(昭和46年11月24日付け46検第338号 公害防止事業団理事長あて)
公害防止事業団が昭和45年度に工場移転用地等を造成するため施行した敷地造成工事17工事(契約額19億8348万円)のうち、14工事について予定価格の積算および施工の状況を検査したところ、羽田鉄工団地(第2次)造成工事ほか8工事(工事費7億8376万円)において、別表のとおり、適切でないと認められる事例が見受けられた。
このような事態を生じたのは、同事業団では、敷地造成工事の施行にあたって、設計、積算、施工管理の大部分を建設コンサルタントに委託しているが、次のように、同事業団の施行体制および配慮が十分でないこと、ならびに建設コンサルタントに対する指示が適切でないことによると認められる。
(ア) 積算基準が整備されていないので他団体等の積算基準を不統一に適宜準用させていること
(イ) 設計、積算の条件等の指示が明確でないこと
(ウ) 施工管理の方法について具体的な指示をしていないため適切な施工管理が行なわれていないこと
(エ) 実施設計書等の成果品の内容審査が十分でないこと
(オ) 監督、検査の技術的な基準が作成されていないため、(ウ)のような結果を生ずるとともに、検査が適切に行なわれていないこと
ついては、公害防止事業団においては、敷地造成工事を今後も引き続き施行するのであるから、上記の事例にかんがみ、積算基準の整備、技術基準の作成をすみやかに行なうとともに、積算審査、検査および建設コンサルタントに対する指示等を適確に行なうよう関係職員を十分指導し、工事施行の適正を期する要があると認められる。
(別表)
態様 | 工事数 | 適切でないと認められる工事費相当額 |
千円 | ||
(1) 現地についての調査が十分でなかったため、盛土工の山砂等の積込費および運搬費等の算定の基礎となる作業の難易の度合、運搬距離等が現地の実情に合っていないもの | 5 | 18,474 |
(2) 路盤工の材料所要量の計上を誤ったり、軟弱土置換工と道路埋めもどし工を重複して計上したりするなど数量の算出が適切でないもの | 3 | 12,235 |
(3) 路盤工、汚水管渠等の掘削および埋めもどしなどは機械作業が可能であり、かつ、経済的であるのに、人力作業によることとして工事費を計算しているもの | 2 | 4,738 |
(4) 施工方法に対する検討が十分でなかったため、機械作業を2工種で重複して見込んでいるもの | 2 | 2,120 |
(5) 舗装工、擁壁工等の施工が設計と相違しているもの | 4 | 7,291 |
備考 工事数を集計すると9工事を上回るが、これは1工事で2以上の態様の事態を生じていたものがあるためである。
検査の結果、本院の注意により、当局において処置を講じたものが次のとおりある。
昭和45年度に施行した四日市共同公害防止施設ほか38箇所の造成建設事業にかかわる附帯事務費について検査したところ、造成建設事業に関係がない貸付事業の事務費等に使用し、これを上記の造成建設事業に割り掛けているものが3796万余円あり、適切でないと認められたので、当局の見解をただしたところ、公害防止事業団では、46年9月、適切な科目への振替経理をするとともに、附帯事務費の経理の適正を図るため、その取扱要領を整備するなどの処置を講じている。