石炭鉱害事業団は、石炭および亜炭の採掘によって生じた鉱害の賠償等の円滑な実施および鉱害の計画的な復旧を図るため、鉱害の賠償に必要な資金の貸付け、鉱害の復旧工事等を行なう目的で昭和43年7月に設立された。
44事業年度において実施した事業は、鉱害賠償資金等の貸付けおよび復旧工事の施工等177億5065万余円になっている。
鉱害賠償資金等の貸付条件は利率年3分5厘、償還期限8年(据置期間3年を含む。)以内となっていて、44事業年度における同資金等の貸付けは24億0095万円、年度末貸付金残高は106億2849万余円になっている。
検査の結果、本院の質問に対し、石炭鉱害事業団において処置を講じたものが次のとおりある。
石炭鉱害事業団では、昭和43年12月、杵島炭礦株式会社に対し、鉱害賠償資金として84,800,000円を貸し付けている。この貸付金は、同会社の石炭採掘によって生じた鉱害を賠償するための資金として貸し付けられたものである。
しかして、その貸付金の使途について調査したところ、上記の鉱害賠償資金の貸付対象となっている杵島炭礦(七区)の鉱害については、44年2月、別途、石炭鉱業合理化事業団から交付された石炭鉱山整理促進交付金によって鉱害の賠償が行なわれていることが判明した。したがって、本件鉱害賠償資金のうち、上記の石炭鉱山整理促進交付金の交付対象と重複する51,160,000円は返還させる要があると認められたので、当局の見解をただしたところ、石炭鉱害事業団では、45年9月、同会社から前記の貸付金を回収するとともに、鉱害賠償資金貸付けの適正化を図るため、45年10月から、石炭鉱山整理促進交付金との調整の励行、その使途監査の強化等の処置を講じた。