(昭和45年11月18日付け45検第362号 水資源開発公団総裁あて)
水資源開発公団が昭和44年度に契約し施行している江川ダム建設工事および早明浦ダム建設工事のうち、ダム堤体工事(工事費78億余円)について検査した結果、予定価格の積算が施工の実情に適合していないと認められるものが次のとおり見受けられた。
すなわち、両工事の堤体コンクリート工事用骨材の原石を採取する場合の積込みおよび江川ダム建設工事の堤体基礎掘削土等の積込費は、いずれもパワーショベル(注1) (バケット容量1.2m3 または1.9m3 、機械損料1時間当り6,028円から10,410円)および補助ブルドーザを使用して積み込むこととして、1,710,505m3 分350,264,733円を積算している。
しかし、上記の積込作業は、平坦な場所にブルドーザで集積した岩砕または土砂を積み込むものであって、このような場合には、パワーショベルに比べて、積込作業に適し、しかも、機械損料が著しく低額なトラクタショベル(注2) (バケット容量1.8m3 のものの例をとると機械損料1時間当り3,240円から3,765円)を使用するのが経済的であるから、本件工事の施行にあたっても、これを使用することとして積込費を積算したとすれば、積算額を相当程度低減できたと認められる。
ついては、同公団においては、ダム建設工事を今後も引き続き施行するのであるから、上記の事例にかんがみ、施工の実態を十分調査検討し、工事費積算の適切を期する要があると認められる。
(注1) パワーショベル キャタピラで走行する台車上に旋回できる掘削作業装置を取り付けた掘削、積込機械
(注2) トラクタショベル キャタピラまたは車輪で走行するトラクタの前部にバケットを取り付けた積込機械
上記のほか、本院の質問に対し、水資源開発公団において処置を講じたものが次のとおりある。
(道路新設工事の予定価格の積算について)
昭和44年度に早明浦ほか2ダム建設所で施行したダム建設に伴う県道等の付替道路新設工事等23件の予定価格の積算について検査したところ、土砂および岩石掘削費の積算にあたって、掘削幅等の作業条件からみてブルドーザが使用できこれによれば経済的であったと認められる場合について人力で施工することとして積算していて、いずれも積算が適切でないと認められた。
このような事態を生じているのは、水資源開発公団で定めている積算基準における機械施工と人力施工の区分の基準が適切でなかったことなどによると認められたので、当局の見解をただしたところ、同公団では、45年7月、積算基準を改定するなどの処置を講じた。