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  • 昭和37年度|
  • 第3章 政府関係機関その他の団体の会計|
  • 第2節 各機関別の事項|
  • 第2 日本国有鉄道|
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会社線との並行敷設に伴う損失補償の処置当を得ないと認められるもの


(647) 会社線との並行敷設に伴う損失補償の処置当を得ないと認められるもの

 (工事勘定) (項)東海道幹線増設費

 日本国有鉄道大阪幹線工事局で、昭和36年12月および37年6月、近江鉄道株式会社に滋賀県彦根市ほか4町村地内延長約7.5キロメートルにおいて東海道幹線を同会社線と並行して敷設するに要する同会社線用地の買収費および旅客収入減等に対する損失補償費として総額250,000,000円を支払っているが、うち旅客収入の減少に対する補償100,000,000円については、同幹線の並設により旅客収入減が確実に生ずるものとは認めがたく、従来からその例をみないもので処置当を得ないと認められる。

 本件用地買収および損失補償は、36年10月、東海道幹線を同会社線に並設施行するにあたり、同会社から同会社線施設の防護補強工事費等2億6215万余円および沿線風致阻害観光価値減殺による旅客収入減補償1億5410万余円計4億1626万余円の要求があったのに対し、36年12月、取りあえず用地費および防護補強工事費等として150,000,000円を概算払し、一方、旅客収入減に対する補償は、その査定が困難であるが、これを支払わないときは同会社との設計協議等において協力を得られず、幹線増設工事に支障を生ずるおそれがあるとして、観光旅客収入および普通券一般客収入の予想減少率をそれぞれ50%および25%とするなどして並行区間の向う13年間の旅客収入減額見込みを算定し、37年6月、100,000,000円を概算払し、38年11月、それぞれ同額をもって精算を了したものである。

 しかしながら、旅客収入減に対する補償についてみると、現地の実情等からみて同幹線を並設することによって同会社線の観光旅客等が減少するものとは認めがたく、前記収入予想減少率等も全く根拠がないと認められ、一方、同会社との設計協議等に関しては、地方鉄道法(大正8年法律第52号)によりその促進をはかるなどの余地があったと認められるのに、これらの配慮も十分でないまま、このように将来確実に発生するとは認められないものに対して補償したのは、従来からその例を見ないばかりでなく、通例の補償限度を著しく逸脱するもので、その処置当を得ないと認められる。