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  • 昭和44年度|
  • 第2章 国の会計|
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  • 第4 農林省|
  • 意見を表示しまたは処置を要求した事項

コンクリート二次製品等を使用する工事の施行について処置を要求したもの


(1) コンクリート二次製品等を使用する工事の施行について処置を要求したもの

(昭和45年11月21日付け45検第369号 農林大臣あて)

 農林省が直轄で、または地方公共団体等が同省から補助金の交付を受けて施行している土地改良事業、農業構造改善事業等において、水路護岸等の工事にコンクリート柵板、ブロック等のコンクリート二次製品を使用しているもの、および頭首工等の工事に工場で製作させた鋼製水門扉を据え付けているものが多数あり、その工事費は多額に上っている。
 しかして、本院において、昭和45年中、これら工場製品を使用している工事360件について検査したところ、49件について次のとおり適切でないと認められるものが見受けられた。

(1) 鉄筋コンクリート製の矢板、柵板およびL型ブロックの製作の際、鉄筋の配置が粗雑であったため、有効厚が不足したり、かぶり厚が不足したりしているなど不良な製品が使用されているもの 

16工事

(2) 間知ブロック等の製作の際コンクリートの配合が悪かったり、その締固めおよび養生が十分でなかったりしたなどのため、製品の重量が仕様書等の所定重量に比べて不足したり、強度が低くなったりしている不良な製品が使用されているもの 

10工事

(3) コンクリート柵板の表裏を間違えて施工し、なかにはひび割れが生じているもの 

13工事

(4) 鋼製水門扉の溶接にあたり、扉体の表鋼板とけたの間にすき間を生じていたり、溶接部にえぐれを生じているなどの溶接欠陥を生じていたり、また、連続溶接で施工しなければならないのに断続溶接で施工していたりしているもの 

10工事

このような事態を生じているのは、

(ア) これらのコンクリート二次製品および鋼製水門扉は工場で製作され製作過程における品質管理が一般的に行き届いていることもあって、これらを使用または製作させる場合の監督、検査が適切でないこと、

(イ) 製品の使用承認または製作工場の選定にあたって、製作工場の実態を十分把握していないこと、

(ウ) 工事の施工にあたって、監督および検査に従事する職員のこの種工事に対する認識または技術的知識等が十分でないこと、

(エ) コンクリート二次製品について、設計図面、仕様書で品質、規格を明示していないものが多いこと、

(オ) 現場に搬入されたコンクリート二次製品の検査に関する基準が定められていないものが多いこと

などによると認められる。

 ついては、これら工場製品を使用する工事費が近年増加している傾向にあること、とくに水門扉は河川の主要な工作物であることにかんがみ、製作工場の選定、設計、仕様書の表示を適切に行なうとともに監督、検査の基準を整備して適切な監督、検査を実施するなどの方途を講じ、また、補助事業についてこれらの諸点について十分に指導し、工事施行の適正を期する要があると認められる。

(2)  草地改良、開拓パイロット両事業における土壌改良等の施行について処置を要求したもの

(昭和45年11月21日付け45検第370号 農林大臣あて)

 草地改良、開拓パイロット両事業は、原野等の未墾地の開墾および土壌改良を行なって農用地を造成するもので、昭和43、44両年度に農林省が直轄で、または地方公共団体等が同省から補助金の交付を受けて実施した本件両事業は、草地改良事業1,921地区事業費90億2939万円、開拓パイロット事業640地区事業費100億1931万円に上っている。
 しかして、本院において、45年中、北海道開発局および東北ほか4農政局が実施した直轄事業25地区3,285ha 事業費9億7164万余円(うち土壌改良費1億6604万余円)ならびに北海道ほか21県が実施した補助事業277地区6,232ha事業費32億2323万余円(国庫補助金17億2406万余円、事業費のうち土壌改良費3億4767万余円、土壌改良費に対する国庫補助金相当額1億7409万余円)について実地に検査したところ、次のとおり適切でないと認められるものが見受けられた。
 すなわち、本件両事業においては、造成の対象となる土地の土壌が強酸性(pH(酸性、中性、アルカリ性の度合いを表わす数値)4.5前後の箇所が多い。)で、燐酸分が欠乏していて生産性が低いため、土壌中の酸性を矯正する(矯正目標pH6.0から6.5)など土壌の改良を実施しているが、設計および施工が適切でなかったため造成地の酸性が十分矯正されず(pH4.0〜5.5程度と目標に比べて低くなっている。)、土壌改良の効果が上っていないものが次表のとおり79地区1,300haあった。

区分
事業別
直轄事業(北海道開発局、関東ほか2農政局)

補助事業(北海道ほか20県)

地区 面積 事業費 左のうち土壌改良費 地区 面積

事業費
(国庫補助金)

左のうち土壌改良費(国庫補助金相当額)
草地改良事業
1
ha
101
千円
19,934
千円
2,881

60
ha
799
千円
174,084
(80,923)
千円
41,740
(19,500)
開拓パイロット事業 5 265 142,038 13,292 13 133 159,576
(94,406)
7,978
(4,701)
6 367 161,972 16,173 73 933 333,661
(175,329)
49,718
(24,201)

 また、本件両事業のうち草地改良事業は農地造成後牧草播種をも行なうものであるので、検査の際草生の状況をあわせて調査したところ、造成対象地が急傾斜地、湿地等である場合に設計が適切でなかったり、播種に適さない時期に牧草播種をしたりしたなどのため、草生が不良となっているものが25地区370ha事業費1億0101万余円(国庫補助金4596万余円)あった。
このような事態を生じているのは、

(ア) 同省において開墾および土壌改良の工法および資材量算定方法についての方針が明確でなく、適確な指導が行なわれていないこと、

(イ) 土壌改良の設計にあたって、1、2箇所について土壌調査を行なった結果だけによって広範囲な地域における改良資材の施用量を算定したり、地区外の遠隔地の土壌調査結果をそのまま適用して施用量を算定したりしているなど施用量の算定が適確に行なわれていないこと、

(ウ) 設計および施工にあたって、改良資材が改良対象の土壌に均等に混和されるようにする配慮が十分でないこと、

(エ) 急傾斜地、湿地等立地条件が不良な場合、その対策について設計上の配慮をしていないこと、

(オ) 牧草播種を適期に行なう配慮が十分でないこと、

(カ) 工事の監督、検査が適確に行なわれていないこと

などによると認められる。

 ついては、上記の事態にかんがみ、事業実施について合理的な基準を作成し、適切な計画、設計によって施工するとともに、工事の監督、検査を適確に行ない、また、補助事業についてこれらの諸点について十分に指導し、本件両事業施行の適切を期する要があると認められる。

(3) 開拓パイロット事業の事業効果について処置を要求したもの

(昭和45年11月21日付け45検第371号 農林大臣あて)

 開拓パイロット事業は、農業経営規模を拡大して農業構造の改善、自立経営農家の育成を図ることを目的として、農林大臣または都道府県知事が樹立した開拓基本計画(農地造成事業計画、営農計画等を定めることになっている。)にそって、農林省が直轄でまたは地方公共団体等に補助して未墾地を農地に造成するもので、本制度を開始した昭和36年度から44年度までの間に、地方公共団体等が同省から補助金の交付を受けて実施し、事業を完了したものは558地区24,532ha事業費238億0373万円(国庫補助金144億7836万円)に上っている。
 しかして、本院において、45年中、北海道ほか19県における123地区5,837ha事業費49億5861万余円(国庫補助金30億1646万余円)について事業効果を実地に調査したところ、北海道ほか12県の46地区2,038haにおいて、事業の効果があがっていないと認められるものが次のとおり1,245ha事業費相当額8億5547万余円(国庫補助金相当額5億3330万余円)見受けられた。

(1) 造成地が住宅地、林地等本事業の目的以外の用途に転用されているもの 

32.24ha

(2) 造成地が耕作されないで荒廃したままとなっているもの 

348.66ha

(3) 関連する家畜の導入が遅滞したり、作物の生育が不良となったりしているなど造成地が有効に利用されていないもの 

542.95ha

(4) 開拓基本計画に定められた作物以外の作物が無計画に作付けされて主産地形成がなされていないもの

 322.12ha

(このうち、39.21haは開田抑制の処置がとられた後に稲作に転換されたものである。)
このような事態を生じているのは、

(ア) 開拓基本計画樹立の際、地区の立地条件、受益者の能力等についての調査検討が十分でないこと、

(イ) 農地造成部門と他の関連部門との連絡調整が十分でないこと、

(ウ) 事業目的にそった適切な営農指導が行なわれていないこと

などによると認められる。

 ついては、上記の事態にかんがみ、適切な開拓基本計画を樹立し、営農指導を積極的に行なうなどの諸点について、地方公共団体等を十分指導し、本事業の効果をあげる要があると認められる。

(4) 外国小麦の買入予定価格のうちに含まれる海上運賃の積算について処置を要求したもの

(昭和45年11月25日付け45検第372号 農林大臣あて)

 食糧庁が、昭和44年度に輸入商社から買い入れた外国小麦は436万余t総額1152億3812万余円に上っている。
 本件小麦は、輸入港における沿岸倉庫渡等として買い入れたものであるが、その予定価格のうちに含まれる海上運賃の積算について検査したところ、次のように適切でないと認められる点があった。
 すなわち、同庁では、本件積算にあたって、同庁と外国小麦の売買契約をした輸入商社がその小麦を輸送するため船主との間に成約した海上運賃を調査し、それを基礎とするなどして、海上運賃を1t当り平均2,905円総額126億9285万余円と積算している。

 しかし、上記の成約運賃は輸入港における1日当り荷役数量1,016tを前提としたものであるが、この荷役数量は、昭和25年当時のものがそのまま採用されており、穀物サイロや港湾設備が改善され荷役能力が向上している現在では実情に合わないものになっていると認められる。現に、本院が、国内の輸入港における44年度の荷役状況を調査したところ、1日当り平均東京湾の港で1,758t、伊勢湾の港で2,025t、大阪湾の港で2,637t、その他の港で1,716tとなっていて、いずれも前記成約運賃における荷役数量1,016tを大幅に上回っており、荷役のための碇泊日数が1日当り荷役数量を1,016tとしている場合に比べて、一部の例外を除きすべての港において短縮されている状況であった。

 しかして、海上運賃は船舶の1航海に要する運航日数の長短によって大きく左右されるものであり、運航日数には輸入港における荷役のための相当な碇泊日数が含まれているのであって、このため、1日当りの荷役数量の増加は碇泊日数、運航日数を短縮させ、ひいては海上運賃の低減をもたらすことになるから、本件積算にあたって、前記の各港における荷役の実態を考慮したとすれば、積算額を相当程度低減できたと認められる。
 ついては、輸入港における荷役実績等を十分考慮して適切な海上運賃を積算し、買入予定価格積算の適切を期する要があると認められる。

(5) 内水面ほ場整備事業による造成農地の他目的転用について処置を要求したもの

(昭和45年5月9日付け450普第590号 東海農政局長あて)

 東海農政局が昭和42年度に愛知県に対し国庫補助金22,548,000円を交付し、同県が事業費45,096,000円で津島市神守地区内水面ほ場整備事業として農地58,200m2 を造成している。
 しかして、同事業は、40年12月、農林大臣が40年度以降の国庫補助対象として採択したものの一部で、採択の際に付した条件によると、事業完了後8箇年以内に当該土地を農業以外の用に供した場合は、当該土地の造成に要した費用に対する国庫補助金相当額を県は国に納付することになっている。
 しかるに、検査の結果によると、同事業で造成した農地のうち699m2 が住宅用地として44年5月転用されているのに、国庫補助金相当額の納付についてなんらの処置がとられていない。
 ついては、すみやかに前記の条件に従った処置を講ずべきである。
 上記のとおり処置を要求したところ、東海農政局においては、45年6月、国庫補助金相当額340,176円を歳入に納付させた。

 検査の結果、本院の質問に対し、当局において処置を講じたものが次のとおりある。

(昭和44年発生災害復旧事業の事業費決定について)

 農地、農業用施設等の昭和44年発生災害の復旧事業に対する農林省の事業費決定について、新潟、富山両県内の7,288工事(事業費決定額95億余円)のうち402工事(事業費決定額24億余円)を検査した。
 その結果、工事数量の計算を誤っていて積算が過大になっていると認められるものなどが20工事見受けられ、事業費決定額を修正する必要があると認めて当局の見解をただしたところ、19,558,000円(国庫補助金相当額17,107,000円)を減額した。