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  • 昭和38年度|
  • 第3章 政府関係機関その他の団体の会計|
  • 第2節 各機関別の事項|
  • 第17 首都高速道路公団|
  • 不当事項|
  • 工事

建築工事の施行にあたり処置当を得ないもの


(614) 建築工事の施行にあたり処置当を得ないもの

 首都高速道路公団で、昭和37年11月、指名競争契約により株式会社奥村組に白魚橋自動車駐車場並びに桜橋一次変電所第1回建築工事を127,000,000円で請け負わせ、その後38年7月16,809,000円、39年1月4,021,000円をそれぞれ設計変更により増額し計147,830,000円で施行しているが、機械損料等の積算が適切を欠いたなどのため工事費が約690万円高価となっていると認められるほか、設計変更にあたり契約金額増減の基礎となる工事量の算定が事実と相違したなどのため工事費7,541,567円が過大に支払われた結果となっており、また、工事材料のうち生コンクリートを請負人に支給しているが、株式会社大和商会に支払った生コンクリート購入費43,749,137円のうち1,498,980円が過払いとなっていて、結局、本件工事において総額約1590万円が当を得ないものと認められる。
 本件工事は、前記駐車場および変電所の新築工事のうちく体工事を施行するものであるが、

(1) その予定価格の積算についてみると、

(ア) 仮設材料の運搬用として10.5トンつりクレーンを3箇月、コンクリート型わく材の運搬用として3トンつりクレーンを12箇月、コンクリート型わく清掃および護岸等のコンクリート取りこわし用として100馬力空気圧縮機を14箇月使用するものとし、これらの機械損料は1箇月30日、1日7時間か働するものとして延か働時間につき、また、運転経費は延か働時間の50%(空気圧縮機)または70%(クレーン)分について見込んでこれら機械の経費を諸経費を含め計10,023,285円と積算している。
 しかしながら、

(a) 仮設材料の運搬用クレーンの規格は、本件仮設材料のうち重量物としての鉄ぐい1本当り重量が1トン未満であることからみて、とくに10.5トンつりクレーンとする必要は考えられず3トンつりのもので足りたものと認められる。

(b) 空気圧縮機使用の主目的を型わく清掃においているが、型わく清掃について空気圧縮機の使用を見込んでいる事例は見受けられず、また、型わく清掃作業は型わくの組立て、撤去作業の一部で、本件の場合も一般の例にならいその歩掛りは別途計上の型わく費に含めて見込まれているから、さらに空気圧縮機の使用を見込む必要はなかったものと認められる。したがって、空気圧縮機の損料としてはコンクリート取りこわしに相当する210時間分だけを見込めば足り、その規格もコンクリートブレーカーの空気消費量毎分1.4立米からみて毎分3.2立米程度の圧縮空気を吐出する能力のある22馬力のもので足りたものと認められる。

(c) 機械損料計算にあたり、機械管理費率をも含めた建設省制定の損料率を適用していながら、これに対しても他工費同様の諸経費17.3%を見込んでいるが、機械管理費率は機械に関する金利、保管経費等諸経費の一部に相当するものについて算定しているものであるから、損料率に機械管理費率を含めた場合機械損料に適用される諸経費率は通常4.2%程度に低減して適用しているものであって、現に同公団土木関係工事についてみても、これを一律に4.2%としている状況である。したがって、本件についても機械損料の諸経費率としては4.2%を見込めば足りたものと認められる。

(d) 前記クレーンの損料計算にあたり、予定工程表から想定される拘束時間3,150時間を延か働時間としているが、前記損料率は当該機械の実か働時間につき適用されるものであり、また、本件クレーンの運転経費の算定においては実か働時間2,205時間によっているものであるから、損料もこれにより計算すべきものと認められる。

(イ) 径16ミリメートル以上の鉄筋のガス圧接費の積算にあたり、圧接する必要 のない鉄筋も含めた全鉄筋を長さ7メートルごとにガス圧接する計算で、ガス圧接費を23,192箇所分3,682,772円と積算している。
 しかしながら、鉄筋の加工、組立てにあたっては、圧接する必要のない鉄筋が相当量あるものであり、圧接箇所数は設計図により算出するのが通常であるから、本件圧接箇所数もこれにより算出すると、余裕をみても14メートルにつき1箇所程度を見込めば足りたものと認められる。
いま、上記各項により工事費を修正計算すると総額140,910,876円となり、本件工事費はこれに比べて約690万円高価となる計算である。

(2) 設計変更に伴う契約金額増減の基礎となる工事量の算定等についてみると、次のとおり、設計数量等を十分検討しなかったなどのため工事量が過大計算となったり、設計変更の処置が適切でなかったりしているものがある。

(ア) 鉄筋コンクリート7,087立米、打放し型わく6,063平米、普通型わく21,942平米、根切土12,124立米および埋めもどし土5,571立米は、く体構造の設計変更に伴い当初の設計数量を修正したものであるが、誤計算、重複計算があったなどのためコンクリート250立米、打放し型わく341平米、普通型わく1,955平米、根切土1,147立米および埋めもどし土883立米が過大となっている。

(イ) 土留め用I型鋼長さ7メートルから13メートルのもの120本、同鋼矢板長さ10メートルおよび13メートルのもの延長70.4メートルは、当初特記仕様書で規定した規格、数量等を設計変更したものであるが、請負人が現場監督員の承諾を得て施行した実績はI型鋼長さ6メートルおよび12メートルのもの103本、鋼矢板長さ7メートルおよび13メートルのもの延長70.4メートルであって、設計変更の数量および規格は実績に比べて過大なものとなっている。

(ウ) 工事の支障となる橋りょうおよび護岸の除去工事におけるコンクリート取りこわしおよび鉄骨解体の当初設計量は推定によって算出したもので、実績により設計変更することとなっている。しかして、このうち鉄骨解体については実績により設計変更増をしているが、コンクリート取りこわしについては、その実績が当初の設計数量に比べて111立米減少しているのに設計変更していない。上記各項により工事費を修正計算すると、諸経費を含め7,541,567円が過大に支払われた結果となっている。

(3) 生コンクリートの購入については、契約上、打設済設計数量により検収することとなっており、現場の検収においても、打設済設計数量を算定して確認することとなっているのに支給生コンクリートのうち鉄筋コンクリート用のものについてみると、打設済設計数量を確認することなく前記誤計算等により過大となっている設計数量7,087立米から業者持ちに変更した分を差し引いた7,013立米を検収数量としたため、打設済設計数量6,690立米から業者持ちの分を差し引いた6,617立米に比べて396立米過大となっており、その支払金額42,266,913円は、設計変更の手続きをとらないで現場の指示により打設した147立米を考慮しても、なお差引き249立米分1,498,980円が過払いとなっている。