(一般会計)
地方公共団体、土地改良区、森林組合等が施行する農業施設、山林施設、漁港施設 の昭和37年発生災害復旧工事の査定を了したもの(農林省査定額18,110,779,000円)に対する検査は、査定済みの復旧事業費が4億円をこえる10道県のうち、北海道ほか7県を選び、37年12月から38年3月までの間に、農業施設2,073工事6,412,735,000円、山林施設160工事187,974,000円、漁港施設70工事263,990,000円計2,303工事6,864,699,000円について実施した。
その結果は、同一箇所の工事を農林省と建設省との双方で重複して査定しているもの、既存の施設が被災していなかったり、被害が軽微であったりしているのに災害復旧の査定を受けて改良工事を施工しようとしているもの、施設の被災が工事の施工の粗疎漏に基因して生じたと認められるものを査定しているもの、護岸の法長、延長等を過大に見込んでいるもの、または機械施行が有利であるのに人力施行で積算しているものなどが依然として多数見受けられ、これらの査定工事費を適正なものに修正する必要があると認め当局に注意したところ、前記8道県において次表のとおり農業施設で850工事958,356,000円、山林施設で24工事8,230,000円、漁港施設で9工事6,925,000円計883工事973,511,000円国庫補助(負担)金相当額929,890,000円を減額是正する旨の回答があった。
しかして、このように減額是正を要するものが多額に上ったのは、37年発生災害が北海道および佐賀、長崎両県に集中し、これが査定時における現地の調査が十分に行なわれなかったことによるものと認められる。とくに長崎県において減額是正を要する額が574,134,000円の多額となっているのは、同県の被害が他県に比べて激じんであったばかりでなく、災害復旧の大部分が農業施設である山間けい流の水路を復旧するもので、被災の状況、水路の規模等が各水系ごとに相違しているものであるから、その復旧計画および工法も現地の実情に適合したものとすべきであると認められるのに、これらの点を十分検討することなくおおむね一律の工法により復旧することとして計画したものをそのまま査定したため、現地の実情にそわないものが多数生じたことによるものと認められる。
なお、以上のほか、査定の時と状況が変化したため、災害復旧工事として施行する要がないと判明したものを注意して減額是正させたものが、7工事につき工事費において3,173,000円国庫補助金相当額2,837,000円ある。
類別
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道県名
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農林省査定額 | 左のうち実地検査したもの | 減額させた工事費 | |||||||||||
二重査定 | 改良工事その他 | 設計過大 | 積算過大 | 計 | ||||||||||
工事数 | 金額 | 工事数 | 金額 | 工事数 | 金額 | 工事数 | 金額 | 工事数 | 金額 | 工事数 | 金額 | 工事数 | 金額 | |
北海道 |
1,205 |
千円 2,944,531 |
679 |
千円 2,250,280 |
1 |
千円 20 |
24 |
千円 35,751 |
95 |
千円 119,347 |
98 |
千円 25,331 |
218 |
千円 180,449 |
静岡県 | 697 | 478,411 | 154 | 216,548 | 6 | 1,551 | 70 | 24,955 | 6 | 667 | 82 | 27,173 | ||
兵庫〃 | 778 | 439,893 | 173 | 209,781 | 1 | 41 | 33 | 3,770 | 8 | 1,716 | 42 | 5,527 | ||
和歌山〃 | 1,578 | 701,582 | 247 | 226,602 | 8 | 1,571 | 46 | 5,647 | 12 | 2,054 | 66 | 9,272 | ||
広島〃 | 941 | 416,500 | 247 | 168,485 | 4 | 971 | 33 | 5,162 | 18 | 2,283 | 55 | 8,416 | ||
佐賀〃 | 1,753 | 2,660,816 | 381 | 1,382,790 | 7 | 4,310 | 22 | 21,324 | 111 | 98,490 | 27 | 26,474 | 167 | 150,598 |
長崎〃 | 1,648 | 4,329,695 | 245 | 2,136,070 | 1 | 1,364 | 26 | 123,631 | 175 | 434,752 | 13 | 14,387 | 215 | 574,134 |
熊本〃 | 1,295 | 679,018 | 177 | 274,143 | 1 | 589 | 13 | 12,768 | 13 | 2,910 | 11 | 1,675 | 38 | 17,942 |
合計 | 9,895 | 12,650,446 | 2,303 | 6,864,699 | 10 | 6,283 | 104 | 197,608 | 576 | 695,033 | 193 | 74,587 | 883 | 973,511 |
しかして、上記の是正させたもののうち、おもな事例を示すと次のとおりである。
1 重複して査定されていたもの
(1) 長崎県東彼杵郡東彼杵町塩鶴川第2頭首工37年災害復旧は、査定額3,678,000円(国庫補助金3,604,440円)で井ぜき延長22メートルを復旧することとしていたが、このうち、右岸付帯護岸延長16メートル、左岸付帯護岸延長10メートル等工事費1,364,000円(国庫補助金1,336,720円)は別途建設省所管の河川護岸37年災害復旧その査定額12,287,000円と重複して査定されていた。
(2) 佐賀県鹿島市馬頭首工37年災害復旧は、査定額2,864,000円(国庫補助金2,832,496円)で井ぜき延長22メートルを復旧することとしていたが、このうち、左岸付帯護岸延長40メートル工事費1,058,000円(国庫補助金1,046,362円)は別途建設省所管の河川護岸37年災害復旧その査定額23,377,000円と重複して査定されていた。
2 改良工事その他国庫補助(負担)の対象としてはならないもの
(1) 北海道沙流郡日高町千栄第5地区頭首工37年災害復旧は、査定額17,036,000円
(国庫補助金16,950,000円)で付帯護岸延長60メートル、止水壁延長31メートル、固定ぜき延長26メートル等を復旧することとしていたが、本件頭首工は37年3月完成したばかりで被災の事実が全くなかったのに、たまたま建設省所管の河川工事で新たに築堤される護岸に取り付けるため、止水壁等を延長し付帯護岸を新設しようとしていたものである。
(2) 長崎県大村市大似田水路37年災害復旧は、査定額7,724,000円(国庫補助金7,646,760円)で護岸延長432メートルを表練積石垣は控45センチメートルの雑割石、裏練積石垣は控35センチメートルの雑石で施行し、底張りコンクリート厚さ30センチメートル、ほかに落差工3箇所、床止工4箇所等を施行することとしていたが、既設水路は上幅2メートル程度で、その護岸は表石垣を控35センチメートル程度のから積みで施行していたにすぎないばかりでなく、実際に被災したのはうち延長95メートルにすぎなかったのに、被災しなかった箇所を含めてこれを改修しようとしていたものである(減額された工事費7,163,000円国庫補助金7,091,370円)。
(3) 佐賀県鹿島市中の藤水路37年災害復旧は、査定額2,235,000円(国庫補助金2,210,415円)で水路延長113メートルを練積石垣478平米で復旧することとしていたが、素掘り水路の土羽の一部がわずかに法くずれを生じた程度の軽微なものであったのに、これを改修しようとしていたものである。
3 設計が過大と認められるもの
(1) 北海道勇払郡鵡川町川東頭首工37年災害復旧は、査定額38,400,000円(国庫補助金37,171,000円)で井ぜき延長174メートルの既設木工沈床に被覆コンクリート1,001立米を施行し、木工沈床上下流部に長さ3.5メートルまたは4メートルの鋼矢板724枚、右岸側堤内地の延長89メートル間に長さ4メートルの鋼矢板223枚を打設して止水壁を設置することとしていたが、本件施設は老朽化しているため38年度から国営土地改良事業としてその下流側に新たに頭首工を3箇年の予定で設置することとなっているものであるから、本件災害復旧工事はこれが完成まで取水上支障のない程度の暫定的工法により施行すれば足りるので、被覆コンクリートは被害の軽微な部分を除き右岸側延長16メートルとし、右岸側堤内地の止水壁は従来からなんら施設のなかったものであるから除外し、木工沈床上下流部の鋼矢板はこれに代え強度上支障のないコンクリートパイルで施行することとすれば、復旧費は19,534,000円となり、18,866,000円(国庫補助金18,262,000円)が過大となっていた。
(2) 長崎県諌早市中山東水路37年災害復旧は、査定額24,421,000円(国庫補助金23,575,195円)で護岸延長968メートルを表練積石垣は控45センチメートルの雑割石、裏練積石垣は控35センチメートルの雑割石、底張りコンクリートは厚さ30センチメートルで施行することとしていたが、既設の水路は上幅3メートル程度の野づら石のから積みで、その被害もうち延長519メートル間は一部に法くずれを生じた程度の軽微なものであるから除外し、残りの延長449メートルを表石垣は控35センチメートルの雑割石の練積み、裏石垣はから積みで施行することとすれば足りるなどのため、復旧費は12,340,000円となり、12,081,000円(国庫補助金11,839,380円)が過大となっていた。
(3) 長崎県北高来郡小長井村今里第2水路37年災害復旧は、査定額23,412,000円 (国庫補助金23,201,292円)で水路延長442メートルを表練積石垣2,226平米は控45センチメートルの雑割石、裏から積石垣892平米は控35センチメートルの雑割石、底張りコンクリートは厚さ25センチメートルで施行することとしていたが、既設の水路は上幅5メートル程度の素掘りまたは雑石から積み護岸のもので、その被害もうち延長227メートル間は冠水したにすぎない軽微なものであるから除外し、残りの延長215メートルを表石垣1,249平米は控35センチメートルの雑割石の練積みとし、裏石垣は水衝部360平米を施行すれば足り、底張りコンクリートは河床の低下がないから施行の要がないものであるなどのため、復旧費は12,890,000円となり、10,522,000円(国庫補助金10,427,302円)が過大となっていた。
4 積算が過大と認められるもの
(1) 佐賀県藤津郡太良町休石水路37年災害復旧は、査定額50,098,000円(国庫補助金49,546,922円)で水路に点在する転石4,791立米を人力でさく孔、破砕し、水路延長797メートルに練積石垣4,603平米、底張りコンクリート1,292立米を施行することとしていたが、この種多量の転石を破砕する場合はさく岩機を使用することとして積算するのが有利で、これらにより修正計算すると復旧費は45,271,000円となり、4,827,000円(国庫補助金4,773,903円)が過大となっていた。
(2) 北海道瀬棚郡北檜山町徳島頭首工37年災害復旧は、査定額59,776,000円(国庫補助金58,102,000円)で頭首工1箇所を復旧するもので、土砂吐240立米、取入水門153立米、付帯護岸擁壁289立米計682立米のコンクリートを配合比1:2:4で、また、えん体1,773立米、護床工ブロック408個405立米計2,178立米のコンクリートを配合比1:3:6でそれぞれ施行することとし、コンクリートの練混ぜはいずれもミキサーを使用することとしているのにその労力費を手練りの際の歩掛りで積算していたが、機械練りの際の歩掛りによるのが相当と認められ、これらにより修正計算すると復旧費は55,435,000円となり、4,341,000円(国庫補助金4,219,000円)が過大となっていた。