(工事勘定) (項)諸設備費
日本国有鉄道大阪鉄道管理局で、昭和38年3月、指名競争契約により佐藤工業株式会社に須磨、塩屋間護岸改良その他その二工事を40,417,574円(当初契約額42,600,000円)で請け負わせ施行しているが、曳船使用料等の積算が適切でなかったため予定価格が過大となり、ひいて工事費が約640万円高価となっていると認められる。
本件工事は、山陽本線須磨、塩屋間の海岸において、別途同鉄道管理局施行の工事で製作し現地の海浜に仮置きした2トンテトラポット9,440個を、同海岸延長約718メートルにわたり、陸上または海上からすえ付けるなどの護岸工事であるが、その予定価格の積算についてみると、
(1) テトラポット9,440個のうち、陸上からすえ付ける5,210個は、クローラクレーン3台を使用してそのすえ付け区間458メートルの中心点から須磨および塩屋方それぞれ100メートル計200メートル間に仮置きされたものを、須磨および塩屋方それぞれ229メートルの間に運搬してすえ付けるものとし、その1個当りの平均運搬距離はそのすえ付け区間の中心点から須磨および塩屋方各229メートルの中心点までの距離になるものとして115メートルと算定し、クローラクレーンの使用料等を9,878,717円と積算している。
しかしながら、本件平均運搬距離は各片側の仮置区間100メートルの中心点から各片側のすえ付け区間229メートルの中心点までとして算定すべきで、これによれば平均運搬距離はそれぞれ64.5メートルとなる。
いま、仮に運搬距離を平均64.5メートルとして計算すれば、クローラクレーンの使用料等は8,518,270円となり、本件積算額はこれに比べて1,360,447円過大となっていると認められる。
(2) 上記5,210個のすえ付け整理に使用する潜水船の使用料を1日当り6,000円とし、このほか同船が自走しないので、各曳船を要するものとして延81隻の曳船使用料を1,153,577円と積算している。
しかしながら、本院調査によれば1日使用料が6,000円程度の潜水船はエンジン付きで自走することができるものであるから、別途曳船使用料を積算する要はなかったものと認められる。
(3) 海上からすえ付ける4,230個は、曳船80馬力1隻とテトラポット運搬用台船80トン2隻とが1組になって作業するもので、台船は木製デリック1基を設備して、これにより2トンテトラポット8個を128分を要して積み込んでこれを運搬し、また、木製デリック1基ですえ付け、1日当り8.48個を施行するものとして、曳船、台船およびすえ付け運搬用デリック等の使用料等を13,538,722円と積算しているが、他の同種工事および同鉄道管理局が本件工事に先立って施行した同種工事の実績等からみて、次のとおり過大となっていると認められる。
(ア) すえ付けには別途二又船を使用することとすれば、30トン級台船でも1隻当り2トンテトラポット10個程度を積載することができるものと認められ、80トンの台船を使用して8個を積載することとして積算したのは過大と認められる。
また、2トンテトラポットの積込みには、クローラクレーンを使用することとすれば、1時間当り15個程度を積み込むことができるばかりでなく、このように積込み所要時間が少なくなるので台船の運搬回数も増加して経済的であると認められ、積込みを木製デリックによることとして積算したのは過大と認められる。
(イ) 二又船を使用すれば1日1隻で2トンテトラポット20個程度をすえ付けることができるものと認められ、台船を使用して1日当り8.48個をすえ付けることとして積算したのは過大と認められる。
(ウ) 曳船は50馬力級のもので2トンテトラポット10個程度を積載した台船を曳行することができ、この程度のものを使用することとすれば足りたものと認められ、80馬力のものを使用することとして積算したのは過大と認められる。
いま、仮に2トンテトラポット積込みにはクローラクレーンを使用し、1時間当り15個を積み込むこととし、曳船は50馬力、台船は30トンのものを使用するものとして、台船には10個を積載し、すえ付けは二又船を使用して1日当り20個として計算すると、曳船、台船、二又船およびクローラクレーン等の使用料等は9,521,819円となり、本件積算額はこれに比べて4,016,903円過大となっていると認められる。
以上各項により工事費を修正計算すると総額33,950,377円となり、本件工事費はこれに比べて約640万円高価となっていると認められる。