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  • 昭和40年度|
  • 第3章 政府関係機関その他の団体の会計|
  • 第2節 各機関別の事項

日本住宅公団


第14 日本住宅公団

 日本住宅公団の昭和40事業年度末資本金は768億6891万余円(うち政府出資は現物出資76億6858万余円を含め748億6858万余円)で、前事業年度末に比べて1億3932万余円(全額政府現物出資)増加している。
 40事業年度に実施した事業のうち、住宅建設では、当初計画戸数4万戸(賃貸住宅2万6千戸、分譲住宅1万4千戸)で、その後1万3千戸(賃貸住宅1万1千戸、分譲住宅2千戸)を追加し、5万3千戸(賃貸住宅3万7千戸、分譲住宅1万6千戸)と改訂したが、これに対し56,262戸(賃貸住宅40,158戸、分譲住宅16,104戸)の請負契約を締結し、住宅建設費の債務負担済額は予算現額715億0905万余円に対し714億0544万余円で、前事業年度に比べて258億9996万余円増加し、支出決定済額は520億5383万余円である。しかして、上記発注戸数に対し前事業年度までに発注済の分を含め年度内に完成したのは34,009戸(賃貸住宅21,797戸、分譲住宅12,212戸)である。

 宅地造成では、買収計画面積3071万余平方メートル(住宅用地872万余平方メートル、工業用地280万余平方メートル、研究学園都市用地1917万余平方メートル)に対し658万余平方メートル(住宅用地530万余平方メートル、工業用地127万余平方メートル)の購入契約を締結するなどし、宅地造成費の債務負担済額は予算現額364億1675万余円に対し181億2727万余円で、前事業年度に比べて16億3346万余円増加し、支出決定済額は161億9571万余円である。このように予算現額に対して債務負担済額が少なかったのは、主として東京都南多摩地区および研究学園都市の両開発事業で用地買収がはかどらなかったことによるものである。しかして、40事業年度中に譲渡した宅地の面積は計画面積577万余平方メートル(住宅用地72万余平方メートル、工業用地505万余平方メートル)に対し147万余平方メートル(住宅用地105万余平方メートル、工業用地41万余平方メートル)となっている。

 40事業年度の所要資金1641億2784万余円については、政府補給金4億4107万余円、資金運用部資金の借入金381億円、簡易生命保険及郵便年金積立金の借入金23億円、生命保険会社等からの借入金670億円、債券発行による収入金95億8461万余円、家賃、分譲住宅等収入337億7606万余円、分譲宅地等収入25億9525万余円等を充当している。なお、上記補給金は、従来所要資金の原資の一部としていた政府出資金を借入金等に代えたことに伴う金利負担等の増加を軽減するために交付を受けたものである。

 40事業年度の損益は、住宅管理部門では家賃、分譲住宅収入等収益383億8024万余円、その管理費および原価等費用345億9100万余円、宅地管理部門では分譲宅地収入等収益64億3465万余円、その原価等費用61億8940万余円、特別住宅管理部門では家賃、政府交付金等収益1億3044万余円、その管理費等費用1億3759万余円で、40億2734万余円の粗利益を生じ、これを減価償却引当金等に繰り入れたため収益、費用とも同額の449億5248万余円となっており、前事業年度に比べてそれぞれ55億5605万余円増加している。

 検査の結果、別項記載のとおり、土地買収予定価格の評定について 、41年12月、日本住宅公団総裁あて改善の意見を表示した。

改善の意見を表示した事項

  土地買収予定価格の評定について

(昭和41年12月2日付41検第337号)

 日本住宅公団における集団住宅の建設および宅地の造成のための土地買収は、近年、その事業量が著しく増大し、昭和40事業年度の買収実績は9,927,925平方メートル309億2847万余円に上っている。
 しかして、これらの土地の買収予定価格の評定にあたっては、近傍類地の売買実例、課税上の評価額等を調査するほか、民間精通者の鑑定評価格を徴して評定資料を作成し、同公団の役員および職員で構成する土地等評価審議会においてこれを調査審
 議することとしているが、本院において、本所および東京ほか4支所等について光明池ほか47地区の土地買収につき実地に検査したところ、

(1) 売買実例として調査した取引価格等が事実と相違していてその調査の根拠も明らかでなかったり、適切な売買実例等を調査した事跡がなかったり、類似性に乏しい売買実例を収集したりなどしているほか、売買実例の検討にあたり、位置、形状、造成費、有効面積等土地価格形成上の諸要素を十分比較考量していないもの、

(2) 特段の事由があるとは認められないのに、特殊価格として評価した民間精通者の、しかも1名だけの鑑定評価格をそのまま採用しているものなどがあり、なかには、土地所有者等との価格交渉がほとんど成立した後にようやく売買実例の調査や鑑定評価の依頼を行なっているものも見受けられる状況で、買収予定価格の評定が適正に行なわれていないと認められるものが少なくない。

 このような事態を生じているのは、売買実例等の収集および検討、鑑定評価の徴取等についての具体的手続に関する規程が整備されていないことならびに土地買収業務に従事する職員に経験に乏しい者が多いこと、職員の配置が公共用地を取得する他の団体に比べて十分でないことによるほか、土地所有者等との買収交渉が前記土地等評価審議会の調査審議の結果をまつことなく進められ、同審議会の審議結果を必ずしも十分に買収交渉に反映させることができるような体制となっていないこともあって、適正な買収予定価格のは握についての配慮を欠いていたことによるものと認められる。

 ついては、同公団の土地買収の事業量は膨大に上り、その買収価格も他に影響するところが大であり、かつ、用地取得は今後ますます困難性を増す傾向にあることにかんがみ、土地買収予定価格評定について、執行機関等の責任体制を確立し、評定手続等に関する規程をすみやかに整備するほか、土地買収業務に従事する職員の配置、研修等について適切な処置を講ずるなど買収予定価格の適正化を図るよう格段の努力を傾注するとともに、土地買収業務の公明な運営を期する要があると認められる。