ページトップ
  • 昭和38年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第6節 各所管別の事項|
  • 第10 建設省|
  • 不当事項|
  • 補助金

鋼矢板塗装の設計が適切を欠いたため工事費が過大と認められるもの


(554) 鋼矢板塗装の設計が適切を欠いたため工事費が過大と認められるもの

(治水特別会計) (治水勘定) (項)河川事業費

 建設省で、大阪府が昭和37年9月から39年1月までの間に工事費2,499,259,887円(うち37年度分947,859,285円)で施行した大阪地区地盤沈下対策事業安治川左岸境橋−安治川ずい道防潮堤かさ上げその1工事ほか32工事に対し国庫補助金999,703,954円(うち37年度分379,143,714円)を交付しているが、鋼矢板塗装の設計が適切でなかったため、工事費約1億1320万円(国庫補助金4530万円)が過大となっていると認められる。

 本件工事は、いずれも既設の石積み等の前面に鋼矢板を打ち込み、堤防をかさ上げするもので、工事に使用する鋼矢板23,826枚は、さび落しをしたうえ防しょくのため塗装を行なうこととして、安治川ほか5河川20工事についてはタールエポキシ2回塗りとし、上塗りは鋼矢板の表面干潮位以上を水線塗料で塗布することとし、塗り手間等を含め平米当り325円から431円総額85,091,093円、また、神崎川ほか1河川13工事については船底塗料で2回、上塗り水線塗料で1回計3回塗りとし、平米当り318円または327円総額33,845,267円、合計118,936,360円を要している。

 しかしながら、本件工事に使用する鋼矢板は厚さ10ミリメートルから15ミリメートルのもので、その腐しょく減少率は、1年につき潮位変化面で0.2ミリメートル、海中部で0.13ミリメートルから0.16ミリメートル、海底土壌中で0.026ミリメートル程度ときわめて低く、運輸省港湾部局、建設省地方建設局等で施行している同種工事、東京都が補助事業として施行している高潮対策事業における事例をみても、防しょくのための塗装をとくに行なっていないものが多数あり、また、塗装を行なっているものも廉価なコールタール塗装を行なっているにすぎず、かつ、さび落しは設計上考慮していない。

 したがって、本件補助工事についても前記直轄工事または補助事業と同程度の工法で施行する場合に要する工事費に対し補助金を交付すれば足りたと認められるもので、いま、仮に鋼矢板の塗装をコールタール2回塗りとして本件各工事を施行したとすれば、塗装費は平米当り60円総額2150万余円で足り、前記33工事において工事費約1億1320万円(国庫補助金4530万円)を減額することができた計算である。