ページトップ
  • 昭和39年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第6節 各所管別の事項|
  • 第10 建設省|
  • 不当事項|
  • 工事

工事の施行にあたり計画当を得ないため不経済となっているもの


(592) 工事の施行にあたり計画当を得ないため不経済となっているもの

(治水特別会計) (治水勘定) (項)河川事業費

 関東地方建設局で、昭和39年4月、指名競争契約により鹿島建設株式会社に岩井分水路第5掘さく工事を20,650,000円で、また、同年11月、指名競争契約により河本工業株式会社に同第6掘さく工事を24,750,000円でそれぞれ請け負わせ施行しているが、土量配分計画が適切でなかったなどのため、第5掘さく工事で約490万円、第6掘さく工事で約170万円が不経済となっていると認められる。

 本件工事のうち第5掘さく工事は、栃木県足利市勧農町地先で渡良瀬川岩井分水路の低水敷地64,600立米を掘さくして新たに築堤する堤防敷3箇所、仮締切堤敷1箇所に運搬盛土するもので、その運搬距離を平均1,400メートル、運搬費を6,868,189円と積算し、また、第6掘さく工事は、同市北猿田地先で本川の高水敷82,400立米を掘さくし、うち76,000立米を第5掘さく工事で盛土した箇所の延長箇所に盛土するもので、その運搬距離を平均880メートル、運搬費を6,264,443円と積算している。

 しかして、第5掘さく工事の掘さく土を平均1,400メートル運搬して前記の堤防敷3箇所および仮締切堤敷1箇所に盛土したのは、未成となっていた当該箇所を築堤し、新堤防の概成を急いだことによるものであり、第6掘さく工事の掘さく土を平均880メートル運搬したのは第5掘さく工事の施行によって概成した堤防の延長箇所に盛土したことによるものである。
 しかしながら、本件両工事の掘さく箇所と盛土箇所との関係についてみると、両工事の掘さく箇所と盛土箇所とが相互に交錯しており、その盛土箇所を交換して掘さく土を運搬することとすれば運搬距離を大幅に減少することができ、運搬経費を節減することができるものと認められる。すなわち、第5掘さく工事の掘さく土は平均1,400メートルもの運搬を行なわなくともこれより近い第6掘さく工事の盛土箇所に流用することが可能であり、一方、第6掘さく工事の掘さく土も880メートルを運搬することなく、逆に、これより近い第5掘さく工事の盛土箇所に流用することが可能であって、これによりこの盛土箇所が一時的に未成のままとなったとしても、同年度中に盛土することとなるものであり、また、その前面は在来堤防により保護されているのであるから、このように盛土したとしても、工事の施行に支障をきたすものとは認められない。したがって、第6掘さく工事の掘さく土が砂利混り土砂のため築堤の中詰めにしか使用できないという事情を考慮して、その表土は第5掘さく工事の掘さく土を運搬して使用することとしても、第5掘さく工事の掘さく土64,600立米のうち第6掘さく工事の盛土箇所に流用可能な54,910立米は470メートル、残りの9,690立米は1,100メートルの運搬で足り、また、第6掘さく工事の掘さく土76,000立米のうち第5掘さく工事の盛土箇所に流用可能な54,910立米は540メートル、残りの21,090立米は430メートルの運搬で足りるものと認められる。
 また、第6掘さく工事の運搬土の敷きならし作業については、運搬車が堤脚に捨土しこれをブルドーザによって押し上げることとしてブルドーザの押土距離を50メートル、1時間当り作業能力を38立米とし、その経費を7,600,553円と積算しているが、本件堤防敷は敷幅が52メートルあり、しかも、第6掘さく工事の掘さく土は砂利混り土砂であるからその捨土地である堤防敷には運搬車が自由に進入することができるものと思料され、ことさら堤脚にいったん捨土してブルドーザでこれを押し上げる作業を想定する要はなく、ブルドーザは通常の例に従い押土距離を20メートル程度として積算すれば足りるものと認められる。
 いま、仮に上記の土量配分計画により両工事を施行することとして工事費を修正計算すると、第5掘さく工事は15,723,900円で足り、本件工事費に比べて約490万円を、また、第6掘さく工事は22,963,510円で足り、本件工事費に比べて約170万円をそれぞれ節減することができたものと認められる。