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  • 昭和43年度|
  • 第3章 政府関係機関その他の団体の会計|
  • 第2節 各機関別の事項

阪神高速道路公団


第18 阪神高速道路公団

 阪神高速道路公団の昭和43事業年度末の資本金は160億円(うち政府出資80億円)で、前事業年度末に比べて46億円増加している。

(事業概要について)

 43事業年度の道路の建設は、前事業年度からの継続事業として高速大阪池田線(1期)ほか6路線および3関連街路(高速道路建設工事施行上密接な関連を有する都市計画街路で、国または地方公共団体の委託によるもの)、新規事業として高速大阪池田線(2期)および高速神戸西宮線(2期)を実施している。  43事業年度における業務費の決算額は、予算現額405億8675万余円に対して371億5685万余円で、前事業年度に比べて83億8463万余円増加している。業務費のうち、高速道路の建設費は327億5352万余円、関連街路の建設費は28億6712万余円である。
 43事業年度末現在営業中のものは、高速大阪池田線の湊町、大阪空港間等39.7km(うち同事業年度中に新たに営業を開始したもの高速大阪守口線等13.2km)であり、その料金収入についてみると、年間通行台数4787万余台65億7703万余円で、前事業年度に比べて2511万余台46億9375万余円増加している。

(資金について)

 43事業年度の所要資金496億4055万余円については、前事業年度からの繰越金23億4355万余円、政府出資金23億円、大阪府等地方公共団体出資金23億円、大阪府等地方公共団体交付金19億7850万円、国際復興開発銀行からの借入金20億4337万余円、債券発行による収入金288億1150万円、料金収入65億8917万余円、受託業務収入27億8963万余円等を充当している。

(損益について)

 43事業年度の損益は、業務収入65億8995万余円等の収益66億5027万余円、管理業務費9億2415万余円、業務外費用46億1081万余円等の費用57億3090万余円で、差引き9億1936万余円の利益になっていて、これを前事業年度までの繰越欠損金の補てんに充てている。

 検査の結果、別項記載のとおり、高速道路建設工事の予定価格の積算等について、44年11月、阪神高速道路公団理事長あて是正改善の処置を要求した

意見を表示しまたは処置を要求した事項

高速道路建設工事の予定価格の積算等について是正改善の処置を要求したもの

(昭和44年11月19日付け44検第264号 阪神高速道路公団理事長あて)

 阪神高速道路公団が昭和43年度に施行している大阪池田線ほか4路線の高速道路建設工事のうち、高架橋下部構造の構築を施工する天王寺入路下部工事ほか37件の工事(工事費約134億円)について、その設計、予定価格の積算、施行の状況等を検査した。その結果、現行の積算基準およびその運用が工事施行の実情に適応していないなどのため、予定価格の積算が適切でないと認められるものが下記のとおり見受けられた。
 ついては、同公団における高速道路の建設工事は、高架橋、橋梁等の構造物を築造するものが大部分であり、この種工事は今後も引続き施行されるものであるから、下記の事例にかんがみて、工事の施行の実態を十分調査検討し、積算基準等の整備を図るなどして工事費積算の適切を期する要があると認められる。

(1) 天王寺入路下部工事ほか26件の工事において、全ケーシング工法による現場打ち鉄筋コンクリートくい工の機械損料の積算にあたって、運転時間当り損料を、掘削機7,851円および16,205円、トラッククレーン2,119円として、93,546時間分で総額1,026,510,295円を積算している。

 上記の運転時間当り損料については、積算基準において、次の算式のとおり

上記の運転時間当り損料については、積算基準において、次の算式のとおり

運転時間当り損料額と、供用日当り損料額をその工事における供用日当り運転時間で除して得た額とを合計して算出することにしているが、積算の便を考慮し、運転時間当り損料の額として、供用日当り運転時間が掘削機については5時間、トラッククレーンについては4.5時間の場合の損料に相当すると認められる額を共通代価表に示していて、前記各工事の工事費の積算においては、いずれもこれを一律に適用している。

 しかしながら、全ケーシング工法による現場打ち鉄筋コンクリートくい工に使用される機械のように、施工するくいの長さによって供用日当り運転時間が大きく変動するものについては、その変動に伴って運転時間当り損料が相当程度増減するものである。そして、同公団で施行している工事における現場打ち鉄筋コンクリートくいの掘削長さをみると、その施工に使用する機械の供用日当り運転時間が前記の5時間または4.5時間を上回ると想定される15m以上のものが大部分であり、また、全工事の総平均によるくいの1本当りの掘削長さをみても20m程度であって、この場合、機械の供用日当り運転時間は8時間程度となるから、前記のとおり供用日当り運転時間が5時間または4.5時間に相当する損料を一律に適用しているのは適切を欠くものと認められる。

 また、前記27件の工事において、現場打ち鉄筋コンクリートくい工の労務費として、積算基準により、1編成7.5人を掘削開始からコンクリート打設終了までの全作業時間に見込んで262,677,719円を積算し、さらに、コンクリート打設の労務費として、1m3 当り0.4人として124,820m3 分89,870,544円を積算している。
 しかしながら、本件現場打ち鉄筋コンクリートくい工は、前記程度の1編成で掘削からコンクリート打設までの全作業を施工するものであるから、前記のようにコンクリート打設のための労務費を別途計上する要はなかったと認められる。

(2) 天王寺入路下部工事ほか13件の工事において、高架構造物のフーチング等の基礎掘削に伴う埋めもどし費として、120,643m3 分総額73,157,886円を積算している。
 しかして、上記の埋めもどし費は、積算基準で示している埋めもどしの歩掛りのうち、人力により敷きならして、仕上り厚さ20cmに転圧する場合の歩掛りをすべての工事に一律に適用して積算したものである。しかし、上記工事の埋めもどし箇所のうちには、埋めもどし後直ちに舗装する道路敷箇所のように、上記の積算で見込んだ程度の入念な施工を必要とする箇所もあるが、同公団の用地内で単に敷きならしたままで足りる箇所や、将来道路として利用されるまで相当の期間があって舗装の際には改めて全面的に路床工事を施行する予定の箇所のように、その現場の条件によって前記のような施工を必要としない箇所の埋めもどしが約95,000m3 (約5600万円)もある。このような箇所については、小型ブルドーザ等により埋めもどし、敷きならしおよび転圧を行なうこととして積算すれば足りたと認められる。

(3) 東大阪第一工区下部工事ほか5件の工事において、井筒工の足場費として、単価157円および188円で94,863空m3 (注1) 分総額16,128,373円を積算している。

 上記の足場は、井筒の(く)体および仮壁のコンクリート型わくの組立て、撤去等に使用するものであるが、この所要数量の算定方法についてみると、積算基準に従い、足場の所要数量は、井筒の仮壁部を含む体の長さ(井筒の躯体長さは20mから35m程度、仮壁部の長さは2m程度)全部について見込んで計算している。
 しかしながら、井筒工事の作業方法は、1ロット(3mから5m程度)ごとに躯体の構築、掘削沈下を繰り返して行なうものであるから、足場は、井筒の1ロット中最も長いもの(5m程度)の長さについてこれを見込めば十分であり、このようにしたとすれば、本件各工事の足場の所要数量は約22,000空m3 程度で足りたと認められる。

(4) 船場第1工区下部工事および大和川工区下部工事において、基礎工事のための土留め工として、場所詰め土留めくい工200平面m(注2) および487面m2 (注2) (69平面m)分総額18,618,920円を積算している。
 しかして、場所詰め土留めくい工法は、建物に近接していて鋼矢板等の打込み時の振動により建物に損傷を与えるおそれがある場合、止水壁としての効果が必要な場合、および土留め工の撤去により周囲の地盤をゆるめるため支障が生ずる場合等に施工するものとしている。しかし、打込み時の振動により建物に損傷を与えるおそれがある箇所の土留め工としては、同公団の積算基準には定めがないが、打込み作業がわずかで、建物に損傷を与えることなく施工でき、都市内の工事において多用されていてしかも工費が低価なH鋼くいの建込み工法があり、前記工事のうち、103平面mおよび44平面mは、現場条件からみて、この工法で足りたものと認められる。

(注1)  支保工や足場は、その構築される空間の体積を想定して数量が計算されるのが通常であり、この場合にはとくに「空m3 」という単位が使用されている。 

(注2)  土留め工は壁状に設置されるので、その面積を想定して数量を計算する場合があり、この場合にはとくに「面m2 」という単位が使用されている。また、壁状の頂部の延長を想定して数量を計算する場合もあり、この場合には「平面m」という単位が使用されている。