昭和36営業年度における設備の新設等は、前営業年度からの継続および新規を合わせ発電設備では池原等17地点の計画に対し17地点、送電設備では中四連絡線等8線の計画に対し8線を実施し、これら設備の新設等を含めた総設備資金額は、計画440億0020万余円に対し398億1047万余円で41億8973万円の差額を生じており、また、前営業年度に比べて55億9122万余円減少している。
これらの設備資金については、36営業年度は国からの出資はなく、資金運用部特別会計からの借入金229億円、電源開発株式会社社債160億円等を充当している。
36営業年度の収益は245億3730万余円、費用は244億2322万余円で、当期総利益は1億1408万余円となり、法人税等1億0222万余円を差し引いて、純利益は1185万余円となっている。これを前営業年度に比べると、収益で82億7620万余円、費用で82億4070万余円増加し、純利益で63万余円の増加となっている。
収益が増加したのは、3発電所の出力増加と3発電所が新たに発電を開始したことなどのため、販売電力量55億2934万余キロワットアワー、販売電力料226億4453万余円となり、前営業年度に比べて、それぞれ51.5%、47.2%の伸びを示したことなどによるものであり、一方、費用が増加したのは、前記発電所の新設等に伴う水力発電費、支払利息等の増加によるものである。
なお、事業の執行にあたり、注意を要すると認められるものが次のとおりある。
(ア) ダム建設に伴う補償についてみると、ダム建設地点が電源開発調整審議会の決定に基づいて変更され、当初の建設地点で設置することとしていた運搬用道路が施行されないこととなったのに伴い、別途補償の提供をダム所在の県から要求されたのに対し、補償対象の具体的内容が明確でないまま補償費を支払うこととしたものがあるが、このような補償は同会社としても従来その例を見ないものであり、補償の限度についてはなお特段の留意が望ましい。
(イ) 工事の設計内容をみると、火力発電所の新設に際し、海岸護岸に関する設計波高を過少に決定したため、捨石が流失したなどのため工事が手もどりとなっているものがあるが、この種工事は同会社において従来施行したことがないものであるから、とくに事前の調査を十分に行なう要があるものと認められる。