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  • 昭和39年度|
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農業共済保険事業の運営が適切でないもの


(223)−(247) 農業共済保険事業の運営が適切でないもの

(農業共済再保険特別会計)

 農業共済保険事業の運営が適切を欠いている事例については、毎年度の検査報告に掲記してその適正をはかるよう注意してきたところである。昭和40年においては、主要農作物共済に関し福島ほか8県の80農業共済組合および3市町(共済金993,437,060円)について調査を行なったところ、共済金の全部または一部を組合員に支払わなかったり、共済金を補償対象外の組合員を含め引受面積割等で配分したりしているなど共済金の経理当を得ないと認められるものが32組合において393,893,909円(国庫負担推定額3億0355万余円)あり、これを不当の態様別に示すと次表のとおりである。

県名 調査済共済組合等数 調査済共済金額 共済金を組合員に全く支払わないもの 共済金の一部を組合員に支払わないもの 共済金を補償対象外の被害3割未満のものを含めて配分しているもの
組合数 共済金額 組合数 共済金額 組合数 共済金額 組合数 共済金額

岐阜県

11

65,838,342



2

16,156,821

3

20,367,271

5

36,524,092
奈良〃 13 136,114,373 1 1,058,691 4 68,585,371 2 6,002,377 7 75,646,439
愛媛〃 10 149,607,602 9 127,341,571 9 127,341,571
高知〃 16 209,284,182 8 104,351,782 8 104,351,782
福岡〃 8 111,502,421 2 19,357,263 1 30,672,762 3 50,030,025
58 672,346,920 1
1,058,691

((イ)1,058,691)
25
335,792,808
(ア)233,508,507
(イ)90,409,738
6
57,042,410
((ア)56,122,635)
32
393,893,909
(ア)289,631,142
(イ)91,468,429

備考 ( )内の数字の(ア)は正規の基準によらないで交付した共済金額、(イ)は目的外に使用した共済金額をうち書きしたものである。

 これら不当に経理された共済金のうち正規の基準によらないで組合員に交付したものが289,631,142円、補償対象外の組合員を含めて未収の掛金、賦課金等に充てているものが12,794,338円あり、また、残額91,468,429円を目的外に使用している。
 しかして、これら組合のうちには、保険金請求に際し、架空に引き受けていた耕地にも被害があったこととして被害報告を行なったもの、共済金の全部または一部を別途に経理してこれをそのまま掛金、賦課金に充当し、組合員からは掛金、賦課金を全く徴収していないものも見受けられた。
 いま、検査の結果判明した不当経理のうち、共済金を目的外に使用したものが1組合当り20万円以上のものをあげると次表のとおり25件91,463,990円あり、これらのうちとくに不当と認められる事例は次のとおりである。

(1) 奈良県北葛城郡上牧村農業共済組合で、38年産水稲および麦保険金1,054,287円を県農業共済組合連合会から受領しているが、同組合は農作物の被害について適正な損害評価を行なわず、共済金1,058,691円を全く支払っていないばかりでなく、掛金、賦課金479,105円も全く徴収せず、保険金の一部は同連合会に支払うべき保険料、賦課金に充てられていて、事実上事業を休止していた。

(2) 愛媛県松山市農業共済組合(潮見ほか2地区)で、38年産麦共済に関し、作付けが行なわれていない耕地31町1反を含め同麦の引受面積を440町9反として県農業共済組合連合会に引受けの通知を行ない、同連合会から前記31町1反についての架空の減収量64,198キログラムを含め888,722キログラムと損害の認定を受けて保険金19,996,245円(うち架空の減収量に対する保険金相当額1,444,455円)を受領している。
 しかして、同麦共済金20,263,691円を損害評価書どおり支払ったこととしているが、実際はこれに38年産水稲共済金等を合わせた21,732,254円のうちから実評価に基づく被害割で5,481,387円、同麦耕作面積に対し均等割で10,895,190円計16,376,577円を支払い、預金利息を含めた残額5,373,315円は、1,711,433円を38年産水稲および39年産麦等の共済掛金、賦課金に、2,037,141円を役員等の特別手当、旅行経費等に使用し、1,624,741円を別途に保有していた。

(3) 高知県高岡郡日高村(旧日下)農業共済組合で、38年産水稲および麦共済金15,296,196円を損害評価書どおり支払ったこととしているが、実際は部落ごとに被害割で4,130,368円を配分し、その後の使途を一任のうえ部落代表に交付しただけで、残額11,165,828円は、うち1,109,468円を38年産水稲および39年産麦共済掛金、賦課金に、851,800円を業務費に使用し、2,000,000円を組合事務所建設資金として保有していたほか、7,204,560円を将来の掛金、賦課金の財源として別途に保有しており、また、組合員からは掛金、賦課金を全く徴収していない。

農業共済保険事業の運営が適切でないものの図1

 

備考 (ア) 共済目的欄中、38、39はそれぞれ38年産、39年産を略したものである。
(イ) ※印を付した欄の( )内の金額は共済金に合わせて支払った他の金額を外書