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  • 昭和42年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 各所管別の事項

建設省


第10 建設省

(一般会計)

 昭和42年度歳入歳出決算額は、歳入50億7375万余円、歳出6425億0676万余円で、歳出決算額のうちおもなものは、道路整備特別会計へ繰り入れた揮発油税等財源道路整備事業費2872億8650万円および道路整備事業費484億5902万余円、治水特別会計ヘ繰り入れた治水事業費等1020億3674万余円、国が直轄で施行した河川等災害復旧事業費99億6209万余円、地方公共団体が施行した河川等災害復旧事業、住宅建設事業、都市計画事業に対する国庫補助金および国庫負担金1490億4298万余円である。

 検査の結果、別項記載のとおり、公共事業に対する国庫補助金等の経理当を得ないもの がある。

 なお、災害復旧事業については、事業費査定の適否につき実地に検査したところ、別項記載のとおり、査定額を減額させたもの がある。

(道路整備特別会計)

 昭和42年度歳入歳出決算額は、歳入4373億8796万余円、歳出4351億0869万余円で、歳入決算額のうちおもなものは、一般会計より受入3933億3230万余円、地方公共団体工事費負担金収入335億3074万余円、歳出決算額のうちおもなものは、道路事業費2879億4341万余円、街路事業費573億6990万余円、首都圏道路整備事業費398億7808万余円であって、国が直轄で施行した事業費は1640億0977万余円、地方公共団体が施行した事業に対する国庫補助金は2358億8102万余円となっている。

 検査の結果、別項記載のとおり、公共事業に対する国庫補助金等の経理当を得ないもの があるほか、次のとおり留意を要すると認められるものがある。

 (歩道のアスファルトコンクリート舗装工事について)

 建設省各地方建設局および地方公共団体で、昭和42年度中に施行した歩道のアスファルトコンクリート舗装工事は、延長398キロメートルおよび497キロメール計895キロメートル、工事費約6億2200万円および約6億9100万円(国庫補助金相当額約4億2200万円)計約13億1400万円となっている。

 しかして、歩道は、主として歩行者の荷重だけを対象としているので車道と異なり路床の上に上層路盤と表層アスファルトコンクリートとを施行する簡易な構造となっているばかりでなく、幅員が狭少で、かつ、電柱、街路樹等の支障物があるため、車道と同等の転圧を行なうことは困難と認められるものであるが、その舗装工事施行の状況についてみると、路盤およびアスファルトコンクリートの仕様について、支持力、密度等を車道の場合と同じくしていたり、これらの仕様をとくに示していなかったりして区々となっており、また、工事費の積算においても、締固めによる材料の割増率を車道の場合と同じにしているものがあるなど適切とは認め難いものが少なくない状況である。

 ついては、歩道のアスファルトコンクリート舗装工事は、今後も引続き施行されることが見込まれるものであるから、実情に即した仕様を定め積算を行なって、適切な施行管理および経済的な工事施行を図るよう配慮の要があると認められる。

(治水特別会計)

 本特別会計は、治水および特定多目的ダム建設工事の両勘定に区分して経理されており、このうちおもな勘定である治水勘定の昭和42年度歳入歳出決算額は、歳入1321億9392万余円、歳出1298億5916万余円で、歳入決算額のうちおもなものは、一般会計より受入1119億1309万余円、地方公共団体工事費負担金収入135億7152万余円、歳出決算額のうちおもなものは、国が直轄で施行した河川事業費453億8711万余円、砂防事業費49億9407万余円、地方公共団体が施行した河川事業に対する国庫補助金258億5387万余円、砂防事業に対する国庫補助金208億1097万余円である。

 検査の結果、別項記載のとおり、築堤工事の施行にあたり処置当を得ないもの直轄工事の施行が不良なもの公共事業に対する国庫補助金等の経理当を得ないもの がある。

不当事項

工事(227)(228)

(227)  築堤工事の施行にあたり処置当を得ないもの

(治水特別会計)(治水勘定)(項)河川事業費

 四国地方建設局で、昭和43年2月、指名競争契約により株式会社安達組に昭和42年度川島築堤工事を8,080,000円(当初契約額7,900,000円)で請け負わせ施行しているが、盛土量に法ごしらえの土量を重複して設計したため工事費439,000円が過大に支払われた結果となっているほか、法ごしらえ用山土の価格の積算が適切を欠いたため工事費が約70万円高価となっており、また、盛土を必要以上に余盛りしたため約60万円が不経済となっていて、結局、本件工事において総額約173万円が当を得ないものと認められる。
 本件工事は、吉野川中流部の既設堤防を計画断面に築造するため、完成既設堤防の上流側延長519メートルおよび下流側延長570メートルに盛土10,780立方メートル等を施行するものであるが、

(1) 下流部の盛土は、2,880立方メートルを施行することとしているが、このうちには裏法法ごしらえ3,770平方メートルに使用する山土1,130立方メートルが含まれており、法ごしらえ工においても所要の山土を施行することとしていたため、重複分は施行されなかったものであるのに、いずれも設計どおり施行したものとして検収したため、工事費439,000円が過大に支払われた結果となっている。

(2) 下流部の裏法法ごしらえ3,770平方メートルに使用する山土1,130立方メートルは、同区間裏法面の土質が切込砂利であるので、法面を保護する必要があるとして、築堤盛土用の山土より良質のものを使用することとし、山土代を立方メートル当り960円として計1,084,800円と積算しているが、上流部裏法面および施行法面の一部の土質が切込砂利となっている上下流部の表法面計5,150平方メートルについても法ごしらえはすべて築堤盛土用の山土立方メートル当り312円のものを使用することとしていることなどからみて、本件法ごしらえについても他の法面と同様築堤盛土用の山土を使用することとして積算すれば足りたものと認められる。
 いま、仮に本件法ごしらえに築堤盛土用の山土を使用することとすれば、その山土代は353,249円となり、結局、本件工事費は約70万円高価となっていると認められる。

(3) 築堤盛土10,780立方メートルの施行にあたり、余盛りは、堤防を新たに築造する場合の例により余盛高を表法肩箇所で0.2メートル、天ば中心箇所で0.5メートルとして3,800立方メートルを施行したものであるが、本件盛土は、完成後40年以上も経過し、基盤および堤体が切込砂利である既設堤防の上に若干のかさ上げ等を施行するにすぎないものであるから新堤築造の場合と同様な圧密沈下を生ずるとは認められず、新たな盛土に応じた余盛高を考慮すれば足りたものと認められる。
 いま、仮に本件かさ上げ等の盛土に応じた余盛高を表法肩箇所で0.1メートル、天ば中心箇所で0.3メートル程度とすれば、余盛土量は2,167立方メートル程度で足りることとなり、これにより施行したとすれば工事費相当額約60万円を節減することができたものと認められる。

(228)  直轄工事の施行が不良なもの

(治水特別会計)(治水勘定)(項)河川事業費

 近畿地方建設局で、昭和42年12月、指名競争契約により株式会社前田組に22,880,000円で請け負わせ施行した松原掘削築堤及護岸他1件工事は、43年3月、設計どおりしゅん功したものとして検収を了しているが、コンクリートブロック練張護岸の胴込めコンクリートを設計と相違して施行したため、その強度が設計に比べて著しく低下していると認められる。
 本件工事は、兵庫県竜野市揖保町松原地先の揖保川左支川林田川右岸の護岸延長250メートルを改修するもので、うちコンクリートブロック練張護岸2,103平方メートルの胴込めコンクリート609立方メートル(工事費4,540,872円)は、設計書および仕様書によると、立方メートル当りセメント220キログラム配合のもので平方メートル当り0.29立方メートルを施行することとなっているのに、実際は胴込めコンクリートのつき固めおよびてん充が十分でなかったなどのため、コンクリートはモルタルと粗骨材とが分離した粗悪なものとなっているほか内部に空げきを生じているなど、胴込めコンクリートの強度が設計に比べて著しく低下していると認められる。

補助金(229)−(255)

(229)−(254)  公共事業に対する国庫補助金等の経理当を得ないもの

(一般会計)(組織)建設本省 (項)都市計画事業費(項)河川等災害関連事業費(項)昭和42年発生河川等災害関連事業費(項)河川等災害復旧事業費(項)昭和42年発生河川等災害復旧事業費
(道路整備特別会計) (項)道路事業費(項)特別失業対策事業費
(治水特別会計)(治水勘定) (項)砂防事業費

 地方公共団体が施行した公共土木施設の新設、改良および災害復旧等の工事に対する国庫補助金または国庫負担金(以下「国庫補助金」という。)は、道路整備緊急措置法(昭和33年法律第34号)、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法(昭和26年法律第97号)等に基づいて交付されるものである。しかして、全国の工事箇所86,159のうち北海道ほか32都府県につきその9.0%に相当する7,779箇所(工事費154,682,587,799円、国庫補助金90,146,846,369円)を実地に検査したところ、国庫補助金の経理当を得ないと認められたものが北海道ほか19府県(注) において、不当と認めた工事費に対する国庫補助金相当額(一部未交付分を含む。)が1工事につき10万円以上のもので45工事15,084,136円(うち道路整備特別会計の分7工事4,721,166円、治水特別会計治水勘定の分3工事1,545,332円)ある。

 公共事業関係国庫補助金の経理については、不当と認めた事例を毎年度の検査報告に掲記して注意を促してきたところであるが、なお上記のように不当な事例が絶えないことにかんがみ、工事の適正な施行について一層配慮の要があると認められる。
 いま、前記45工事について、これを不当の態様別にみると、

1 工事の施行が不良で設計に比べて強度が著しく低下していると認められるもの

 (ア) コンクリート工事においては、河川の底張り、えん堤等の工事で多量の水や粒度の不適格な骨材を使用したため強度が低下しているもの、締固めが十分でなかったためモルタルと粗骨材とが分離しているものなど16工事国庫補助金相当額6,318,373円

 (イ) コンクリートブロック積み工事および石垣工事においては、胴込めや裏込めのコンクリートは、多量の水や粒度の不適格な骨材を使用して施行していたり、つき固めが十分でなかったためモルタルと粗骨材とが分離していたり、施行量が設計に比べて著しく不足していたりしているものなど16工事国庫補助金相当額3,888,052円

 (ウ) 道路舗装工事においては、アスファルトコンクリートの厚さやアスファルト量が不足しているもの、過熱酸化したアスファルト混合物で施行したためアスファルトコンクリートがぜい弱となっているもの3工事国庫補助金相当額1,167,833円

2 工事の出来高が設計に比べて不足しているもの

 コンクリートブロック積み工事で胴込めや裏込めのコンクリートおよび裏込めぐり石の量が不足しているもの、道路工事で路盤の砕石の量が不足しているもの、河川の底張り工事でコンクリートの厚さが不足しているものなど10工事国庫補助金相当額3,709,878円となっている。
 しかして、不当と認めた工事費に対する国庫補助金相当額が1工事につき20万円以上のものをあげると次表のとおり26件12,156,180円である。
(注)  次表に掲記した府県のほか北海道、兵庫、和歌山、宮崎各県

府県名 工事 事業主体 工事費 左に対する国庫補助金 不当工事費 左に対する国庫補助金相当額 摘要
千円 千円 千円 千円
(229) 岩手県 花巻市鍋割川41年災害復旧 岩手県 1,265 844 309 206 護岸コンクリートブロック練積み工事の施行不良
(230) 秋田県 北秋田郡花矢町町道赤湯線41年災害復旧 大館市
(旧花矢町)
2,647 1,765 327 218 土留めコンクリートブロック練積み工事の施行不良
(231) 千葉県 君津郡天羽町町道湊数馬線特殊改良 天羽町 2,000 1,000 525 262 側溝コンクリート工事の施行不良
(232)  同 君津郡上総町町道久留里松丘線道路改良 上総町 4,249 2,832 1,169 779
6,249 3,832 1,694 1,041
(233) 新潟県 柏崎市桐沢川通常砂防 新潟県 9,492 6,328 520 346 砂防えん堤の水たたきコンクリート工事の施行不良
(234)  同 北蒲原郡加治川村村道向中条上通線ほか2線42年災害復旧 加治川村 2,840 2,233 354 278 側溝コンクリート工事の施行不良
(235)  同 北蒲原郡笹神村モグラ沢川42年災害復旧 笹神村 6,682 6,608 439 434 底張りコンクリート工事の施行不良
(236)  同 南魚沼郡湯沢町宇津野川41年災害復旧 湯沢町 3,962 3,407 942 810 えん堤のコンクリート工事の施行不良
22,976 18,577 2,255 1,869
(237) 山梨県 南都留郡足和田村三沢川41年災害復旧 山梨県 19,532 18,224 433 403 底張りコンクリート工事の出来高不足
(238) 岐阜県 郡上郡白鳥町前谷川通常砂防 岐阜県 11,934 7,956 1,230 820 砂防えん堤のコンクリート工事の施行不良
(239) 静岡県 御殿場市竜良川41年災害復旧 静岡県 1,620 1,080 327 218 護岸練積石垣工事の施行不良
(240) 静岡県 清水市興津川41年災害復旧 静岡県 7,821 5,216 414 276 えん堤のコンクリート工事の施行不良
9,441 6,297 741 494
(241) 愛知県 東加茂郡足助町一般国道153号線道路改良 愛知県 29,506 22,129 2,944 2,208 路盤工事の出来高不足
(242) 京都府 京都市市道京都広河原美山線特殊改良 京都市 4,744 2,372 567 283 土留め練積石垣工事の施行不良
(243) 大阪府 富田林市金剛中央幹線下水路新設(A号工区) 富田林市 15,243 5,081 2,202 734 護岸コンクリートブロック練積み工事の施行不良
(244)  同 三島郡島本町中谷川災害関連 島本町 4,232 2,415 429 244 底張りコンクリート工事の施行不良
19,475 7,496 2,631 978
(245) 岡山県 倉敷市市道中畝板敷潮通り線舗装新設 倉敷市 12,350 8,233 854 569 アスファルト舗装工事の施行不良
(246) 広島県 豊田郡川尻町小用川緊急砂防 広島県 9,975 6,650 568 378 砂防えん堤のコンクリート工事の施行不良
(247)  同 安芸郡音戸町鈍田川42年災害復旧 音戸町 1,553 1,035 573 382 護岸練積石垣工事の施行不良
(248)  同 安芸郡倉橋町町道宇和木須川線42年災害復旧 倉橋町 1,040 832 258 206 擁壁コンクリート工事の施行不良
(249)  同 世羅郡世羅町青山川41年災害復旧 世羅町 1,400 936 314 210 護岸コンクリートブロック練積み工事の施行不良
13,968 9,454 1,713 1,177
(250) 愛媛県 川之江市下分下水路新設(第4工区) 川之江市 2,733 911 804 268 側壁コンクリート工事の施行不良
(251) 福岡県 飯塚市一般国道200号線舗装補修 福岡県 21,453 10,726 973 486 アスファルト舗装工事の施行不良
(252) 長崎県 平戸市古田川42年災害復旧(515号) 平戸市 2,805 2,448 348 303 底張りコンクリート工事の施行不良
(253)  同 平戸市古田川42年災害復旧(516号)  同 3,190 2,784 652 569
5,995 5,233 1,000 873
(254) 熊本県 人吉市城本瓦屋線40年災害復旧 人吉市 950 759 323 258 練積石垣工事の施行不良
合計 185,220 124,853 18,798 12,156

(255)  災害復旧事業費の査定額を減額させたもの

(一般会計)

 地方公共団体が施行する公共土木施設の昭和42年発生災害復旧工事費の査定を了したもの(建設省査定額79,835,978,000円)に対する検査は、査定額の比較的多かった山形ほか7県を選び、43年1月から43年3月までの間に、総工事数19,661、査定額48,952,364,000円のうち3,066工事20,749,395,000円について実施した。

 その結果、査定工事費を適正なものに修正する必要があると認め当局に注意したところ減額是正する旨の回答があったものが、前記8県において169工事81,324,000円(国庫負担金相当額69,064,499円)ある。これを県別、態様別に示すと次表のとおりである。

 

類別
県名
建設省査定額 左のうち実地検査したもの   減額させた工事費
設計過大 積算過大
工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額

山形県

1,939
千円
5,797,558

512
千円
1,941,201

千円
10
千円
8,529

10
千円
8,529
福島県 706 1,996,670 217 704,421 1 147 19 3,034 20 3,181
新潟県 4,219 23,033,882 507 10,693,769

56 40,742 56 40,742
福井県 601 1,590,393 244 774,142

11 1,389 11 1,389
兵庫県 1,502 1,999,009 254 789,932 1 916 10 3,848 11 4,764
広島県 3,610 3,084,979 340 708,427 2 948 7 893 9 1,841
佐賀県 3,487 4,494,918 441 1,811,825

19 4,375 19 4,375
長崎県 3,597 6,954,955 551 3,325,678 1 521 32 15,982 33 16,503
19,661 48,952,364 3,066 20,749,395 5 2,532 164 78,792 169 81,324

 いま、上記の内容をみると次のとおりである。

1 工事の設計が過大となっていると認められるもの
河川の護岸工事で、護岸はコンクリートブロック練積みとしているが、根入れを浅くしてコンクリート三面張りとしてもさしつかえなく、これによれば経済的であると認められるものなど5工事2,532,000円(国庫負担金相当額1,793,524円)

2 工事費の積算が過大となっていると認められるもの
河川の護岸、道路の土留め、砂防のえん堤等の工事で、コンクリート根固めブロックの所要個数やコンクリートブロック積みの面積の算出等の計算を誤っているもの、労務、機械の標準能率または資材の標準単価の適用を誤っているもの、準備工の仮締切費等を必要以上に見込んでいるもの、工事用材料のぐり石、築石等は現地での採取や現場発生材の利用が可能であるのに他所で採取することとしたり、購入することとしたりしているものなど164工事78,792,000円(国庫負担金相当額67,270,975円)