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  • 昭和37年度|
  • 第2章 国の会計

審査事項


第10節 審査事項

 国の会計事務を処理する職員の会計経理の取扱いに関し、利害関係人から審査の要求があり、昭和37年12月から38年11月までの間に、本院においてその決定をしたものは次のとおり1件である。
 菊池某は、同人と生活を共にしていた元大阪営林局職員岩瀬某が死亡したので、岩瀬某にかかる退職手当の支給を大阪営林局長に対し請求したところ、同退職手当はすでに岩瀬某の戸籍上の妻に支給済みであった。
 そこで菊池某は、事実上全く他人と同様の存在である岩瀬某の戸籍上の妻に対する退職手当の支給は、国家公務員等退職手当法(昭和28年法律第182号)第11条および会計法(昭和22年法律第35号)第16条の規定に違反した支出であるから、これを取り消し、本件退職手当を正当債権者である菊池某に支給すべきであるとして審査を要求したものである。

 上記の事実について審理したところ、岩瀬某の死亡当時、同人には戸籍上の妻がいたこと、昭和37年7月5日大阪営林局長が岩瀬某にかかる退職手当960,400円(所得税控除後の金額)を岩瀬某の戸籍上の妻に支給したことは明らかであり、また、菊池某は15年7月ごろから岩瀬某の死亡の日まで同人と届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった者と認められるが、国家公務員等退職手当法第11条において、配偶者につきとくに「届出をしないが、職員の死亡当時事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。」の規定を設けているのは、戸籍上の配偶者がいない場合に限り、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を配偶者として取り扱う趣旨のものと解される。

 したがって、本件退職手当の支給についての支出官大阪営林局長の取扱いは是正を要しないものと決定した。