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  • 昭和42年度|
  • 第3章 政府関係機関その他の団体の会計|
  • 第2節 各機関別の事項

日本道路公団


第17 日本道路公団

 日本道路公団の昭和42事業年度末の資本金は778億1504万余円(全額政府出資)で、前事業年度末に比べて174億円増加している。

(事業概要について)

 42事業年度に実施した道路の建設は、前事業年度からの継続事業として東名ほか2高速道路、大阪天理ほか20道路、新規事業として阪奈道路(二期)ほか7道路を建設する計画に対し、継続事業は3高速道路、21道路、新規事業は4道路の建設を行なっている。

 42事業年度における建設費の決算額は予算現額1492億3873万余円に対し1324億9025万余円で、前事業年度に比べて101億3534万余円増加している。建設費のうち、高速道路の建設費は1151億6742万余円であって、その大部分を占める東名高速道路および中央高速道路(東京富士吉田線)ではそれぞれ899億7612万余円および179億2934万余円となっており、また、その42事業年度末までの進ちょく率は、東名高速道路では総事業費3425億円に対し実施額2496億6889万余円で72.8%、中央高速道路では総事業費820億円に対し実施額665億0298万余円で81.1%となっている。

 42事業年度末現在営業中のものは、名神高速道路および42年12月営業を開始した中央高速道路の一部(調布、八王子間18キロメートル)ならびに第三京浜ほか63道路(うち同事業年度中に新たに営業を開始したもの2道路)、日比谷ほか4駐車場、大津サービスエリアほか3附帯事業施設である。これらのうち、高速道路、一般有料道路および駐車場の42事業年度における料金収入等についてみると、名神高速道路では年間通行台数2451万余台79億4225万余円で、前事業年度に比べて766万余台21億4516万余円増加し、一般有料道路では年間通行台数1億7051万余台169億7343万余円で、前事業年度に比べて2697万余台33億7326万余円増加し、駐車場では年間利用台数126万余台3億0038万余円で、前事業年度に比べて16万余台2596万余円増加している。また、中央高速道路では通行台数111万余台で料金収入1億8591万余円となっている。

 なお、武生トンネル、衣浦大橋および住之江橋は、営業開始後の料金徴収総額がその建設等に要した費用の合算額に達したなどのため、43年1月および4月、建設省等にそれぞれ引き継いだ。

(資金について)

 42事業年度の所要資金2089億9223万余円については、前事業年度からの繰越金33億6022万余円、政府出資金174億円、国際復興開発銀行借入金261億6525万余円、債券発行による収入金1347億4840万円、業務収入255億6723万余円等を充当している。

(損益について)

 42事業年度の損益は、業務収入255億9639万余円等の収益261億7147万余円、管理業務費27億1580万余円、諸引当損95億7185万余円、業務外費用155億5300万余円等の費用296億4095万余円で、差引き34億6947万余円の損失となっており、これを前事業年度に比べると14億4475万余円の損失減少となっている。また、上記損益のうち高速道路、一般有料道路および駐車場の損益についてみると、名神高速道路では料金収入等の収益79億6804万余円に対し費用105億7246万余円を要したため差引き26億0442万余円の損失を生じ、中央高速道路では料金収入等の収益1億8610万余円に対し費用6億6557万余円を要したため差引き4億7947万余円の損失を生じ、一般有料道路では関門トンネルほか40道路で減価償却前利益71億0894万余円をあげ、若戸大橋ほか23道路で損失5億9430万余円を生じ、駐車場では長堀自動車駐車場ほか4駐車場で損失2億7028万余円を生じている。

 検査の結果、別項記載のとおり、高速自動車国道建設工事の予定価格の積算等について 、43年11月、日本道路公団総裁あて改善の意見を表示したほか、次のとおり留意を要すると認められるものがある。

 (道路建設に伴う買収土地の所有権移転登記について)

 日本道路公団が東名高速道路ほか6(注) 道路の建設にあたり昭和32年度から42年度までの間に買収した道路用地4273万余平方メートル(1298億1800万余円)について、所有権移転登記(以下「登記」という。)の状況等につき調査したところ、42年度末において登記未済となっているものは7,961件599万余平方メートル(165億7800万余円)あり、このうちには、買収後、売買により第三者の名義に登記されたり、抵当権等が設定されたりしているものが75件3万余平方メートル(1億1400万余円)、買収前から設定されていた抵当権等が抹消されないままとなっているものが301件23万余平方メートル(8億8600万余円)ある状況である。

 このような事態を生じているのは、土地買収にあたり事前の調査が十分でなかったり、登記に必要な書類の審査確認が適切でなかったり、必要な書類が不備なまま土地代金の支払を行なったりしているなど用地事務処理が適確に行なわれていないことによるものと認められるので、登記未済のものについて登記の促進に努めるとともに、今後の用地取得にあたっては、事務取扱いの基準をさらに整備するなどして、用地事務処理が適確に実施されるよう配慮の要があると認められる。

 (注)  中央高速道路、名神高速道路、京葉道路(三期)、小田原厚木道路、大阪天理道路、北九州道路(三期)

改善の意見を表示した事項

高速自動車国道建設工事の予定価格の積算等について

(昭和43年11月25日付け43検第358号)

 日本道路公団で昭和42年度に施行した東名、中央両高速自動車国道建設工事のうち、小牧・三好舗装工事ほか22件(工事費約345億円)の舗装工事および付帯工事について、その設計、予定価格の積算等を調査したところ、

(1) 通信用ケーブル敷設のため設置するコンクリート製ハンドホールの設計にあたり、ケーブルの接続点と接続点の中間に設置する引通し用ハンドホールは、ケーブル敷設の際単にケーブルの送込み作業をするためのものであるから小形のもので足りるのに、ケーブルの接続作業をするために設置する接続点用ハンドホールと同規格の大きなものとしていたり、ずい道内の吸音、照明効果のため、側壁面の一定の高さまでにパネル(石綿セメント板を成形しセラミック加工したもの)を取り付ける内装工の設計にあたり、パネル製造過程における板取りを考慮して経済的なパネルの幅を定めるべきであるのに、単に市販の石綿セメント板の規格によりパネル幅を定めたため所要枚数が多くなっていたりしていて、設計要領が適切でなかったため、不経済な設計となっているもの

(2) 同公団制定の「舗装関係積算要領」に示されている路面記号用のトラフィックペイントおよびガラスビーズの基準単価についてみると、製造業者の見積りや他団体の積算事例を十分調査検討しないで、単に施行業者から徴した見積りをそのまま採用して決定していて割高なものとなっており、ひいて積算が過大となっているもの

(3) アスファルト舗装用材料の保温、加熱に使用する燃料費の積算にあたり、骨材加熱用の燃料としてはB重油が使用されるものであるのに、割高なA重油を使用するものとして算定していたり、アスファルトプラントの仮設電力設備費の積算にあたり、動力用電力は敷地内の使用箇所まで高圧架空線で配電することとすれば足りるものであるのに、敷地内の外周付近から低圧地下ケーブルで配電することとしてその経費を見込んでいたり、電灯設備についても架空配線で足りるものを地下ケーブル配線とすることとしてその経費を見込んだりしていて、積算要領が定められていないため積算が施行の実情にそわないで過大となっているものなどの事例が見受けられた。

 ついては、この種工事は高速自動車国道建設工事の進ちょくに伴い今後も引続き施行されるものであるから、前記の事例にかんがみ、工事の実態や材料価格等について調査検討し、設計要領および積算要領の内容を適切なものにするなどして、設計および予定価格積算の適正を期する要があると認められる。