(昭和46年11月26日付け46検第342号 日本住宅公団総裁あて)
日本住宅公団が、昭和45事業年度に施行した宅地等の造成工事のうち、港南台地区整地(その7)工事ほか35工事(工事費約24億円)について予定価格の積算および施工の状況を検査したところ、下記のとおり、積算基準が施工の実情に適合していないため、積算が適切でないと認められる事例が見受けられた。
ついては、同公団においては、宅地造成事業等を今後も引き続き多数施行するのであるから、下記の事例にかんがみ、積算基準を整備するなどして、予定価格積算の適正を期する要があると認められる。
記
(1) 道路舗装等工事27工事の路盤工の敷きならし費についてみると、人力により施工するものとして269,250m2
分、47,840,330円を積算している。しかして、この敷きならし費は、同公団の積算基準において、人力で施工するものとして基準を示しているので、すべてこれにより積算したものである。
しかし、従来同公団が施工してきた道路は、一般公道に比べて幅員も狭く、比較的小規模なものであったが、上記各工事の道路は、いずれも、団地等の規模の大型化に伴い、幅員の大きいものとして施工されているものであり、この種の道路工事における路盤材の敷きならしは、人力に比べて経済的なモータグレーダ(注1)
による機械施工によっているのが通例で、前記の基準は実情にそわないと認められる。
本件各工事の敷きならしをモータグレーダにより施工するとして積算したとすれば、積算額を相当程度低減できたと認められる。
(2) 整地工事9工事のスクレーパ(注2)
土工費の積算についてみると、6m3
級スクレーパと17t級トラクタの組合せにより施工するものとして3,998,713m3
分、409,229,791円を積算している。しかして、この土工費は、積算基準において、整地土工用スクレーパとこれをけん引するトラクタの組合せを6m3
級スクレーパと17t級トラクタ、9m3
級スクレーパと22t級トラクタの2種類とし、6m3
級スクレーパを標準とすることにしているので、すべて6m3
級スクレーパと17t級トラクタの組合せにより積算したものである。
しかし、スクレーパ製造業者の仕様その他の参考資料によると、けん引に適合するトラクタは、6m3
級スクレーパについては12t級トラクタ、9m3
級スクレーパについては17t級トラクタとなっており、また、他公団の積算基準をみると、日本住宅公団の基準に比べて重量の少ないトラクタでけん引することになっており、しかも、通常の場合は9m3
級スクレーパを使用することになっている。現に、上記工事の施工の実情をみても、経済的な9m3
級スクレーパと17t級トラクタの組合せによっているものが大部分となっている状況である。このようなことからみて、前記の基準は施工の実情に合わないと認められる。
本件各工事のスクレーパ土工を経済的な組合せによって施工するとして積算したとすれば、積算額は相当程度低減できたと認められる。
(注1) モータグレーダ 機体下部に装着してある刃で土砂の切削り、ならしを行なう土工機械。路床、路盤の仕上作業や砂利道の維持補修に使用する。
(注2) スクレーパ 機体下部に装着してある刃で土砂を掘削して腹部に収容し、盛土箇所に運搬して撒き出す土工機械で、被けん引式のものと自走式のものがある。ブルドーザより運搬距離の長い広範な地域の掘削、盛土に適している。