(昭和46年11月25日付け46検第339号 日本国有鉄道総裁あて)
日本国有鉄道が車両工場における車両修繕用の工場予備品(車両の定期修繕等のため工場において修理のうえ反復使用する目的で常備する物品。以下これを「予備品」という。)の増備または補充用として調達した車両部品は毎年度多額(昭和45年度における調達総額は19億3232万余円である。)に上っている。
しかして、46年中に、予備品について調達および管理の適否を検査したところ、下記のとおり、調達数量および調達時期の決定が実情にそっていなかったり、調達後の経理処理が適正でなかったりしたため、ひいては調達数量が過大になり適切でないと認められる点が見受けられた。
ついては、予備品の保有数量算定のための基準を策定して合理的、経済的な調達を確保するとともに、経理が適正に行なわれるよう適切な処置を講じ、もって、予備品の調達、管理の適正を期する要があると認められる。
記
(1) 予備品の調達について
(ア) 各車両工場で増備または補充した予備品(45年度調達額6億2210万余円)についてみると、その準備要求にあたって、各車両工場では、保有数量の算定基準が明確に示されていないため、受持車両の増加に伴って調達すべき数量を年間修繕車両の増加数等を基準にして適宜決定し、要求数量を算定している。
しかし、車両修繕の際、修繕車両から取り外された部品は、反復して使用するため短期間のうちに修理のうえ予備品として保有されるものであるから、各車両工場では、当該年度において修繕車両の両数が最も多いことが見込まれる月に必要とする数量を常時保有することにすれば足りると認められる。しかも、この当該年度の最大月間修繕両数は、前年度にあらかじめ把握できるのであるから、調達にあたっては、前記のように年間修繕車両の増加数等を基準にすることなく、修繕車両数が最も多い月に必要となる数量を基準にして、予備品の適正な保有数量を決定し、これを基にして調達数量を決定すべきであると認められる。
(イ) 新製車両増備の際にあわせて調達した予備品(45年度調達額13億1021万余円)についてみると、本社では、新製車両調達価額を基準にして予備品の調達総額を定め、その範囲内で予備品を調達することにしている。しかし、新製車両の定期修繕(要部検査または全般検査)は、日本国有鉄道運転規則(昭和30年運輸省令第5号)等の規定により、その使用開始後車種により1年以内から5年以内に実施することに定められているのであるから、初年度分としては、使用開始後1年以内に実施される定期修繕および新形式車両等の初期故障の早期復元等のために必要となる程度の数量を調達すれば足りると認められる。
したがって、調達にあたっては、前記のように新製車両の調達価額を基準にすることなく、修繕の施行時期や各工場の予備品保有状況等を勘案して決定すべきであると認められる。
調達数量の決定にあたって、上記の点を考慮したとすれば、調達数量を相当に減少できたと認められる。
(2) 予備品の管理について
増備用として調達した予備品については、工場用品等取扱基準規程(昭和40年資達第2号)の規定により、車両工場において甲種貯蔵品から予備品へ組み替え、その際、貯蔵品価額の5分の1相当額を資産勘定である予備品勘定に計上し、5分の4相当額を工場経費勘定に計上することに定められている。
しかし、各車両工場の経理の実態をみると、上記の経理処理を行なわないで全額を工場経費勘定に計上しているため、反復使用されているこれらの部品が予備品台帳に登載されないまま資産外として取り扱われている事例が各所で見受けられた。
また、修理不能品の補充用として調達した予備品についてみると、実際に生じた修理不能品の数量がこの補充用として調達した数量を下回る場合、調達数量と修理不能として処置した数量とを符合させる経理処理を行なっており、このため経理上修理不能品とした数量と実際に生じた修理不能品の数量との差数量の予備品が簿外品として資産外に保有されている事例も見受けられた。
上記のように資産外の部品を保有することもまた、ひいては今後の過大調達の一因になり適正でないと認められる。