(昭和46年11月29日付け46検第343号 運輸大臣あて)
運輸省では、日本鉄道建設公団(以下「公団」という。)が実施している鉄道新線建設について、日本鉄道建設公団法(昭和39年法律第3号)の規定するところに従って、鉄道建設審議会の答申を経て、公団に対して基本計画を指示し、公団が日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)と協議を行なって作成した工事実施計画および毎事業年度の事業計画ならびに予算等を認可している。
しかして、同省が基本計画で工事線として指示している久慈線ほか57線(工事線64線のうち新幹線、津軽海峡線および大都市交通線を除く。)のうち、現在までに全区間を公団が国鉄に貸し付けた7線を除いた51工事線は、総工事費5608億円に対し、45事業年度までの決算額は1306億3816万余円で、23.2%の進ちょく率になっているが、これらの工事線の建設状況や投資効果等について検査したところ、路盤等の工事のほぼ全部または一部がしゅん功しているのに、その後建設工事が中断しているものが追分線ほか3線区、45事業年度までの投資額約44億円、建設工事を施行中であるが、全線のしゅん功までになお相当の年月を要すると見込まれるものが名羽線ほか12線区、45事業年度までの投資額約183億円あって、しゅん功した部分が遊休の状態になり、長期間にわたって投資効果が発現しないと認められる。
このような事態を生じたのは、新線建設を実施するにあたって、建設費の予算規模からみて、各工事線についてその投資効率を考慮して重点的に投資配分すべきところ、これが十分でなかったなどのため、各工事線への投資期間が長期にわたっていることによると認められ、一方、新線建設が完了すると、これを国鉄が引き受け運営することになっているが、国鉄においては、在来の地方交通線における輸送需要の減少が著しく、その経営成績も悪化していることなどのため、道路輸送への転換が適切と認められる83線区等について営業廃止の検討を行なっているところであり、なかには既に廃止したものもある事情もあって、工事実施計画に関する公団と国鉄との協議が難航していることなどによると認められる。
したがって、このような状況のまま新線建設を進めれば、開業までに相当の年月を要し、この間に、道路輸送の伸展、沿線人口の流出等社会的、経済的な情勢変化が予想されること、上記の83線区に直接接続する工事線が興浜線ほか24線(総工事費2305億円)に上っていることから、相当数のものは鉄道新線として建設する意義が薄れると認められる。
ついては、上記の事態にかんがみ、新線建設の投資効果について十分留意して今後の新線建設を実施する要があると認められる。