石炭鉱業合理化事業団の昭和37事業年度末資本金は87億3000万円(全額政府出資)で、前事業年度末に比べて37億9000万円増加している。
37事業年度の業務の計画のうちおもなものは、石炭の採掘権およびその鉱業施設の買収19億4016万余円(年間生産能力106万余トン)、石炭鉱山整理促進交付金の交付37億7246万円(年間生産能力320万トン)、石炭坑の近代化および石炭の流通合理化資金の貸付け42億2610万円、石炭鉱業の整備資金借入債務の保証75億円、石炭鉱業の整備資金の貸付け100億円ならびに石炭の運賃延納債務の保証3億円であったが、これに対する実績は、石炭の採掘権およびその鉱業施設の買収13億5847万余円(年間生産能力60万余トン)、石炭鉱山整理促進交付金の交付26億9844万余円(年間生産能力267万余トン)、石炭坑の近代化および石炭の流通合理化資金の貸付け34億5310万円、石炭鉱業の整備資金借入債務の保証7億4500万円、石炭鉱業の整備資金の貸付け99億5000万円ならびに石炭の運賃延納債務の保証2億3719万余円となっている。
この結果、30年10月石炭鉱業整備事業団として発足以来37事業年度末までに買収した採掘権は、石炭鉱業合理化基本計画に定める630万トンに対し584万余トンとなり、石炭坑の近代化および石炭の流通合理化資金の37事業年度末貸付残高は73億1480万円となっている。
37事業年度の業務の原資については、石炭の採掘権者または租鉱権者の納付金10億2091万余円、国の非能率炭鉱整理費補助金3億9753万余円、国の炭鉱整理促進費補助金21億0374万余円、政府出資金34億6000万円、資金運用部資金の借入金100億円等を充当している。
なお、このほか保証業務について保証基金として3億3000万円の政府出資があった。
同事業団は、これらの業務のほかに石炭鉱山保安臨時措置法(昭和36年法律第194号)に基づく廃止事業者の代理および石炭鉱山整理交付金への引渡しに関する業務を行なっているが、37事業年度中に国から3億5412万余円の交付金を受け、このうち1億5801万余円について債務の弁済または廃止事業者の引渡しを行なった。
37事業年度の損益は、総益金26億3258万余円、総損金50億4531万余円で、当事業年度損失金は24億1273万余円となっているが、石炭鉱業合理化臨時措置法(昭和30年法律第156号)および石炭鉱業合理化事業団の財務および会計に関する省令(昭和35年通商産業省令第101号)に基づき整備勘定ほか6勘定に区分経理して、それぞれの勘定の繰越欠損金、積立金または繰越利益金としている。当事業年度の整備勘定損失金は24億6285万余円で、同勘定にかかる繰越欠損金は84億4971万余円となっている。この整備勘定にかかる損失金は、同事業団が保有している採掘権価額とともに、基金として積み立てている非能率炭鉱整理費補助金および石炭の採掘権者または租鉱権者が納付する納付金によって終局的には補てんされることとなっている。
また、石炭坑の近代化および石炭の流通合理化資金の貸付けのうち37事業年度中に回収した1220万円は、石炭鉱業合理化臨時措置法に基づき38年4月これを全額国庫に納付した。
業務の執行にあたり注意を要すると認められるものが次のとおりある。
(ア) 石炭の採掘を廃止しようとして同事業団にその採掘権の売渡しを申し込んでいた採掘権者に対して、同事業団が別途同人に貸付実行していた近代化資金貸付金の一部を前記売渡申込みの受付後に資金交付し、結局、その採掘の廃止により貸付金の回収が困難となっているものがあるが、これは同事業団内部の相互連絡が不十分であったことによるものと認められ、今後内部の連けいには万全を期する必要がある。
(イ) 38年中、石炭坑の近代化および石炭の流通合理化資金の貸付先22会社について貸付金33億6810万円の使用状況を実地に調査したところ、資金の交付は貸付先の現金支払実績に応じて行なう建前となっているのに、長期の手形で支払っているものに対して資金を交付する結果となっているものなどが8会社に対する4億7840万円の貸付金のうちに見受けられたが、長期、かつ、無利息の貸付金の性格にかんがみ、貸付実行後の資金管理には今後十分な注意が必要であると認められる。