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  • 昭和37年度|
  • 第3章 政府関係機関その他の団体の会計

改善の意見を表示した事項


第4節 改善の意見を表示した事項

 昭和37年12月から38年11月までの間に、会計検査院法第36条の規定に基づき、責任者に対し、法令、制度または行政に関して改善の意見を表示したものは次のとおり4件である。

(1) 購入資材の規格について改善の意見を表示したもの  (昭和38年11月25日付け38検第553号日本国有鉄道総裁あて)

 日本国有鉄道の資材の調達に関し、昭和37年度における購入資材の規格についてみると、規格が改定されているのに旧規格のものを購入したり、より有利な規格寸法のものがあるのにこれを採用しなかったりなどしていて購入規格についての検討が十分でなく、ひいて不経済な結果となっていると認められる事例が下記のとおりある。
 このような事態を生じているのは、規格の改定について関係部局間の連絡が十分でなかったり、関係部局における新規格のものについての検討および部内の使用状況の実情に対する認識は握が十分でなかったり、規格についての関心が稀薄であったりなどしたことによるものと認められるが、今後とも継続して多額に購入するこの種資材については、これらの点についても検討を加え、もって、適確かつ経済的な購入をはかる要があると認められる。

(1) 内燃機関部品等の購入規格について

 気動車の増加に伴い、補修用内燃機関等部品の調達額は逐年増加の傾向にあり、37年度についてみても7億8100万円に上っているが、このうちDMH17形内燃機関部品および同液体変速機部品のなかには、設計を担当する臨時車両設計事務所において設計図面を改定するものと決定しているのに、在来の図面によって購入しているものが179品形約2億2500万円ある。
 このような状況となっているのは、臨時車両設計事務所における設計会議の決定により設計図面を改定したものについて、同設計事務所と主管の工作局との間の連絡が徹底していなかったため関係箇所に指示が行なわれず、使用部品の要求箇所である工場においても改定の事実を知らないまま旧設計図面により調達を要求し、また、調達部局である資材局等においても要求品形を照合点検する資料がないまま在来の図面により契約を実施したことなどによるものと認められる。
 しかしながら、前記設計図面の改定は、いずれも使用部品の性能、強度等を向上し、ひいて営業経費の節減をはかる目的から実施されているものであるから、これを関係箇所に徹底させるよう実効ある通報指示を行ない、調達に反映させるよう留意の要がある。

(2) 部内工場用酸素の購入規格について

 部内各工場で溶接等に使用するため酸素を購入しているが、37年度においても、1,475,271キロリットルを日本国有鉄道または業者所有の酸素ボンベ等により、キロリットル当り51円から96円で約1億0200万円購入している。
 しかして、本件購入酸素のうち液体酸素はごく一部で大部分は気体酸素であるが、液体酸素は、気体酸素に比べてボンベヘの詰込費、運搬費およびボンベ代等を大幅に節減することができるばかりでなく、酸素受入供給装置から使用職場まで配管により自動的に一定の圧力で供給されることなどからみても、気体酸素に比べてすぐれており、現在では大手製造業者も大幅に液体酸素を生産、販売している状況である。
 しかして、大宮、大井および新小岩の3工場についてみると、これらの工場では、37年度中に気体酸素をキロリットル当り、日本国有鉄道所有ボンベ使用の場合70円および72円、業者所有ボンベ使用の場合78円および80円で購入している状況であるが、仮にこれを液体酸素に切り替えるものとすれば、設備費(酸素受入供給装置、基礎工事および配管工事)等の経費を業者負担としても、キロリットル当り50円から60円程度にすぎないこととなり、相当額の経費節減が見込まれる状況である。また、他の工場についても、現在液体酸素供給業者が付近にないなど上記3工場と条件の異なる工場を除けば、たとえ切替えにある程度日本国有鉄道側負担の設備投資を要するものがあるとしても、おおむね数年後にはその投資額は回収することができるものであるから、同様経費の節減をはかることができるものと認められる。よって、気体酸素を液体酸素に切り替え、購入費の節減をはかるよう検討の要があると認められる。

(3) 乗車券板紙および各種切符類の購入規格について

(ア) 乗車券(硬券)については、部内印刷場で印刷製作するため乗車券板紙を購入しており、37年度においても、1279万枚を総額約1億2100万円で購入している。
 しかして、本件乗車券板紙の寸法は縦550ミリメートル、横400ミリメートルとしているが、これを使用して製作する切符の品型には、A型(片道乗車券等)、B型(連絡区間変更券等)、C型(準常備往復乗車券等)およびD型(準常備片道乗車券等)の4種類があって、これらのうち板紙使用量が95%を占めるA、BおよびC型はいずれもその横寸法は57.5ミリメートルで、板紙の縦550ミリメートルから9枚取りとしており、この9枚分の寸法は517.5ミリメートルであって、製品面積に対する板紙のロス率は9%から18%となっている。
 しかしながら、本件板紙は注文生産によっているものであるが所要の縦寸法のものに変更してもキログラム当りの価格に格別の増大をきたすことはなく、また、その変更により印刷製作に支障を生ずるとも考えられないので、切符類製作の実情に適当する寸法のものを購入し板紙購入費の節減をはかるよう検討の要があると認められる。

(イ) 小荷物切符等各種切符類のうちその主要部分を占める小荷物切符ほか5種の切符類については、37年度において約7200万円を購入している。
 しかして、これら各種切符類の用紙については、旅客及び荷物営業規則(昭和33年日本国有鉄道公示第325号)で、一時預り切符は上質紙を、また、小荷物切符ほか四種の切符類はクラフトパルプ半ザラシをそれぞれ使用することと指定されているのに、各地方資材部において購入する際、仕様書には荷札用紙またはクラフトパルプ半ザラシと記載するなどし、現品見本としてはサラシおよび7分サラシのクラフトパルプまたはサラシクラフトパルプに着色したものなどで抄紙したものでいずれも前記指定の用紙より高価で、かつ、一部を除き強度の弱い紙質のものを示し、これにより購入している状況である。
 しかしながら、前記指定の紙質の用紙は強度、色彩、価格等を検討のうえ適当であるとして定められたものであり、しかも現在その紙質のものはこれを指定した当時に比べて強度、色彩等種々の点で向上しているものであるから、上記のような事態については検討の要がある。

(2) 連絡運輸に伴う貨車使用料について改善の意見を表示したもの  (昭和38年11月25日付け38検第554号日本国有鉄道総裁あて)

 日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)は地方鉄道等の運輸機関(以下「社」という。)と輸送上の相互の利便を増進するため連絡運輸契約を締結しているが、この契約によると、国鉄線と社線の両区間にわたって貨車の直通運用を行なうときは、その連絡運輸にかかる運賃を国鉄と社とでそれぞれの運送区間に応じて分割収受するとともに、相手方の運輸機関所属の貨車を使用した場合は、その使用料を支払うこととなっており、この使用料として、国鉄は、昭和37年度中、102社から438,235,560円を徴収し、63社に260,803,668円を支払っている。

 本件貨車使用料は、貨車が国鉄線または社線に在線した時間数に応じて計算することとし、このうち在線12時間までは、貨物運送上荷主に対し発着駅における貨物の積込みおよび取卸しのために必要な時間として原則としてそれぞれ5時間を許容しているものであるから積卸しに要する10時間については使用料の対象外にするとの理由で、一律に2時間分相当の定額料金によることとしている。

 しかしながら、連絡運輸に伴う貨車使用料は相手方の運輸機関から財産使用料として徴収するもので、その料金単価は貨車の減価償却費等年間経費相当額を年間か働総延時間で除して算出しており、したがって、貨車使用時間の経過に応じこれらの経費を回収する建前で単価が設定されているのであるから、積卸しに必要な時間を考慮することは不合理である。

 しかして、連絡運輸における貨車の運用についてみると、運用車両の半数以上のものが往路または復路の片道を空車回送されていて、これらについては、貨物の積込みまたは取卸しの片方しか行なわれないのが実情であるのに、このようにすべての運用貨車について一律に10時間を使用料の対象外としていることは貨車運用の実情に即していないものである。また、本件貨車使用料の徴収または支払いにあたっては、毎月車種別に、前記2時間分料金相当の定額単価に運用車数を乗じて算出した料金額と、1時間当り料金単価に、総在線時間から12時間に運用車数を乗じた時間数を控除したものを乗じて算出した走行料金額との合計額により決定しているが、このような決定方法によるときは、各運用車両のうち実際在線時間が12時間に満たないものも一律に12時間在線したものとして算定され、その開差時間は他の在線12時間をこえる貨車の走行料金対象時間から控除される結果となり、在線時間12時間未満のものが相当数認められる実情からすれば著しく不合理なものとなっている。

 このように、本件貨車使用料に関する定額料金制度は前記料金単価の設定根拠からみて不合理であり、また、貨車運用の実情または使用料決定方法からみても著しく実情にそわないものとなっているばかりでなく、直通運用のために提供される貨車数は国鉄側の方が著しく多いこと、また、国鉄線内における社車の在線時間は12時間以内のものがきわめて少ないことなどを考慮すると、国鉄側に経費負担を加重せしめる結果となり、著しく不利となっているものと認められるから、本件料金制度については、検討のうえその適正化をはかる要があるものと認められる。

(3) 道路建設工事の予定価格の積算について改善の意見を表示したもの  (昭和38年10月30日付け38検第502号 日本道路公団総裁あて)

 日本道路公団における道路建設工事は、高速自動車道路をはじめとする全国的な幹線道路網の整備、大都市およびその周辺の道路交通の混雑緩和、重要産業地帯における産業道路網の整備拡充等の要請から、逐年その工事量が増大しているが、これら工事の予定価格の積算についてみると、計算の対象となることが多い基礎的な工種において、下記のとおり、積算基準が実情にそわなかったり、その運用が適切でなかったりしたため積算が適正を欠いているものがあり、とくに工事用機械損料が過大に算定されている事例が少なくない。これら工種はいずれも数量的に大規模であるのが通常であるから、積算の単価においてはわずかな開差であっても、総額においては大差を生ずるものである。

 このような事態を生じているのは、日本道路公団はわが国における最初の高速道路建設工事をはじめとする多数の道路建設工事を発足以来7年余にわたり実施して作業の実態や実績等につき相当の資料を得ており、また、最近は施行技術の進歩、使用機械の大型化傾向が著しくなっているので、これらの資料および情勢を予定価格の積算に反映させなければならないのに、その配慮が十分でなかったこと、積算基準の設定および統一について高速道路担当部門と一般道路担当部門との連絡調整が十分でなかったことなどによるものと認められる。
 しかして、日本道路公団は、昭和38年度から工事請負契約に関する事務を全面的に支社および本社直属機関に委任することとしたため、予定価格の積算基準およびその運用の適正を期する必要はいよいよ多くなっているのであるから、この際、各種工事の実績等を勘案して早急に合理的な積算基準の整備をはかり、あわせてその適正な運用方法を部内に周知徹底し、もって工事費予算の適切な使用をはかる必要があると認められる。

(1) 一般道路建設工事において、舗装用機械の損料算定にあたり、公団制定の機械損料表には30トンアスファルトプラントおよび3.5メートルアスファルトフィニッシャーについて国産品の損料が記載されていないため、上記損料表に記載されている高価な外国品の損料を適用しているが、舗装の規格からみてその使用機械は国産品で足り、また、現に国産品が使用されている場合が多く、実情にそわないものとなっている。

(2) 一般道路建設工事において、運搬費の算定にあたり、大量の土砂等の運搬に使用されるダンプトラックは通常6トン車であるのに、公団制定の機械損料表には6トン車の損料が記載されていないため、上記損料表に記載されている割高な5トン車を使用することとしていて、実情にそわないものとなっている。

(3) 高速道路建設工事において、舗装工事に使用する組合せ機械の損料算定にあたり、各機械の1時間当り損料は当該機械の実か働1時間当りの作業量に対する総所要額を算定しているものであるから、機械のか働時間も各機械の実か働時間によるべきであるのに、使用機械のうち最もか働時間の多い機械のか働時間をすべての機械に一律に適用することとしていて、実情にそわないものとなっている。

(4) 一般道路建設工事において、掘さく費の算定にあたり、岩の切取りは通常機械掘さくによっているのに、公団制定の歩掛表には機械掘さくの歩掛りが記載されていないため算定方法が区々となっていて、過大に算定されているものが多い。

(5) 高速道路および一般道路建設工事において、鋼橋りょうけた製作費の算定にあたり、通常の例にならい正味設計重量を基礎として製作歩掛りが定められているのに、これに乗ずる重量を総重量で計算しているものがある。すなわち、橋門構、ブラケット等てい形状として計算するのが相当と認められる部材の重量をは材込みのく形状として計算するなど、過大に算定されている。

(6) 高速道路および一般道路建設工事において、掘さく費の算定にあたり、パワーショベルの作業能力計算の基礎となるバケットの旋回角度を一律に135度とすることとしているため、客土掘さくの場合、作業能率の高い90度程度の旋回で作業可能と認められる工事現場についても135度の旋回として算定していて、実情にそわないものとなっている。

(4) 会計経理事務の適正な執行について改善の意見を表示したもの  (昭和38年10月30日付け38検第501号 雇用促進事業団理事長あて)

 雇用促進事業団の会計経理事務の執行については、さきに昭和36事業年度決算検査の結果、一部施設において会計経理事務が適正に行なわれていなかったことにつき注意を促したところであるが、37事業年度決算について、38年中、本部、7支部および30施設を実地に検査したところ、会計経理事務の執行にあたり下記のとおりその基本的事項においてさえ処理の適正を欠くものがなお多数見受けられ、また、一部の支部、施設において職員の不正行為が生じている状況である。
 このような事態を生じたのは、本部、各支部および各施設を通じて会計経理事務の執行体制が弱体であることによるものと認められるが、とくに、

(ア) 会計経理事務担当者のうちには、基本的な会計経理事務に習熟していない者や、事務執行上の職責についての関心の薄い者が多いこと、

(イ) 会計経理事務の執行にあたり補助者に対する監督指導が十分でないこと、

(ウ) 全国各地に所在する7支部および50施設の会計経理事務の執行に対する監督指導を行なうには本部の機構が十分でないことがおもな原因と認められる。

 したがって、会計経理事務担当者の適正な配置を考慮するとともに、担当事務について計画的に研修を行なうなどして会計経理事務の習熟をはかり、各支部および各施設に対する監督指導を常時行なうことができるように本部の機構を充実整備するなどの処置を講じ、会計経理事務執行の適正化をはかる要があると認められる。

(1) 予算執行にあたり予算実施計画差引簿の記帳をそのつど行なっていないものが多く、なかには予算実施計画差引簿を作成していないものさえある。

(2) 総勘定元帳、現金出納帳、預金元帳および各種補助簿の記帳整理が十分でなく、なかには総勘定元帳を作成していないものや、現金出納帳の記帳を著しく遅らせたり、記帳しなかったりしているものがある。

(3) 物品台帳および物品受払簿の記帳整理が十分でなく、なかにはこれら帳簿を作成していないものや、帳簿と現品との対照をしていないものがある。

(4) 購入決議前に訓練用の器具、教材等の物品を納入させたり、支出決議前にその購入代金を支払ったりしているものがある。また、支出決議にあたって関係書類の照合確認を励行していないものがある。

(5) 決議書、契約書等の会計関係書類の作成、整備が十分でなく、なかには決議書、契約書、納品書および領収書の日付けまたは相手方について事実と異なる記載をしたり、見積書、請書を徴しなかったり、契約書を作成しなかったりしているものがある。

(6) 本部に対し定期に提出しなければならない合計残高試算表および収入及び支出報告書の提出が遅延しているものが多く、なかには提出期限を6箇月以上も経過しているものがある。