(一般会計) (部)政府資産整理収入 (款)国有財産処分収入 (項)国有財産売払収入
関東財務局ほか1箇所で、土地の売渡しにあたり、売渡価格の評定が適切でなかったため売渡価額が低額となっていると認められるものが次のとおりある。
(209)
関東財務局で、昭和37年5月、随意契約により宮田某に東京都港区芝公園11号地所在の元増上寺境内地の土地11.27坪を695,600円で売り渡しているが、売渡価格の評定が適切でなかったため、売渡価額が約60万円低額となっていると認められる。
本件売渡価格の評定内容についてみると、相続税課税標準価格を基とした価格坪当り282,917円、固定資産税課税標準価格を基とした価格坪当り183,315円および売買実例を基とした価格として36年7月における近傍地の売買実例価格坪当り166,000円を時点修正等により修正した坪当り178,359円の三者を平均した214,864円を基準価格とし、これから本件土地は盲地であるとして奥行逓減相当12%、公道に出るまでの通路買収費相当29%計41%を利用効率減として控除した坪当り価格126,770円から、借地権相当額として50%を控除して算定評価格を坪当り63,385円と算出し、さらに、民間精通者の鑑定評価格に相当するものとして36年12月に近傍地を売り渡した際の財団法人日本不動産研究所の坪当り鑑定評価格39,990円を時点修正等により修正した価格60,054円を採用し、これと前記63,385円とを再平均して、坪当り売渡価格61,720円総額695,600円と評定しているものである。
しかしながら、
(ア) 前記売買実例価格について調査したところ、実際は、売買契約の時期は35年7月、売買価格は坪当り346,750円であり、当局の採用した売買年月および売買価格は事実と相違しているから、売買実例として採用したことは適当と認められない。
(イ) 本件土地は一般の盲地とは事情を異にし、公道に面した隣接地19.91坪は、同財務局において25年8月に本件売渡地の買受人である宮田某に109,505円(坪当り5,500円)で売り渡したもので、同人は21年6月以降本件売渡地とこの隣接地とを一体として利用している状況であるから、本件土地について利用効率として奥行逓減相当12%を減額することはやむを得ないとしても、公道に出るまでの通路買収費相当29%を控除する要はなかったものと認められる。
(ウ) 民間精通者の鑑定評価格に相当するものとして採用した前記坪当り60,054円の計算の基礎となった財団法人日本不動産研究所の鑑定評価格は、36年12月に同財務局において近傍地を売り渡した際の評価にあたり徴した鑑定評価格の一つであるが、その際は前記財団法人日本不動産研究所の鑑定評価格坪当り39,990円のほか安田信託銀行株式会社からも鑑定評価格坪当り77,100円を徴して両者の鑑定評価格を平均した坪当り58,545円を採用していたが、本件売渡地の評価にあたっては、この平均価格を時点修正等により修正した価格が前記算定評価格坪当り63,385円を著しく上回ることとなったため、この平均価格によることなく財団法人日本不動産研究所の鑑定評価格だけを基礎として計算したものである。しかしながら、算定評価格の算出にあたって上記(ア)、(イ)のような不適当な方法によらなかったとすれば、算定評価格は相当高額となるので、鑑定評価格に相当するものを計算する基礎として採用する価格は上記両者の鑑定評価格の平均額58,545円が適当であったと認められる。
いま、仮に売買実例価格についてはこれを採用することなく、利用効率としては奥行逓減相当として12%だけを控除し、また、民間精通者の鑑定評価格に相当するものとして財団法人日本不動産研究所および安田信託銀行株式会社の平均鑑定評価格を基礎とした価格を採用し、当局の評定方式にならって売渡価格を算定すると、坪当り116,851円総額1,316,910円となり、本件売渡価額695,600円はこれに比べて約60万円低額となる計算である。
(210)
関東財務局立川出張所で、昭和37年6月、随意契約により鈴木某に東京都北多摩郡小平町所在の元陸軍国分寺技術研究所の土地118.06坪および建物2むね30坪を1,476,200円(うち土地代1,086,200円)で売り渡しているが、売渡価格の評定が適切でなかったため、売渡価額が約100万円低額となっていると認められる。
本件土地の売渡価格坪当り9,200円の評定にあたっては、相続税課税標準価格を相続税修正率0.7で除した12,069円と固定資産税課税標準価格に固定資産税修正率8を乗じた7,290円との平均9,680円を算定評価格とし、民間精通者の鑑定評価格としては、本件売渡に際し徴した財団法人日本不動産研究所の鑑定評価格18,000円、三菱信託銀行株式会社の鑑定評価格8,000円はいずれも適当でないとしてこれを排除して、36年2月に隣接地を売り渡す際に使用した鑑定評価格三井不動産株式会社の6,500円と三菱信託銀行株式会社の6,000円とを時点修正したものの平均9,613円を採用して、これと算定評価格とを再平均した9,647円から建物があるための利用効率減5%を控除して坪当り単価9,200円としているが、その評定内容についてみると、
(ア) 相続税、固定資産税の課税標準価格から時価を算出するにあたり使用する修正率の決定にあたって、相続税修正率については、管財局通達に0.7以下と規定されているのに、なんらの検討を加えることもなく最高値である0.7を採用し、また、固定資産税修正率についても、通達で売買実例価格等から算出した時価と課税価格とを対比して決定するように規定されているのに、単に小平町から口頭で聴取した倍率8を修正率として採用したため、いずれも修正率が実情にそわないと認められるもので、いま、本件近傍地の36年中の売買実例約40例から算定すると、相続税修正率は0.48程度、固定資産税修正率は17程度となるから、これにより計算すると相続税課税標準価格を基とした価格は18,077円、固定資産税課税標準価格を基とした価格は18,016円となる。
(イ) 売買実例価格は付近に適当なものがないとして採用していないが、道路をはさんだ向い側の農地10,338.67坪を36年3月に某会社が坪当り14,000円で購入したものがあり、これを時点修正すると19,377円となる。
(ウ) 当局が採用した三井不動産株式会社および三菱信託銀行株式会社の鑑定評価格は、造成費、整地費を要するため本件土地と同一条件にあるとは認められない隣接地につき徴したものであるから、これを採用することは適当でなく、他方、上記(ア)、(イ)により計算した算定評価格は17,566円となり、本件土地について徴した鑑定評価格のうち三菱信託銀行株式会社の鑑定評価格8,000円はこれと開差が大であるから排除し、財団法人日本不動産研究所の18,000円を鑑定評価格として採用すべきであったと認められる。
いま、仮に本院の見解に基づいて計算すると、売渡価格は坪当り17,790円、総額2,100,300円となるもので、当局の売渡価額1,086,200円はこれに比べて約100万円低額となる計算である。