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  • 昭和36年度|
  • 第3章 政府関係機関その他の団体の会計|
  • 第2節 各機関別の事項|
  • 第2 日本国有鉄道|
  • 不当事項|
  • 工事

鋼材の所要量等を過大に積算したなどのため工事費が高価と認められるもの


(572) 鋼材の所要量等を過大に積算したなどのため工事費が高価と認められるもの

(工事勘定) (項)諸設備費

 日本国有鉄道中国支社で、昭和36年12月、指名競争契約により三井建設株式会社に広島駅旅客上家改良その2工事を41,849,370円(当初契約額41,850,000円)で請け負わせ施行しているが、鋼材の所要量を過大に算定したり、鉄骨の加工歩掛りが適正でなかったりしたなどのため予定価格が過大となり、ひいて工事費が約380万円高価となっていると認められる。
 本件工事は、広島駅4番、5番旅客ホームの木造上家を鉄骨造り、スレートぶきとするもので、その予定価格を41,900,000円としているが、そのうち上家鉄骨工事費の算出についてみると、

(1) 材料費のうち各種鋼材費として238.8トン分合計12,926,154円を積算しているが、

(ア) 鋼材の所要量算定において、鋼板については、帯状で中央部分の幅が狭く両端部の幅だけが広いものを全長にわたり両端部と同一の幅をもったものとし、これに製作ロス分として出来上り設計数量に対して適用される製作ロス率15%を適用して加算したり、長さ10.32メートルまたは10.38メートルのものを10.6メートルのものとしたりなどして鋼材所要量を計算したため12.38トンが過大計算となっていると認められ、また、形鋼については、市販品の定尺ものを使用するものとして合計77.24トンと算定しているが、これは素材の所要量であるから、このうちには製作ロス分が含まれていて、さらにこれに製作ロスを見込む要はないのに10%の製作ロス分を見込んだため4.98トンが過大計算となっているものと認められる。

(イ) 鋼材のトン当り価格は厚さ9ミリメートルまたは12ミリメートルの鋼板を54,000円、厚さ6ミリメートル、山高75ミリメートルの等辺山形鋼を46,000円等としているが、本院調査によれば、これらの価格は小口販売価格であって、同時期の広島地区における10トン以上の大口取引価格はトン当りそれぞれ50,000円および42,000円等となっていて、本件積算単価は高価と認められる。

(2) 鋼材の工場加工費としてトン当り25,090円、数量217トン計5,444,530円、現場組立費としてトン当り6,320円または14,417円、数量217トン計2,181,140円を積算しているが、

(ア) 工場加工費トン当り25,090円は、トン当り基準歩掛りを8人として算出したものであるが、この種工事においては他工事局の積算例等によってみてもトン当り基準歩掛りを6人としていて、本件も他工事局と同様に基準歩掛りは6人を見込めば足りたものと認められる。

(イ) 工場加工費、現場組立費の算出に採用した鋼材の重量217トンは鋼材の所要量から発生くずのうち回収見込数量を差し引いたものであるが、工場加工費および現場組立費算出上の対象数値は通常出来上り設計重量であって、上記の算定方法や歩掛りも出来上り設計重量を対象としているものであるから本件鋼材重量はこれによることとし、前項(1)(ア)をあわせ修正計算すると鋼材重量は196トンとなる。

 いま、仮に以上各項により鋼材所要量は221.5トン、出来上り設計重量は196トン、工場加工の基準歩掛りはトン当り6人とし、鋼材単価は実際の大口販売価格によることとして工事費を修正計算すると37,953,147円となり、本件工事費はこれに比べて約380万円高価となっていると認められる。