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  • 昭和38年度|
  • 第2章 国の会計|
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災害復旧事業費の査定額を減額させたもの


(492) 災害復旧事業費の査定額を減額させたもの

(一般会計)

 地方公共団体、土地改良区、森林組合等が施行する農業施設、山林施設、漁港施設の昭和38年発生災害復旧工事の査定を了したもの(農林省査定額25,292,704,000円)に対する検査は、査定済みの復旧事業費が7億円をこえる13道県のうち、新潟ほか10県を選び、38年12月から39年2月までの間に、農業施設1,653工事6,015,045,000円、山林施設109工事149,400,000円、漁港施設130工事698,956,000円計1,892工事6,863,401,000円について実施した。

 その結果は、同一箇所の工事を農林省と建設省との双方でまたは農林省部内で重複して査定しているもの、既存の施設が被災していなかったり、被害が軽微であったりしているのに災害復旧の査定を受けて改良工事を施行しようとしているもの、施設の被災が工事の施行の粗漏に基因して生じたと認められるものを査定しているもの、護岸の法長、延長等を過大に見込んでいるもの、または機械施行が有利であるのに人力施行で積算しているものなどが依然として多数見受けられ、これらの査定工事費を適正なものに修正する必要があると認め、当局に対して注意したところ、前記11県において次表のとおり農業施設で645工事1,060,941,000円、山林施設で22工事3,337,000円、漁港施設で46工事33,434,000円計713工事1,097,712,000円、国庫補助(負担)金相当額1,007,108,000円を減額是正する旨の回答があった。

 しかして、このように減額是正を要するものが多額に上ったのは、38年発生災害が岡山、高知、福岡、熊本の4県に集中し、これが査定時における現地の調査が十分行なわれなかったことによるものと認められる。とくに前記岡山ほか3県において減額是正を要する額が959,511,000円(全指摘額の87.4%)の多額となっているのは、被害が他県に比べて激じんであったばかりでなく、災害復旧の大部分が農業施設を復旧するもので、そのおもなものは大河川に施設されていた規模の大きな頭首工に関するものであり、それらの施設の被災が部分的であるのに頭首工全体の機能が災害により失われたとし、頭首工を新設する際の設計基準により著しく改良して復旧する計画としていたものなどをそのまま査定したことによるものと認められる。

 なお、以上のほか、査定の時と状況が変化したため、災害復旧工事として施行する要がないと判明したものを注意して減額是正させたものが7工事につき工事費において1,312,000円国庫補助金相当額961,000円ある。

類別
農林省査定額 左のうち実地検査したもの 減額させた工事費
二重査定 改良工事その他 設計過大 積算過大
工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額

新潟

594
千円
893,812

174
千円
540,525

千円
12
千円
4,647

16
千円
3,269

23
千円
10,114

51
千円
18,030
石川 824 733,288 141 328,219

12 12,524 29 10,822 11 4,835 52 28,181
兵庫 1,562 972,250 195 379,214

3 748 23 4,311 32 1,391 58 6,450
岡山 3,406 3,874,268 202 1,395,357 2 134 3 4,780 95 235,072 20 4,615 120 244,601
広島 1,293 818,876 174 267,393



29 6,820 1 34 30 6,854
愛媛 1,303 966,301 107 249,959 1 113 1 5,916 45 22,163 14 2,002 61 30,194
高知 3,404 3,061,945 176 1,343,545

7 285,468 62 89,270 11 7,735 80 382,473
福岡 1,469 1,725,818 162 968,979

11 18,638 42 202,276 13 6,748 66 227,662
佐賀 1,526 1,373,233 167 485,897 1 188

37 19,126 19 7,027 57 26,341
熊本 2,367 2,107,842 219 544,499 1 14 4 2,740 79 101,881 3 140 87 104,775
宮崎 1,166 835,803 175 359,814

3 2,363 45 19,344 3 444 51 22,151
合計 18,914 17,363,436 1,892 6,863,401 5 449 56 337,824 502 714,354 150 45,085 713 1,097,712

 しかして、上記の是正させたもののうち、おもな事例を示すと次のとおりである。

1 改良工事その他国庫補助(負担)の対象としてはならないもの

(1) 高知県香美郡野市町野市上堰38年災害復旧は、査定額218,777,000円(国庫補助金204,994,049円)で井ぜき延長321メートルを復旧するもので、うち土砂吐けおよび洪水吐け等延長81メートルは可動ぜきとして配合比1 :2 :4のコンクリート677立米および配合比1 :3 :6のコンクリート6,606立米、残りの延長239メートルは固定ぜきとし、配合比1 :3 :6のコンクリート8,810立米等により井ぜきを新設するほか、護床のコンクリートブロック3,734個を施行することとしていたが、既設の井ぜきはぐり石または玉石を中詰めとした練石張りで、その被災状況は土砂吐けおよびえん体下流側の水たたき部分が洗掘された程度のものであり、えん体の大部分および角落し部分には被害が認められず、取水にはなんら支障がないものを原施設の機能が全く失われたものとして全面的に改修しようとしていたものである(減額させた工事費123,043,000円、国庫補助金115,291,291円)。

(2) 愛媛県周桑郡三芳町河原津海岸堤防38年災害復旧は、査定額7,144,000円(国庫負担金4,765,048円)で延長347メートルの既設の護岸練積石垣および根固捨石に被覆コンクリート919立米を施行することとしていたが、実際の被災状況は練積石垣のうち延長21メートルにき裂を生じたり、根固捨石がわずかに移動したりした程度の軽微なものであったのに、これを改修しようとしていたものである(減額させた工事費5,916,000円、国庫負担金3,945,972円)。

(3)石川県鹿島郡中島町瀬嵐海岸堤防38年災害復旧は、査定額1,955,000円(国庫負担金1,303,985円)で延長39メートルを玉石コンクリート擁壁144立米および波返しコンクリート17立米で復旧するとこととしていたが、実際は既設のから積石垣の一部がわずかに差狂いを生じた程度の軽微な被害で災害復旧事業の対象とならないのにこれを改修しようとしていたものである。

2 設計が過大と認められるもの

(1) 福岡県三井郡太刀洗町恵利頭首工38年災害復旧は、査定額421,400,000円(国庫補助金390,637,800円)で、井ぜき延長325メートルのうち17,043平米の練石張りが被災したとして、上流側延長306メートルに鋼矢板765枚を打設し、9,153平米にコンクリート止水壁3,978立米および被覆玉石コンクリート18,435立米を施行し、また、7,890平米にモルタル4,734立米をグラウト注入するなどして復旧することとしていたが、うち8,517平米は被災していなかったので鋼矢板257枚の打設、コンクリート止水壁2,458立米およびモルタル注入2,196立米を除外し、被覆玉石コンクリートに代えてコンクリートブロック等4,441立米を施行すれば足りるなどのため、復旧費は259,039,000円となり、162,361,000円(国庫補助金150,508,647円)が過大となっていた。

 (2) 岡山県西大寺市鴨越頭首工38年災害復旧は、査定額313,198,000円(国庫補助金305,054,852円)で、井ぜき延長662メートルのえん体のうち7箇所が被災したとして、上流側延長267メートル、下流側延長260メートルに鋼矢板1,317枚を打設したうえ被覆コンクリート10,910立米等を施行し、延長512メートルに護床のコンクリートブロック21,210個をすえ付けることとしていたが、えん体の上流側延長70メートルおよび下流側は被災していなかったので鋼矢板1,173枚の打設は除外し、また、護床のうち延長167メートルは洗掘されていなかったのでコンクリートブロック10,950個を除外し、さらに被覆コンクリートはえん体の既設の練石張りが残存しているのでコンクリート799立米および練石張り3,026平米を施行することとすれば足りるなどのため、復旧費は212,550,000円となり、100,648,000円(国庫補助金98,031,152円)が過大となっていた。

 (3) 岡山県勝田郡奈義町大谷川水路38年災害復旧は、査定額36,622,000円(国庫補助金34,095,082円)で水路延長423メートルを側壁の上厚40センチメートル、下厚82センチメートル、底厚55センチメートルの三面張りコンクリート981立米、コンクリート砂防えん堤1箇所972立米および床固工36箇所等を施行することとしていたが、砂防えん堤は本件箇所付近に別途林野庁所掌の崩壊地復旧事業によりえん堤を施行することとなっているから除外し、また、三面張りコンクリートは既設の水路が上幅2.7メートル、底幅1.8メートル、高さ1.5メートル程度の素掘りまたは雑石から積み護岸のものであるから、同種の他の工事と同様側壁の上厚25センチメートル、下厚42センチメートル、底厚25センチメートルで361立米を施行すれば足りるなどのため、復旧費は18,321,000円となり、18,301,000円(国庫補助金17,038,231円)が過大となっていた。

3 積算が過大と認められるもの

 (1) 福岡県早良郡早良町大谷川沿岸農地38年災害復旧は、査定額16,022,000円(国庫補助金15,445,208円)で農地11町2反を復旧するもので、流入土砂16,186立米の排土は人力で掘さくし、うち11,664立米を自動三輪車により運搬することとしていたが、人力掘さくのうち12,345立米はブルドーザで掘さくし、うち11,664立米はトラックにより運搬することが可能であるなどのため、これらにより修正計算すると復旧費は13,528,000円となり、2,494,000円(国庫補助金
2,404,216円)が過大となっていた。

 (2) 佐賀県三養基郡基山町城戸川水路38年災害復旧は、査定額2,594,000円(国庫補助金2,526,556円)で水路延長100メートル等を復旧するもので、うち井ぜきは配合比1:3:6のコンクリート248立米を施行することとしていたが、コンクリートの所要量は52立米であるのに計算を誤ったため、1,042,000円(国庫補助金1,014,908円)が過大となっていた。