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  • 昭和42年度|
  • 第3章 政府関係機関その他の団体の会計|
  • 第2節 各機関別の事項

日本鉄道建設公団


第22 日本鉄道建設公団

 日本鉄道建設公団の昭和42事業年度末の資本金は609億2856万余円(政府出資148億円、日本国有鉄道出資461億2856万余円(現物出資171億9795万余円を含む。))で、前事業年度末に比べて157億7500万円増加している。

(事業概要について)

 42事業年度において、鉄道新線建設を実施したものは、前事業年度から継続の久慈線ほか58線の工事および津軽海峡線ほか2線の調査であり、その決算額は予算現額490億5416万余円に対し439億4525万余円で、51億0891万余円を翌事業年度に繰り越している。このように繰越額を生じたのは、前事業年度同様、武蔵野線、湖西線等で設計協議および用地買収がはかどらなかったことなどによるものである。しかして、上記59線の建設工事の進ちょく状況をみると、総工事費7114億円に対し42事業年度末までの実施額は862億3389万余円で12.1%となっている。

 42事業年度末現在日本国有鉄道に貸し付けている鉄道施設は、有償貸付が落合線の全区間および根岸、狩勝両線の一部(総延長35.6キロメートル)、無償貸付が辺富内線ほか2線の全区間および美幸線ほか2線の一部(総延長127.8キロメートル)で、同事業年度中に新たに貸し付けたものはない。これらのうち、有償貸付線の42事業年度における貸付収入は7億3066万余円で、前事業年度に比べて4億1959万余円増加している。

(資金について)

 42事業年度の所要資金650億0743万余円については、前事業年度からの繰越金119億9519万余円、政府出資金88億円、日本国有鉄道出資金69億7500万円、資金運用部資金の借入金59億円、債券発行による収入金262億3265万余円等を充当している。

(損益について)

 42事業年度の損益は、前記の鉄道貸付収入7億3066万余円のほか、政府からの補給金7億1871万余円、補助金4億0895万余円等の収益21億9791万余円に対し、事業資産減価償却費7億5526万余円、鉄道建設債券諸費10億4274万余円等の費用21億9184万余円で、差引き606万余円の利益となっている。なお、上記補給金7億1871万余円は債券の支払利子の一部について、また、補助金4億0895万余円は日本国有鉄道に無償で貸し付けた鉄道施設の減価償却費相当額についてそれぞれ政府の一般会計から交付を受けたものである。

 検査の結果、別項記載のとおり、ずい道の覆工工事の施行が設計と相違しているもの がある。

不当事項

工事

(260) ずい道の覆工工事の施行が設計と相違しているもの

(款)建設費(項)建設費

 日本鉄道建設公団盛岡支社で、昭和40年8月、指名競争入札後の随意契約により西松建設株式会社に459,397,892円(当初契約額250,679,960円)で請け負わせ施行した鷹角線第1工区路盤その他その1工事は、42年12月、設計どおりしゅん功したものとして検収を了しているが、ずい道の覆工コンクリートを設計と相違して施行したなどのため、覆工の一部の強度が設計に比べて著しく低下していると認められる。

 本件工事は、奥羽本線鷹ノ巣と田沢湖線角館を結ぶ鷹角線建設計画の一環として延長4,920メートルにわたり路盤、橋りょう、ずい道等を新設するもので、このうち第1長戸呂ずい道延長565メートルおよび第2長戸呂ずい道延長484メートル計1,049メートル(工事費255,162,349円)は、設計によると、覆工コンクリートの厚さを30センチメートルから60センチメートルで施行することとなっているのに、覆工コンクリートの表面にき裂を生じ不安定な状態となっている箇所があり、また、矢板、セメント袋等がコンクリート中に埋め込まれたり、建込みが不良だったH形支保工が落ち込んだりして、これらの一部が表面に露出している箇所が相当数見受けられたので、全延長にわたり、10メートル間隔で、頂部、頂部付近等アーチ部で4、側壁部で1計5箇所ずつせん孔して調査を行なったところ、覆工コンクリートの厚さが設計に比べて著しく不足している箇所が多く、その背面が岩に密着していない箇所については測定誤差として5センチメートルを考慮しても、頂部においてせん孔数103箇所のうち91箇所、頂部付近において103箇所のうち38箇所等アーチ部において412箇所のうち214箇所、側壁部において103箇所のうち9箇所計223箇所で厚さが不足しており、なかには厚さが設計の2分の1にも達しない箇所が48箇所もある状況であり、厚さが不足している223箇所のうち123箇所は地山の掘削が十分でなかったため6センチメートルから69センチメートル程度岩が覆工コンクリート中に突出しており、残り100箇所は背部に平均40センチメートル程度の空げきを生じており、また、き裂を生じている箇所等についてハンマーによる部分的破壊調査を行なったところ、覆工コンクリートの厚さが著しく不足し人力で容易に破壊できる箇所が16箇所あり、その背部はいずれも広い空どうとなっていて、なかには延長約18メートル、幅4.5メートル、高さ約1メートル程度の空どうがあるほか、H形支保工が覆工コンクリートの表面から数センチメートル程度の位置までずり落ちているものが71基(延長にして約96メートル)ある状況であるなど、ずい道覆工の一部の強度が設計に比べて著しく低下していると認められる。