昭和42年度末における鉄道事業の営業キロ程は旅客20,414キロメートル、貨物20,498キロメートルで、前年度に比べて旅客は3キロメートル増加、貨物は11キロメートル減少し、42年度中の列車の延走行キロ程は旅客4億5629万余キロメートル、貨物1億7801万余キロメートルで、前年度に比べて旅客は679万余キロメートル(1.5%)、貨物は1032万余キロメートル(6.1%)増加し、輸送量は旅客1843億1470万余人キロ、貨物585億4736万余トンキロで、前年度に比べて旅客は85億5667万余人キロ(4.8%)、貨物は35億9159万余トンキロ(6.5%)の増加となっている。また、42年度末における自動車運送事業および連絡船事業の営業キロ程は、前者において旅客15,288キロメートル、貨物5,219キロメートル、後者において旅客205キロメートル、貸物625キロメートルで、同年度中の輸送量は、前者において旅客28億2982万余人キロ、貨物477万余トンキロ、後者において旅客5億8368万余人キロ、貨物8億4694万余トンキロとなっている。
42年度における損益は、営業損益においては損失946億6827万余円、営業外損益においては利益5億4792万余円で、差引き941億2034万余円の純損失となり、これを前年度の営業損失607億9034万余円、営業外利益6億6774万余円差引き601億2260万余円の純損失に比べると、営業損益において338億7792万余円の損失の増加、営業外損益において1億1982万余円の利益の減少、純損益において339億9774万余円の損失の増加となっている。
営業損益において前年度に比べて損失が増加したのは、輸送量において前記のように旅客、貨物とも若干の伸びを示したため、収入において旅客が432億0105万余円(7.8%)、貨物が160億1673万余円(7.2%)増加して、営業収入の増加が621億5261万余円(7.8%)となったのに対し、一方、営業経費の増加が人件費、利子及び債務取扱諸費等の増加により960億3053万余円(11.2%)となった結果によるものである。
なお、純損益において、前記のとおり941億2034万余円の損失となった結果、前年度からの繰越欠損金535億9740万余円を加えて、42年度末繰越欠損金は1477億1775万余円となった。
42年度の所要資金1兆4777億7095万余円については、前年度からの繰越金1018億0798万余円および事業収入8721億2978万余円のほか、債券発行による収入金2931億4660万余円、資金運用部資金の借入金445億円等計5038億3317万余円を充当している。
しかして、42年度末における長期借入金および債券発行残高は1兆6434億5997万余円で、前年度末に比べて2745億6090万余円の増加となっており、42年度中の利子負担額は996億1389万余円で、前年度に比べて177億1375万余円の増加となっている。
42年度の修繕費および工事経費の支出済額は1251億7885万余円および3622億7020万余円である。
工事経費についてみると、その支出済額は前年度に比べて電化設備費において21億9278万余円、車両費において168億9503万余円、総係費において46億3167万余円計237億1949万余円増加したのに対し、一方、諸設備費において7億2842万余円が減少し、差引き229億9107万余円の増加となっている。なお、支出予算現額4417億8233万余円のうち753億3203万余円を翌年度に繰り越し、41億8009万余円を不用額としている。
42年度における貯蔵品の購入額は2152億2135万余円で、前年度に比べて207億2910万余円の増加となっているが、これは主として車両購入額が前年度に比べて増加していることによるものである。また、42年度末残高は309億1199万余円で、前年度末に比べて17億6324万余円減少しており、その回転率を石炭および車両を除いた一般貯蔵品についみると4.06回となっていて、前年度の3.70回に比べて向上している。
検査の結果、別項記載のとおり、盛土工事に使用する土砂の積込費等の積算が適切でなかったため工事費が高価と認められるもの があるほか、次のとおり留意を要すると認められるものがある。
日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)においては、昭和42年度中に、釧路臨港鉄道株式会社ほか204箇所(以下「会社」という。)と連絡運輸契約を締結しており、連絡運輸にかかる運賃、料金等については取扱月の翌々月15日を期限として相互に清算のうえ決済することとしており、同年度中における国鉄の収支実績は収入445億4494万余円に対し支払202億5339万余円で、収支相殺して242億9155万余円を会社から徴収している。しかして、この清算対象額の大部分を占める旅客、荷物、貨物の運賃および料金の収納状況についてみると、国鉄およびほとんどの会社が翌月末日までにはこれらを収納しており、また、その清算事務の処理状況についてみても、収入および支払額の通知、収支相殺額の決定、通知等が翌月末日までにおおむね終了している状況であるから、国鉄の清算徴収分が毎月平均20億円の多額に上っていることにかんがみ、前記決済期限の短縮を図るよう配慮の要があると認められる。
(線路増設に伴う買収土地の所有権移転登記について)
日本国有鉄道で、昭和34年4月から41年3月までの間に、東海道新幹線の建設に必要な土地963万余平方メートルを総額341億9252万余円で買収しているが、43年9月末現在所有権の移転登記が未済となっているものが185件8万余平方メートル(1億7761万余円)あり、このうちには、買収後、売買により第三者の名義に登記されたり、抵当権等を設定されたりしているものが35件3,781平方メートル(907万余円)、買収前から設定されていた抵当権等が抹消されないままとなっているものが14件1,289平方メートル(297万余円)ある状況である。
このような事態を生じているのは、土地買収にあたり事前の調査が十分でなかったり、登記に必要な書類の審査確認が適切でなかったり、必要な書類が不備なまま土地代金の支払を行なったりしているなど用地事務処理が適確に行なわれていないことによるものと認められるので、登記未済のものについて登記の促進に努めるとともに、今後の線路増設等にあたっては、用地事務処理が適確に実施されるよう配慮の要があると認められる。
(車両用蓄電池の外注修繕について)
日本国有鉄道で、昭和42年度中、釧路鉄道管理局ほか25箇所において外注により施行した車両用蓄電池の修繕は合計30,844個総額3億9289万余円となっている。しかして、そのうち修繕費が多額に上る盛岡ほか2鉄道管理局における予定価格の積算についてみると、所要材料の取引価格や従前の修繕実績等についての調査検討が十分でなかったなどのため、極板および極柱の価格の算定や加工組立に要する加工人工等の積算が適切でないものが見受けられ、他の箇所においてもほぼ同様な事態となっていると認められるので、今後、車両用蓄電池の外注修繕にあたっては、これらの点を適確には握して適正な予定価格の積算を図るよう配慮の要があると認められる。
(古車軸の売却について)
日本国有鉄道の各車両工場で車両の修繕等に伴い発生する古車軸は毎年多量に上っており、資材局においては、昭和42年度中に、釧路ほか22工場で発生した古車軸約7,290トンを他の鋼くずとともに普通鋼くずとしてトン当り12,400円から18,200円で売却しているが、古車軸は鍛造材として普通鋼くずより有利に取引されるもので、現に、同年度中北海道地方資材部ほか12箇所では古車軸約3,290トンをトン当り18,280円から26,300円と積算してこれとほぼ同価で売却している状況であるから、今後、古車軸の売却にあたっては、資材部局と工場の連絡を密にし、普通鋼くずと区分し別途仕訳を行なって有利な売却を図るよう配慮の要があると認められる。
また、検査の結果、本院の質問に対し当局において処置を講じたものが次のとおりある。
(コンクリート土留め壁築造のための掘削費の積算について)
日本国有鉄道においては、線路増設に伴う路盤工事等において切取箇所に築造するコンクリート土留め壁部分の掘削作業の工費の積算については基準により施工基面より上で行なう工事量に対しても施工基面より下の部分と同様根掘りの歩掛りを適用することとしている。
しかしながら、施工基面より上の部分で行なう掘削作業は、施工基面より下の部分で行なう根掘り作業に比べて相当容易な作業であり、その歩掛りは、通常、根掘りの歩掛りの2.5分の1から3分の1程度となっており、札幌ほか6工事局で昭和42年度中に施行している工事について調査したところ該当工事が約4400万円に及んでいる状況からみて、本件歩掛りの適用について積算基準を検討し、実情にそった積算を行なう要があると認め当局の見解をただしたところ、43年7月、切崩しの歩掛りを適用し工費を積算することに改めた。
(工事勘定)(項)諸設備費
日本国有鉄道仙台鉄道管理局で、昭和42年8月、指名競争契約により大木建設株式会社に福田町陸前高砂間七北田川橋りょう改良その他工事を40,068,982円(当初契約額41,000,000円)で請け負わせ施行しているが、盛土工事に使用する土砂の積込費等の積算が適切でなかったため予定価格が過大となり、ひいて工事費が約370万円高価となっていると認められる。
本件工事は、仙石線線路増設工事に伴い、路盤の盛土および土留め擁壁の新設等の工事を施行するものであるが、その予定価格についてみると、
(1) 盛土用土砂20,673立方メートルは、うち19,173立方メートルについては工事箇所から約10キロメートル離れた塩釜市内で地山をブルドーザで切崩しのうえ、また、1,500立方メートルについては約6キロメートル離れた宮城野貨物駅構内の置き土をそのまま、いずれもバケット容量0.6立方メートルのトラクタショベルで6トン積みダンプトラックに積み込んで現場に搬入することとし、1日の積込み作業量を144立方メートルと算出して盛土工事費を19,744,648円と積算している。
しかしながら、現地について調査したところ、土取場はいずれも道路に面した相当広い場所で、しかも多量の土量を取り扱うものであるから、一般に使用されているバケット容量1.3立方メートル程度のトラクタショベルを使用することができると認められ、これを使用することとすれば1日の積込み作業量は288立方メートルとなって作業能率が高くなることにより積込費が廉価となるばかりでなく、さらに積込時間が短縮されることなどにより運般費等も廉価となるので、本件工事の工事費積算にあたっては、これによることとすべきであったと認められる。
いま、仮に土の積込みはバケット容量1.3立方メートルのトラクタショベルを使用して行なうこととして盛土工事費を計算すれば16,871,639円となり、当局の積算額はこれに比べて2,873,009円過大となっている。
(2) 土留め擁壁の根掘りは、工事中の土留めのため長さ0.9メートルまたは1.8メートルの矢板を打ち込んだのち地表から深さ0.6メートルから1.5メートル掘削し、さらに補強の土留め支保工を設けることとしてその工事費を2,060,725円と積算している。
しかしながら、本件工事の施行箇所は営業線から10メートル以上離れており、掘削する土質は普通土で深さも1.5メートル程度であるから、ある程度のこう配をつけて掘削すれば列車の通過により掘削面の安定に支障を及ぼすとは認められないので、日本国有鉄道の積算要領により「根掘」の掘削面こう配が5分の場合を適用するのが実情に即し、工事中の土留めは必要ないものと認められる。現に、本件工事施行の際も請負人は土留めを設けないで根握りを行なっていた状況である。
いま、仮に根掘りは土留めを行なわないで掘削面こう配を5分として施行することとすれば、根掘り土量の増加分の工事費245,081円を考慮して1,150,612円となり、当局の積算額はこれに比べて910,113円過大となっている。
以上各項により工事費を修正計算すると36,311,370円となり、本件工事費はこれに比べて約370万円高価となっていると認められる。