むね延70坪を建築しただけで、同地内に数箇所ボーリングを行なったが温泉が湧出しなかったなどのため土地、建物ともそのまま利用されていない。

(2) 岡山大学教育学部附属黒岩実習地(岡山県苫田郡阿波村所在)61,439坪は、昭和24年5月旧岡山師範学校から引継を受けたものであるが、うち約1,500坪に杉苗を植林したがその後全く利用されていない。

3 許可なく使用されているもの

 東京工業大学艇庫敷地(東京都台東区浅草蔵前所在)283坪は、昭和26年ごろから部外者に使用され、うち約150坪は28年11月以降そのままとなっている。

(2) 土地改良事業によって造成した埋立地等を転用する場合における造成費の回収について改善の意見を表示したもの (昭和37年6月21日付け37検第268号 農林大臣あて

 国が農地とするため買収して多額の有益費を投じた未墾地のうち、農地としないことを相当と認めたものを法令の規定に基づき買収前の所有者に買収の対価に相当する額で売り払う場合に、当該有益費相当額が全く回収されない不合理な結果をきたす事例については、さきに昭和35年度決算検査報告においてその売払対価につき法令改正の要がある旨を指摘したが、国営土地改良事業によって造成した埋立地等をその所有権を取得した者が農地以外に転用する場合にも、下記の事例に示すように、当初農業の用に供する目的で費用を投下して造成した土地が相当の期間その目的に供されていないにもかかわらず、当該造成費相当額の大部分が回収されない不合理な結果をきたすこともあるので、検討のうえ法令を改正するなど適切な処置を講ずる必要があると認められる。

1 岡山農地事務局で、倉敷市地先の公有水面1,300,129坪を農地にする目的で干拓し、このうち243,600坪を、昭和34年3月仁科某ほか63名に配分通知書を交付し、36年10月公有水面埋立てのしゅん功通知をして、その所有権を上記64名に取得させているが、上記64名は、すでに36年3月、財団法人岡山県開発公社との間に、これらの土地につきその所有権取得の日をもって売渡価格総額約6億1000万円(坪当り2,507円)による売買契約が成立する旨の予約を締結して同金額を受領している。しかるに、本件土地の造成に要した事業費は181,324,386円相当額であるのに対し、国が負担金として徴収する額は約2000万円(坪当り83円)にすぎないものである。

2 岡山農地事務局で、児島市地先の公有水面283,380坪を農地にする目的で干拓し、このうち、152,591坪を昭和34年3月中田某ほか136名に、44,141坪を36年2月浜田某ほか23名にそれぞれ売り渡しているが、上記161名は、36年4月、財団法人岡山県開発公社との間に、これらの土地196,732坪につき農地法(昭和27年法律第229号)第5条の規定に基づいて農地の転用許可を受けた日をもって売渡価格総額約4億8000万円(坪当り2,450円)による売買契約が成立する旨の予約を締結している。しかるに、本件土地の造成に要した事業費は166,227,362円相当額であるのに対して、国が売渡対価として徴収する額は約320万円(坪当り16円)にすぎないものである。

(3) 国営農業水利事業とこれに付帯する都道府県営および団体営補助事業の施行計画について改善の意見を表示したもの (昭和37年11月22日付け37検第558号 農林大臣あて

 農林省で直轄施行している農業水利事業は、昭和25年度から36年度までの間に完了したもの73地区、36年度において既往年度に引き続き施行しているもの74地区で、36年度までに累計794億6828万余円に上る多額の事業費を使用し、用水源施設、幹線水路等の基幹施設工事を施行しているものである。しかして、これら基幹施設を活用するため必要な支線水路等の付帯施設工事は都道府県または土地改良区等が国から補助を受けて施行しているが、その進ちょく状況をみると、国営工事に比べて著しく遅延しているものが多く、一般的に基幹施設工事と付帯施設工事とはその進ちょくがは行状態にあるものと認められ、なかには基幹施設工事がすでに完成し、えん堤、頭首工等により計画水量全量の取水が可能となっているのに、これに付帯する支線水路等の工事が進ちょくしていないため、多量の水が使用されないまま放流されているなど基幹施設が十分な効果を発揮することができず不経済な結果をきたしているものがある。いま、これら工事の進ちょくがは行しているもののおもな事例を示すと別表のとおりである。

 上記のように基幹施設工事と付帯施設工事の進ちょくがは行する結果となっている事態については、昭和32年度決算検査報告に掲記したところであるが、なお現在においても同様の事態が生じているのは、農業水利事業のうち、国営または都道府県営のものにあっては地元受益者の申請に基づき農林大臣または都道府県知事が施行し、また、土地改良区等団体営のものにあってはこれら団体が都道府県知事に申請しその認可を得てこれを施行することとなっているなどのため国営、都道府県営および団体営事業相互間においてこれらの計画および実施に一貫性を欠いていること、毎年度の国営事業の予算と都道府県営および団体営事業に対する国庫補助金の予算とが均衡していないことなどによると認められるので、これらの点を再検討し、各事業間に施行上のは行をきたさないよう方途を講ずることが緊要である。

別表

局別 地区名 事業区分 総事業費 36年度までの施行済事業費 着工または着工予定年度 完了または完了予定年産 進ちょく率 摘要
北海道開発局
北空知

国営

419,637,000

419,637,000
年度
25
年度
34

100
 
道営 684,080,000 35,440,000 34 44 5
団体営 438,603,000 58,673,000 26 43 13
神龍 国営 416,000,000 408,907,000 27 36 98  
道営 250,000,000 0 39 44 0
団体営 100,000,000 0 38 40 0
近文 国営 227,918,000 227,918,000 25 33 100  
道営 380,000,000 172,022,000 30 40 45
団体営 1,245,104,000 388,086,000 26 43 31
沼田 国営 500,651,000 412,651,000 26 37 82  
道営 108,610,000 0 40 42 0
団体営 192,226,000 184,326,000 26 40 96
秩父別 国営 604,000,000 373,315,000 26 39 62  
道営 215,450,000 0 40 44  
団体営 426,389,000 38,889,000 26 43  
東京農地事務局 大井川左岸 国営 1,618,536,000 1,618,536,000 22 33 100  
県営 985,384,000 525,267,000 27 38 53
団体営 1,205,000,000 373,852,000 27 39 31
龍西 国営 858,000,000 694,027,000 23 38 81  
県営 90,000,000 1,700,000 35 40 2
団体営 147,630,000 6,304,000 23 41 4
金沢〃 荒川 国営 405,951,000 405,951,000 27 33 100 胎内川の分
県営 682,600,000 337,864,000 22 40 49
団体営 273,545,000 110,412,000 28 42 40
信濃川左岸 国営 1,567,000,000 1,279,944,000 21 38 82  
県営 582,600,000 29,140,000 35 40 5
団体営 17,464,000 17,464,000 26 36 100
常願寺川 国営 339,760,000 339,760,000 16 27 100  
県営 872,200,000 129,660,000 29 42 15
団体営 621,248,000 301,645,000 26 41 49
九頭龍川 国営 750,933,000 750,933,000 22 30 100  
県営 857,600,000 326,618,000 29 40 38
団体営 1,567,640,000 238,672,000 26 42 15
名古屋〃 矢作川 国営 3,061,288,000 2,997,288,000 27 37 98  
県営 651,000,000 4,400,000 35 43 0.7
団体営 187,315,000 99,977,000 28 未定 53
濃尾用水 国営 3,431,000,000 1,722,755,000 32 38 50  
県営 1,028,000,000 0 38 41 0
団体営 625,977,000 150,266,000 27 42 24
京都〃 十津川
紀の川
(大和平野を含む。)
国営 (別に建設省施行分
2,372,447,329)
11,374,410,000
6,317,272,000 25 39 56  
県営 5,342,000,000 480,300,000 30 未定 9
団体営 1,737,538,000 16,249,000 34 未定 1
野洲川 国営 835,859,000 835,859,000 22 32 100  
県営 804,456,000 614,456,000 26 39 76
団体営 340,359,000 76,212,000 31 未定 22
岡山農地事務局 那賀川北岸 国営 448,880,000 448,880,000 22 30 100  
県営 157,900,000 125,940,000 29 37 80
団体営 56,120,000 0 37 41 0
小坂部川 国営 753,873,000 753,873,000 22 30 100  
県営 1,181,200,000 515,280,000 24 42 44
団体営 357,166,000 161,328,000 27 48 45
芦田川 国営 1,182,466,000 1,182,466,000 24 34 100  
県営 616,190,000 251,742,000 23 43 41
団体営 25,961,000 25,961,000 31 36 100
熊本〃 嘉瀬川 国営 3,201,000,000 2,384,444,000 23 40 74  
県営 400,000,000 0 未定   0
団体営 100,000,000 0 未定   0

(4) 自作農創設特別措置特別会計に所属する財産の管理について是正改善の処置を要求したもの (昭和37年6月21日付け37検第267号 農林大臣あて

 自作農創設特別措置特別会計に所属する財産の管理が適切を欠いており、その根本的是正をはかる必要があることについては、昭和33年度決算検査報告に掲記し、その後とくに改善の成果も認められない状況であったので、さらに昭和35年度決算検査報告においてこれが是正方につき特段の努力を要する旨注意を促したところであるが、37年2月、東京、名古屋両農地事務局管内に所在する既墾地2,715町3反余、未墾地27、944町6反余のうち既墾地49町1反余、未墾地2,863町6反余につき、前記両農地事務局および茨城ほか5県ならびに関係市町村農業委員会について財産管理の状況を検査したところ、検査の結果は下記のとおりであり、そのうちおもな事例は別表に掲げるとおりであるが、実地に検査しなかった既墾地、未墾地についてもほぼ同様の事態があるものと認められ、とくに無断で転用または使用されているもののうちにはこれらの事態が数年前から判明しているのに弁償金を徴収していないものもある状況であり、財産の管理はなお全般的に適切を欠いているものと認められる。
 このような事態を生じたのは、本特別会計が創設された21年当時買収または処分件数が多数に上りこれがためその処理について誤びゅうを生じたことにもよるが、その後の財産管理がとかく軽視され適正に行なわれなかったことおよび農林省の県および関係市町村農業委員会に対する指導、監督が十分でなかったことによると認められるので、これらの点を再検討し管理に万全を期することが緊要である。

1 既墾地について

(1) 農業上の用に供するため貸付けを行なっているもののうち他用途に転用されているもの

 耕作または養畜の用に供するために貸し付けている23,309件1,904町6反余のうち、45件4町3反余を実地に検査したところ、これらのうち26件2町9反余は、借受人によって無断で学校校舎、運動場、工場、住宅等の用地に転用されたり、転貸されて転借人により事務所、店舗、住宅等の用地に使用されたりしているが、これらについては、すみやかに貸付けを解除し弁償金を徴収するとともに適切な処置を講ずベきであると認められるのに、これらの処置を講じないで貸付けを継続している。

(2) 農業上の用に供しないことが明らかであるのに一時貸付けを継続しているもの

 耕作または養畜以外の用に一時供するため貸し付けている4,067件324町4反余のうち52件26町6反余を実地に検査したところ、これらのうち25件7町1反余は、住宅、学校、工場等の構造物が建設されてから長期間経過し農業上の利用に供しないことが明らかであるから、すみやかに売払い等の処理を行なうべきであると認められるのに、長期にわたり一時貸付けを継続している。
 なお、上記一時貸付けを行なっているものの使用料は、貸付期間を更新するごとに貸付地の時価を評定し料金を再計算して徴収することとなっており、毎年地価が高騰しているのに、32年度以降は使用料を改訂しないで前年度の使用料を踏襲し徴収しているため、使用料が低廉となっていると認められる。

(3) 所在または境界が不明となっているもの

 実地に検査した13件17筆8反余は、現地を確認しないで市町村の土地台帳により買収しその後も現地の確認および実測も行なわず放置しているため、所在が不明であったり、適確な地目、地積をは握することができず境界が不明であったりしている。

(4) 無断で使用されているもの

 実地に検査した91件194筆13町余は、無断で地方公共団体、会社、個人等により学校校舎、運動場、公園、事務所、工場、住宅、耕作等の用地に使用されているものであるのに、弁償金の徴収その他適切な処置も講じていない。

(5) 農耕不適地を長期間保有しているもの

 実地に検査した12件55筆3町余は、買収当時すでに道路、水路敷等の農耕不適地で買収対象にならないものを現地を確認しないで市町村の土地台帳により買収し、その後買収取消しの処置も講じないで長期にわたり保有している。

2 未墾地について

(1) 無断で使用されているもの

 実地に検査した39件135町4反余は、無断で工場、事務所、自動車教習場、学校校舎、住宅、耕作等の用地に使用されているものであるのに、弁償金の徴収その他適切な処置も講じていない。

(2) 開拓不適地を長期間保有しているもの

 実地に検査した7件47町5反余は、急傾斜地等で農業上の目的に供するに適しないものとしているのであるからすみやかに売払い等の処理を行なうべきであると認められるのに、長期にわたり保有している。

別表

1 既墾地

(1) 農業上の用に供するため貸付けを行なっているもののうち他用途に転用されているもの
 

県名

所在

種目 台帳面積 台帳価格

茨城県

水海道市


2反4畝01歩


1,154
23年7月鈴木某から買収したものであるが、中野某ほか4名に農耕目的に貸し付けたところ、34年3月水海道市に転貸され、同市はこれを市役所前広場用地として使用しているのに、貸付けを解除することもなく弁償金(37年3月までの計算額130,633円)の徴収もしていない。
神奈川〃 平塚市

5反6畝03歩

2,347

23年2月大田商事株式会社から買収したものであるが、学校法人平塚学園に農耕目的に貸し付けたところ、30年4月ごろ平塚市に転貸され、同市はこれを庭球場として使用しているのに、貸付けを解除することもなく弁償金(37年3月までの計算額2,342,152円)の徴収もしていない。
愛知〃 名古屋市 4畝28歩 312
23年10月恒川某から買収したものであるが、朝日某に農耕目的に貸し付けたところ、同人は32年4月ごろから農耕を中止し工場用地に転用しているのに、貸付けを解除することもなく弁償金(37年3月までの計算額389,113円)の徴収もしていない。
 同 名古屋市 9畝12歩 728.40
23年10月宗教法人六通寺から買収しもたのであるが、梶原某に農耕目的に貸し付けたところ、32年4月ごろ加賀木工株式会社に工場用地として転貸され、35年9月ごろ同会社が中京建鉄株式会社ほか1会社に同地上の施設を譲渡した結果その後は前記2会社の事務所および倉庫用地として使用されているのに、貸付けを解除することもなく弁償金(37年3月までの計算額575,261円)の徴収もしていない。

(2) 農業上の用に供しないことが明らかであるのに一時貸付けを継続しているもの
 
県名 所在 種目 台帳面積 台帳価格

静岡県

藤枝市ほか1箇所

田、畑

1町8畝20歩

10,124
22年7月から23年7月までの間に杉井某ほか6名から買収したものであるが、27年9月日本国有鉄道に変電所用地として貸し付け、その施設が同年11月完成しており、将来においても農業上の利用目的に供しないことが明らかであるからすみやかに旧所有者に売り払わなければならないのに、一時貸付けを継続している。
 同 浜名郡浜北町 3反8畝04歩 1,964
23年10月大東機工株式会社ほか1名から買収したものであるが、35年4月ヤマハ発動機株式会社に工場用地として貸し付け、その施設が同年5月完成しており、将来においても農耕上の利用目的に供しないことが明らかであるからすみやかに旧所有者に売り払わなければならないのに、一時貸付けを継続している。

(3) 所在または境界が不明となっているもの
 
県名 所在 種目 台帳面積 台帳価格

静岡県

静岡市


1反4畝17歩

555
22年12月堀井某から現地を確認しないで買収したものであるが、35年11月にいたり所在不明であることが判明したのに、適切な処置も講じていない。
愛知〃 春日井市 1反1畝24歩 322.56
22年10月鈴木某から現地を確認しないで買収したものであるが、36年10月にいたり境界が不明で買収当時からその一部は住宅が建設され残部は栗田某が上記鈴木某から賃借して耕作していることが判明したのに、境界の確定および買収の取消しまたは貸付けの処置もしていない。
愛知県 宝飯郡小坂井町 1反5畝 792
23年10月宗教法人若宮八幡社から現地を確認しないで買収したものであるが、36年4月にいたり境界が不明で買収当時からその一部は平野某ほか4名によって耕作され残部は県の道路敷となっていることが判明したのに、境界の確定および買収の取消しまたは貸付けの処置もしていない。

(4) 無断で使用されているもの
 
県名 所在 種目 台帳面積 台帳価格

神奈川県

平塚市


2町5反6畝04歩

10,516
23年2月および7月渡辺某ほか8名から買収したものであるが、24年4月ごろまたは30年1月ごろから平塚市により同市立花水小学校ほか2校の学校用地に使用されているのに、弁償金(37年3月までの計算額9,160,105円)の徴収その他適切な処置も講じていない。
 同 高座郡座間町 3反6畝05歩 1,032.96
23年3月および7月加藤某ほか4名から買収したものであるが、25年10月ごろから財団法人座間農場に運動場敷地として使用されているのに、弁償金(37年3月までの計算額1,443,046円)の徴収その他適切な処置も講じていない。

(5) 農耕不適地を長期間保有しているもの
 
県名 所在 種目 台帳面積 台帳価格

茨城県

鹿島郡大洋村


3反2畝05歩

830
22年12月から24年3月までの間に沼田某ほか2名から買収したものであるが、36年4月にいたり買収当時すでに2反7畝26歩は小学校、寺院の敷地、4畝9歩は山林であったことが判明したのに、買収取消しの処置も講じていない。
静岡〃 島田市 2反07歩 1,941
23年7月秋野某ほか2名から買収したものであるが、31年8月にいたり買収当時すでに島田市の排水路の敷地であったことが判明したのに、買収取消しの処置も講じていない。

2 未墾地

(1) 無断で使用されているもの
 
県名 所在 種目 台帳面積 台帳価格

神奈川県

高座郡座間町

開拓用地

4町2反7畝07歩

99,952
 

 

23年3月大蔵省から所管換を受けた旧陸軍士官学校演習場用地の一部であるが、3町9反4畝27歩は所管換当時すでに財団法人座間農場により農耕用地として使用されその後自動車教習場等の敷地となっており、また、3反2畝10歩は24年10月ごろまたは32年3月ごろから株式会社田崎ファームにより事務所、工場等の敷地として使用されているのに、弁償金(37年3月までの計算額17,876,590円)の徴収その他適切な処置も講じていない。
愛知〃 宝飯郡一宮村 開拓用地 2町7反4畝25歩 10,453
22年7月今泉某から買収したものであるが、23年10月から財団法人瑞穂協会により農耕地ならびに鶏舎、豚舎、作業所、堆肥舎および物置等の敷地として使用されているのに、弁償金(37年3月までの計算額538,602円)の徴収その他適切な処置も講じていない。

(2) 開拓不適地を長期間保有しているもの
 
県名 所在 種目 台帳面積 台帳価格

静岡県

浜名郡新居町

開拓用地

6町4反7畝25歩

44,700
22年10月大蔵省から所管換を受けた旧浜名海兵団用地の一部であるが、埋め立てて農地とするには採算が合わない池であったため土地配分計画から除外しているものであるのに、適切な処置も講じていない。

(5) 郵便局における不正行為の防止対策について改善の意見を表示したもの (昭和37年10月22日付け37検第503号 郵政大臣あて

 郵便局における関係職員の不正行為による現金等の亡失事故は、昭和30年度から35年度までの検査報告に掲記した1事項50万円以上のものだけでも90件198,556,565円に上っているが、その大部分は定額郵便貯金および通常郵便貯金に関するもので、これを不正行為者の職務別にみると内務員によるものが圧倒的に多く、このうちには監督の地位にある者の犯罪も少なくない状況である。
 これら不正行為の態様をみると、定額郵便貯金に関するものについては、その大部分は預入があった際正当な預入額を記載した郵便貯金証書(以下「証書」という。)を作成して預金者に交付するが、預入報告を少額にしてその差額を領得しているものであり、通常郵便貯金に関するものについては、その大部分は預入があった際郵便貯金通帳(以下「通帳」という。)には正当な預入額を記入して預金者に返付するが、預入報告を全くしないで全額を、または少額に預入報告をしてその差額を領得しているものおよび郵便貯金払いもどし金受領証を偽造して払いもどし金を領得しているものである。

 これら部内職員による犯罪の防止および早期発見については、かねてから種々の方策が講ぜられてきているのに、前記のとおり、毎年度亡失事故が発生し、引続き36年度においても定額郵便貯金および通常郵便貯金に関する不正行為が多数判明しており、なかには多年にわたって発見されないまま経過していたものも見受けられる状況である。これは、貯金原簿(以下「原簿」という。)と証書または通帳との照合を簡単に行なうことができない仕組みとなっていることなど現行の防犯対策になお不十分な点があるため、その間げきに乗じて不正行為が横行しているものであり、また、これらの事情と相まって預金者が払いもどしにあたってはもっぱら預入した局を利用していることも早期に発見することができない要因となっているものと認められるが、これら不正行為は、監督の地位にある者の犯罪が前記のように少なくないことに徴し、単なる局内相互けん制だけではその発生を防止することができない面もあるので、総合的なけん制制度を確立することが望まれる。

 しかして、郵政省においてこれら不正行為の総合的けん制策として現在実施しているおもなものは、定額郵便貯金における預金者に対するあいさつ状の発送と、通常郵便貯金における貯金預入報告書および郵便貯金払いもどし金受領証に対する通帳面の現在高の表示とであるが、あいさつ状についてはその発送率が低く、預払証拠書に対する現在高の表示については原簿所管庁における照合割合が低率であり、また、不正行為者がこれら防止対策をあらかじめ考慮のうえ行動していることも原因して、これらの対策は必ずしも十分に効果をあげているとはいえない状況である。
 よって、現行の諸対策になお再検討を加えるとともに、さらに、これら不正行為の未然防止を主とするけん制策として、

(ア) 証書の発行を原簿所管庁で行なう。

(イ) 金額刷込みの2連式証紙を調製しておき、定額郵便貯金預入の際これを切り離して預入申込書と証書とにちょう付する。

(ウ) 証書の用紙を金額段階別に調製する。

(エ) 通常郵便貯金預入の際、預金者に預入伝票を自筆させる。

また、早期発見を主とするけん制策として、

(ア)証書または通帳の引上げを行ない原簿と照合する。

(イ)原簿の現在高を預金者に通知する。

(ウ)業務考査または会計監査等のため臨局の際、当日来局した預金者の通帳の残高を記録して原簿と照合する。

等の処置を講ずることも検討し、もって郵政省内部における総合的なけん制制度を一層強化し、不正行為の防止および早期発見に努める要があると認められる。

(6) 建設省直轄河川工事において河川の敷地とするため買収した土地の管理について是正改善の処置を要求したもの (昭和37年11月14日付け37検第538号 建設大臣あて

 直轄河川工事において河川の敷地とするため買収した土地は、当該河川工事の施行により事実上河川の敷地となったときは河川敷地編入のため逐次すみやかにその河川を管理する都道府県知事に引き継ぎ、河川敷地編入前の買収用地(以下「工事用地」という。)は、建設省所管の国有財産(公共用財産)として管理することとなっている。
 しかして、本院においてこれら工事用地の管理の状況を実地に検査したところ、無断で使用されているもの、引き継がれていないのに県知事において占用を許可しているもの、民有地との境界が明らかでないものが見受けられ、全般に実情のは握が不十分であって工事用地の管理が適切を欠いていると認められた。よって建設省にその全般的な調査を要求したところ、同省においても資料不備等により買収面積の全体は明確でなく、また、現地の実情がどのようになっているか不明なものもあり、現存する資料によって判明している状況(昭和37年9月末現在)は、買収面積は約178,000反(53,400,000坪)で、そのうち半数を河川敷地として都道府県知事に引き継ぎ、引継可能と認められる約57,000反(17,100,000坪)を含む残りの約90,000反(27,000,000坪)が工事用地となっている。

 しかして、このうち判明しているものだけについてみても、無断で家屋、倉庫、工作物等の敷地に使用されているものが約280件24,000坪、農耕地に使用されているものが約3,000反(900,000坪)あり、また、引き継がれていないのに県知事において占用を許可しているものが家屋、倉庫、工作物等の敷地で約510件50,000坪、農耕地で約1,500反(450,000坪)に上っており、その事例をあげると下記のとおりであって、その管理が著しく適切を欠いているものと認められる。
 このような事態を生じでいるのは、買収後の財産管理がとかく軽視され、建設省における管理体制が整備されていないことや、前記工事用地については管理台帳整備の定めがないことなどによると認められるので、これらの点を検討のうえ管理の万全を期することが緊要である。

1 無断で使用されているもの

 東北地方建設局で管理する釜房ダム工事用地は、昭和18年8月から19年3月までの間に田畑等891反(267,300坪)および宅地22,008坪を買収し、その後工事中止となったまま現在にいたっているが、買収地の現況は、農耕地、山林、宅地等として無断で使用されており、また、境界ぐいが全くないため民有地との境界が明確でない。
 また、関東地方建設局で管理する横浜市鶴見区栄町地先の鶴見川工事用地は、河川高水敷および堤防用地として25年に4,563坪を買収したものであるが、28年ごろから家屋敷地として不法占拠されている事態が発生し、34年ごろには占拠面積614坪世帯数108戸に上っている状況で、37年8月調査したところ、占拠面積は876坪と増加し、世帯数は103戸となっている。
 なお、同様な事例が鬼怒川ほか33河川にあり、工事用地総計56,675反(17,002,500坪)ののうち2,152反(645,600坪)が農耕地等に無断で使用されている。

2 引き継がれていないのに県知事において占用を許可しているもの

 東北地方建設局で管理する最上川工事用地6,656反(1,996,800坪)のうち1,621反(486,300坪)は農耕地等に使用されているが、本件用地はまだ県知事に引き継がれていないのに山形県においては県知事の管理に属するものとして占用を許可しているものである。
 なお、同様な事例が天龍川ほか3河川において141反(42,300坪)ある。