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  • 昭和40年度|
  • 第3章 政府関係機関その他の団体の会計|
  • 第2節 各機関別の事項

日本道路公団


第16 日本道路公団

 日本道路公団の昭和40事業年度末資本金は450億1504万余円(全額政府出資)である。
 40事業年度に実施した道路等の建設は、前事業年度からの継続事業として東名高速道路ほか2高速道路および第三京浜道路ほか19道路1駐車場1附帯事業施設、新規事業として新規高速道路および東京川越道路ほか3道路1附帯事業施設を建設する計画に対し、継続事業は3高速道路19道路1駐車場1附帯事業施設、新規事業は1道路の建設を行ない、建設費の決算額は予算現額1031億4649万余円に対し856億6009万余円で、前事業年度の決算額に比べて243億8639万余円増加している。建設費のうち、高速道路関係建設費は予算現額760億5026万余円に対し決算額669億0310万余円で、一般有料道路等の建設費は予算現額270億9623万余円に対し決算額187億5698万余円であり、建設費予算の残額は174億8640万余円となっている。このように予算残額を生じたのは中央高速道路等で用地買収がはかどらなかったことなどによるものである。
 40事業年度の所要資金1286億0651万余円については、債券発行による収入金922億6875万円、国際復興開発銀行借入金123億9790万円、業務収入152億4600万余円等を充当している。
 40事業年度の損益は、料金収入等の収益155億9234万余円、管理業務費18億8324万余円、諸引当損47億7801万余円、支払利息120億7174万余円等の費用204億5088万余円、差引き当期損失48億5854万余円で、前事業年度に比べて収益で25億0754万余円、費用で38億0741万余円増加し、12億9987万余円の損失増加となっている。

 しかして、33年4月工事を開始した名神高速道路は、40年6月一宮、小牧間8キロメートルが完成し、すでに営業を開始していた西宮、一宮間181キロメートルと合わせ全延長189キロメートルの工事を完了し、同年7月全線が開通した。その建設費の総額は1144億9220万余円となっており、40事業年度におけるその損益は、料金収入等の収益49億5988万余円をあげたが、管理業務費5億1233万余円、支払利息77億0527万余円等の費用93億4231万余円を要したため差引43億8243万余円の損失を生じている。また、一般有料道路等について、同事業年度末現在営業中のものは66道路4駐車場4附帯事業施設(うち同事業年度中に新たに営業を開始したもの3道路)であるが、その損益を道路、駐車場および附帯事業施設の各別にみると、道路では京葉道路ほか34箇所で減価償却前利益36億0903万余円をあげ、第三京浜道路ほか30箇所で損失9億3825万余円を生じ、駐車場では日比谷自動車駐車場で利益4078万余円をあげ、長堀自動車駐車場ほか2箇所で損失2億1825万余円を生じ、また、大津サービスエリアほか3附帯事業施設では利益1億1254万余円をあげている。

 検査の結果、別項記載のとおり、高速自動車国道建設工事の予定価格の積算等について 、41年12月、日本道路公団総裁あて改善の意見を表示したほか、次のとおり留意を要すると認められるものがある。

(鉄筋コンクリート基礎くい工の監督および検査について)

 日本道路公団が施行している高速自動車国道建設工事においては、基礎くいに鉄筋コンクリートくいを使用する設計によっている工事が多数あり、昭和40年度契約分だけみても基礎くい工は約3億9000万円に上っているが、高速道路静岡、京浜、八王子各建設局で施行中の東名、中央両高速道路建設工事のうち静岡工事ほか6件工事につき、日本工業規格および特殊規格の遠心力鉄筋コンクリート基礎くい6,229本についてその内部に使用されている鉄筋等を検査したところ、監督および検査が適切を欠いたため、うち2,569本について、仕様書に比べて径の細い軸筋、組立筋を使用しているもの、軸筋の使用本数が不足しているもの、軸筋、組立筋に規格外の再生鋼材を使用しているもの、組立筋を全く使用していないもの、くいの外径やコンクリートの肉厚が不足しているものなどが見受けられた。
 基礎くい工は、工事完成後における施行状況の確認や手直しが不可能なものであるから、その施行過程における監督および検査を適確に行ない、適正な施行を確保する要があると認められる。

改善の意見を表示した事項

  高速自動車国道建設工事の予定価格の積算等について

(昭和41年12月1日付41検第335号)

 日本道路公団における高速自動車国道の建設は、昭和40年度に完成した名神高速道路のほか、東名、中央両高速道路を43年度末の完成を目途に施行中であり、さらに41年7月には延長約1,010キロメートルに及ぶ中央自動車道甲府小牧線ほか5路線の施行命令が発せられ、施行延長も逐年増加している。しかして、41年中、本院において、東名、中央両高速道路建設工事のうち40年度中に発注された春日井工事ほか53件約507億円の土工を主体とした工事について、その設計、予定価格の積算、施行の状況等を調査した結果、積算が施行の実情にそっていなかったり、設計、積算、検収相互間の考え方に一貫性がなく取扱も区々となっていたりしているため、不経済な結果となっているなどの事例が下記のとおり見受けられた。

 このような事態を生じているのは、工事実施部門と積算担当部門との連絡調整が十分でないなどのため現行の積算基準およびその運用が工事施行の実情に適応していなかったり、仕様書等の内容が明確を欠いていたりしていることなどによるものと認められる。
 しかして、高速自動車国道の建設工事は、同種工事をきわめて大きな規模で発注しており、工事費の積算にあたり、機械損料、材料費等の算出単価にわずかな開差があっても総額においては大差を生ずるものであり、しかも工事量が逐年増加する状況にあるのであるから、諸積算要領や仕様書等を検討するとともに、先行工事または調査、試験工事の実績等を適確に反映するよう関連部門間の連絡調整を十分にし、建設費の効率的使用を図る必要があると認められる。

(1) 建設機械の損料の積算については、36年に建設省が定めた機械損料率と当時の機械購入価格とを基礎にして同公団が制定した「建設機械器具損料表」によって算定しているものであるが、その後建設機械の性能の向上に伴い、これら建設機械のうち土工工事において多く使用されるダンプトラック、ブルドーザ等は、耐用時間が長くなったり、定期整備費等が減少したりしているなどのため、時間当り損料は低価となっている状況であるのに、前記損料表をそのまま適用しているのは実情にそわないと認められる。

(2) ダンプトラックによる土砂の運搬費の積算については、土砂の積載量は土質ごとに定められている土の立方メートル当り重量等により算出し、その積載容量限度をダンプトラックの荷箱容量の3割増しまでとして運搬費を算定することとしているものである。しかして、6トン積ダンプトラックについては、その積載容量を35年当時製造されていたダンプトラックの荷箱容量により3.5立方メートルを基準として計算しているが、37年以降製造された同ダンプトラックの荷箱容量はすべて4立方メートルとなっているものであるから、上記の荷箱容量3.5立方メートルを基準として運搬費を積算しているのは実情にそわないと認められる。

(3) 現場打鉄筋コンクリートくい工のうち全ケーシング工法による場合の使用機械の損料の積算については、同公団制定の損料表にはフランスベノトEDF−55、アースドリル20−THおよび国産ベノトBT−2の3機種について規定しているが、他方、「現場打杭積算要領」による能率基準には、上記3機種のうち国産ベノトBT−2についての規定を設けておらず、このため、通常掘さく長が20メートル以下の工事の場合、その施行にあたっては国産ベノトBT−2の使用をも承認していながらアースドリル20−THの損料と能率とによって算出している。
 しかしながら、国産ベノトBT−2はアースドリル20−THに比べて損料が低価であり、また、これらの機械はそれぞれ工法上の特性を有するものであるから、現地の土質等に適応した機械で積算すべきであり、国産ベノトBT−2について能率基準を定めていない前記要領は実情にそわないと認められる。

(4) 基礎工事等に使用する既製鉄筋コンクリートくいにかかる諸経費の積算については、通常の諸経費率により算定しているが、同品は請負業者が既製品を購入するものであり、PSけた、鋼くい、ガードレール等他の二次製品と同様その取扱等に要する経費が少額で足りるものであるから減額計算すべきであるのに、通常の諸経費率により算定しているのは実情にそわないと認められる。

(5) 現場打鉄筋コンクリートくい工の積算にあたっては、使用する機械のか働時間について「現場打杭積算要領」に定める数値をそのまま採用し算定しているが、この種機械の能率は現地の土質や作業条件等の影響を大きく受けるものであり、とくに、土質や作業条件が同一で作業量が多い工事の場合は、通常事前に実施している試験工事の結果を検討のうえ、適切な数値を採用すべきであり、前記積算要領に定められている数値をそのまま適用しているのは実情にそわないと認められる。
 また、ダンプトラックによる土砂の運搬費の積算についても、同公団制定の「高速自動車国道設計要領」で定めている土質ごとの立方メートル当り重量の平均値をそのまま適用し算定しているが、その重量は土の組成内容、密度等によって異なるものであるから、客土掘さくのように均質土を大量に運搬する場合は事前に実施した土質調査の結果を検討のうえ適切な数値を採用すべきであり、前段同様その積算は実情にそわないと認められる。

(6) ブロック積工等の積算については、工事に使用する間知ブロック等の強度、形状に関して仕様書、図面に具体的に示されておらず、また、その工事費の積算に関しても同公団制定の「土工関係積算要領」に明確な定めがないため、同一建設局内においても平方メートル当り工事費に開差を生じているものがあるほか、建設局によってはブロック積工に使用する胴込コンクリート量等について、間知ブロックの形状等からみて過大と認められる所要量を定めているものがある。
 また、工事の施行にあたって使用する間知ブロックの強度、形状については、工事の監督員がこれを承認することとなっているが、その承認につき明確な基準を定めていないため、圧縮強度がまちまちとなっていたり、建設局によっては高速道路工事用には適当でないとして使用を承認していない製品を他の建設局においては監督員がその使用を承認したりしている状況で、取扱が区々となっている。

(7) 敷砂工の積算にあたっては、敷砂のロス、沈下およびめり込み等を考慮して工事施行図面に示された敷砂の設計量に対し最低10%から最高56%の割増量を見込んで算出している。
 しかしながら、同公団制定の「土木工事共通仕様書」には敷砂工の検収の時期および方法について具体的な規定もなく、実際は、敷砂工を行なった直後に施行図面を基として出来形を検収している状況であって、この場合本院調査の結果によれば敷砂量は設計量を多少上回る程度で足りていて、前記積算に見込まれているようなロス、沈下およびめり込み等の割増量は、実情にそわないものとなっており、敷砂工の積算と検収の考え方に一貫性がないと認められる。