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  • 昭和36年度|
  • 第3章 政府関係機関その他の団体の会計|
  • 第2節 各機関別の事項|
  • 第2 日本国有鉄道|
  • 不当事項|
  • 工事

機械損料等を過大に積算したため工事費が高価と認められるもの


(569)−(571) 機械損料等を過大に積算したため工事費が高価と認められるもの

(工事勘定) (項)東海道幹線増設費 (項)諸設備費
(債務負担行為) (工事勘定)東海道幹線増設費

 日本国有鉄道東京幹線工事局ほか2箇所で、機械損料等を過大に見込んだため工事費が高価となっていると認められるものが次のとおりある。

(569)  日本国有鉄道東京幹線工事局で、昭和36年4月、指名競争後の随意契約により飛島土木株式会社に東海道幹線品川駅構内路盤その他工事その2を20,640,267円(当初契約額27,189,000円)で請け負わせ施行しているが、ブルドーザのか働時間の算定が過大に失したため予定価格が過大となり、工事費が約410万円高価となっていると認められる。
 本件工事は、品川駅構内57,080平米の埋立用として同幹線工事局が別途施行している南郷山ずい道工事で発生したずりを運搬するために、真鶴駅構内の集積場に搬入された129,813立米を同駅で工事用臨時列車に積み込むものであるが、その予定価格の算定内容についてみると、積込み作業にブルドーザD80を1台およびD50を2台使用し、1日平均392立米を積み込むこととし、これに要する時間を機械整備時間等を含め3.5時間と見込んだほか、集積場に搬入されるずい道ずりは積込み等のための時間を除き3時ごろから18時ごろまでの間常時ブルドーザ1台でかき寄せる要があるとし、その所要時間を推定によりD80は3時間、D50は4時間と見込んで1日当りか働時間をD80は6.5時間、D50は7.5時間とし、その3台分の機械損料等を立米当り160円と算定している。

しかしながら、本件ずい道ずりは約700平米のプラットホームのずり集積場にダンプトラックで搬入集積され、おおむね翌日には貨車積みされるものであるから、搬入の際は逐次一方から集積するのが通常であり、このようにすれば常時かき寄せ整理を行なう必要はなく、集積場の地形等からみて1日当り積込量のうち約240立米を平均10メートル程度かき寄せすることとすれば足りたものと認められる。
 いま、仮にこれにより修正計算すれば、かき寄せ作業時間は1台当り1.2時間、したがって各ブルドーザのか働時間は積込みおよびかき寄せ作業時間を含め4.7時間で、工事費は立米当り127円総額16,486,251円となり、本件工事費はこれに比べて約410万円高価となっていると認められる。

(570)  日本国有鉄道下関工事局で、昭和36年1月、指名競争契約および指名競争後の随意契約により株式会社技建社および大成建設株式会社に博多駅改良土工その他その1工事および博多駅改良土工その他その2工事を計107,292,663円(当初契約額95,700,000円)で請け負わせ施行しているが、機械損料等の積算が適切でなかったため、ひいて工事費が約1140万円高価となっていると認められる。
 本件両工事は、いずれも博多駅の移転、改良に伴う路盤構築等を施行するものであるが、予定価格の積算にあたり次のとおり過大と認められるものがある。

(ア) 両工事の盛土資料のうち105,936立米の運搬は6トン積みダンプトラックによるものとし、ダンプトラックの価格を1台2,550,000円、積載量を地山切りくずし後の膨張土量で3.6立米としてその損料を22,086,194円、燃料その他を10,060,966円計32,147,160円と積算している。
 しかしながら、本院調査によればダンプトラックの価格2,550,000円は6.5トン積み車の価格であって、本件積算当時における6トン積み車の市場価格は1,850,000円から2,050,000円程度となっており、これに比べて本件評価額は過大と認められる。

 また、6トン積みダンプトラックの1台当り積載量を膨張土量で3.6立米としているが、35年4月から本件と同一場所で同種工事を施行している東京操機工事事務所が同年8月運送業者に請け負わせた盛土資料の運搬契約についてみると、その予定価格の積算にあたっては5トン積みダンプトラック1台当り積載量を地山土量で2.85立米としており、これを6トン積み車に換算すると3.4立米(膨張土量で4.4立米)となり、また、現に業者が運搬した実績もこれを相当上回っている状況で、これらに比べて本件積載量3.6立米は過少と認められる。
 いま、仮に6トン積みダンプトラック1台の価格を2,050,000円とし、その1台当り積載量を地山土量で3.4立米(膨張土量で4.4立米)として計算するとその損料は15,555,891円、燃料その他は8,814,653円計24,370,544円となり、本件積算額はこれに比べて7,776,616円過大となっていると認められる。

(イ) 両工事の盛土合計123,323立米のならし転圧はブルドーザD80で施行することとし、そのならし作業は運搬距離を30メートル、現場作業係数を0.6とし、その1台1時間当りのならし作業量を47立米として損料を7,384,383円、燃料その他を1,938,150円計9,322,533円と積算している。
 しかしながら、ブルドーザの1台1時間当りならし作業量47立米はこれに転圧作業を含めると32立米または34立米となっているが、本件積算に採用した現場作業係数0.6はねん土または湿潤土の場合のものであり、本件運搬土砂はそのほとんどがれき混り砂質土であって、そのならし転圧作業はねん土または湿潤土の場合に比べて容易であり、他の工事局における同種工事の積算例等においてはこの種土質の現場作業係数は0.85程度となっていることからみて、本件現場作業係数は適当と認められず、かつ、ブルドーザによるならし転圧の1台1時間当り作業量はれき混り砂質土で30メートル程度運搬の場合通常地山土量で55立米から60立米程度を施行することができるものとされており、本件1台1時間当りの作業量は過少と認められる。

現に、本件工事施行前の35年4月から東京操機工事事務所が同一現場付近で施行していたならし転圧の1時間当り作業量は約69立米となっている実情である。
 いま、仮にブルドーザ1台1時間当り作業量を地山土量で55立米として修正計算すると損料4,365,417円、燃料その他1,147,307円計5,512,724円となり、本件積算額はこれに比べて3,809,809円が過大となっていると認められる。
以上各項により工事費を再計算すると総額95,823,898円となり、本件工事費はこれに比べて約1140万円高価となっていると認められる。

(571)  日本国有鉄道東京鉄道管理局で、昭和36年3月および7月、指名競争後の随意契約により東鉄工業株式会社および双葉鉄道工業株式会社に福生、東青梅間線路増設土工その他その1工事および同その2工事を計12,067,321円(当初契約額12,000,000円)で請け負わせ施行しているが、機械損料等の積算が適正でなかったため予定価格が過大となり、工事費が約300万円高価となっていると認められる。
 本件両工事は、いずれも青梅線福生、東青梅間に線路増設のため路盤を造成する工事で、当初契約の際の予定価格には、その主体工事である切取り、盛土作業のうち土量10,969立米(設計変更後10,934立米)の切取り、運搬をトラクターショベルおよびダンプトラックにより施行することとしてその損料、労務費、燃料費を合計4,223,095円と積算しているが、その積算内容についてみると、

(ア) トラクターショベル(バケット容量1立米)は、その作業能力をパワーショベルの作業能力を参考として1日7時間か働で110立米と想定し、その拘束日数をその1工事においては81日、その2工事においては56日としており、また、その1日当り損料を民間の1時間当り運転手付き貸付料金が2,800円であるとしてこれを採用し、7時間分19,600円と積算してトラクターショベルの損料を合計2,685,200円としている。
 しかし、本件工事現場のような平たん地で、その土質が普通土の場合においては、この種トラクターショベルの作業能力は少なくとも1時間当り35立米程度となっており、当局では列車通過中の作業中止のため作業能率が12%程度低下するとしているので、仮にこれを考慮するとしても、1時間当り30立米程度として積算するのが適当と認められる。また、通常この種土工機械の損料計算は、当該機械の評価価格に1時間当りの損料率を乗じて計算した1時間当りの損料に、工事数量と機械の作業能力とにより算出した当該機械の延か働時間を乗じて算定しているものであるから、いま、これによりトラクターショベルの作業量を1時間当り30立米として設計変更後の作業量に対する延か働時間を再計算すると、その1工事においては198時間、その2工事においては167時間となり、また、トラクターショベルの価格は当局評価価格によることとし、その損料率は日本国有鉄道が定めた損料率によることとしてその1時間当り損料を計算すると1,019円70となる。

(イ) ダンプトラックの損料は、その1工事においては2トン積みダンプトラック5台が1日6時間か働するものとして拘束81日(実働66日)、拘束1日1台当り損料585円として計236,925円、その2工事においては5トン積みダンプトラック4台が1日6時間か働するものとして拘束56日(実働45日)、拘束1日1台当り損料2,776円または1,132円として計549,488円と積算している。しかし、本件両工事の運搬通路はいずれも6トン積みダンプトラックの通行が可能な状況であり、6トン積み車使用とするのが適当と認められるが、その他の現場作業条件等を考慮しても、少なくともその1工事においてもその2工事同様積載量が多く立米当り損料の割安な5トン積みダンプトラックを使用するものとして積算するのが適当と認められ、また、ダンプトラックの損料計算については、両工事ともその拘束日数と拘束1日1台当りの損料とにより算定しているが、前項(ア)同様、延か働時間とその1時間当り損料とにより算定するのが適当と認められる。いま、5トン積みダンプトラックの1台当り積載量を当局算定どおりとして設計変更後の作業量に対する延か働時間を計算すると、その1工事においては792時間、その2工事においては1,110時間となり、また、5トン積みダンプトラックの価格は当局積算の価格によることとし、その損料率は日本国有鉄道が定めた損料率によることとしてその1時間当り損料を計算すると347円30となる。

 いま、仮に以上各項により機械の延か働時間および1時間当りの損料を、その1工事のトラクターショベルについてはそれぞれ198時間および1,019円70、同ダンプトラックについてはそれぞれ792時間および347円30、また、その2工事のトラクターショベルについてはそれぞれ167時間および1,019円70、同ダンプトラックについてはそれぞれ1,110時間および347円30として工事費を修正計算すると、燃料費を当局算定どおりとしても合計8,999,323円となり、本件工事費はこれに比べて約300万円高価となっていると認められる。