(昭和46年8月20日付け46検第275号 日本国有鉄道下関工事局長あて)
日本国有鉄道下関工事局が昭和45年度中に随意契約により今将測量株式会社ほか15会社に総額91,344,300円で請け負わせ施行した山陽新幹線予定路線111k437m区間の用地調査測量および図書作成(以下「調査測量」という。)について検査したところ、次のとおり、調査測量の範囲および予定価格の積算が適切でないと認められる事態が見受けられた。
すなわち、同工事局では、上記の調査測量の施行にあたって、上記111k437m のうち市街地区間を除く103k 157mについてはすべて郊外地区間であるとし、調査測量の幅を100m、作業項目を現地調査、用地図写図等16項目として予定価格を積算している。しかし、上記103k157mのうち27k521mは山間部のトンネル区間で、郊外地区間と異なり、用地の買収および残地、支障物件等の補償の必要がなく、土地所有者から掘削の承諾を受けるかまたは必要に応じて地下の地上権を設定すれば足りる区間であり、しかも、この区間は調査測量の対象も郊外地区間のように複雑ではない。したがって、上記のトンネル区間については、調査測量の幅はトンネルの設計断面(幅12m程度)を考慮して必要最少限度にし、また、作業項目は上記の掘削承諾を受ける場合等に必要なものだけにとどめるべきであり、さらに、予定価格積算の基礎となる作業歩掛りはこの区間の作業の実情に即したものを見込むべきであると認められる。
ちなみに、同工事局と隣接して山陽新幹線工事を施行している広島新幹線工事局における調査測量実施の実情をみると、郊外地区間とは別に山間部のトンネル区間についての基準を特に設けており、その内容は、作業項目については郊外地区間の16項目から平板測量等7項目を控除した9項目だけとなっており、また、その作業歩掛りについても大部分が下関工事局で積算の基礎にしているものよりかなり低いものとなっている状況である。
このような事態を生じたのは、山間部のトンネル区間は、通常、土地の取得を必要としないなど郊外地区間と調査測量の範囲、作業の難易が大幅に異なっているのに、本社が作成した「用地外注調査測量等積算要領(案)」に記載されている郊外地区間の場合の基準を準用していることによると認められる。
ついては、下関工事局では今後も山陽新幹線新設のための調査測量を引き続き施行する予定であり、そのうちには山間部のトンネル区間も相当含まれているのであるから、前記の事例にかんがみ、調査測量の範囲および作業歩掛りを実情に合ったものに改め、調査測量の施行の適正を期する要があると認められる。
上記のとおり処置を要求したところ、下関工事局においては、46年11月、用地外注調査測量等積算要領を改め、山間部のトンネル区間について、調査測量の幅、作業項目および作業歩掛りを実情に適合したものにする処置を講じた。