(昭和47年11月21日付け470普第1614号 防衛施設庁長官あて)
防衛施設庁が昭和46年度に防衛施設周辺の市町に国庫補助金を交付して助成した有線放送施設および有線放送電話施設設置事業について検査したところ、北海道三石町ほか11市町が実施した事業(総事業費は7億4726万余円、これに対する国庫補助金は4億0057万余円)において、下記のとおり、通信線路施設設置工事費の積算等が適切でないと認められる事例が見受けられた。
このような事態を生じたのは、いずれも、同庁が定めている通信工事の共通仕様書等および予定価格算定要領が適切でなかったり、同庁の事業主体に対する指導が十分でなかったりしたことによると認められる。
ついては、この種の事業は今後も多数実施されることが見込まれているのであるから、通信工事の共通仕様書等および予定価格算定要領に検討を加えるとともに、事業主体に対しその適用についての適切な指導を行ない、補助金交付額の適正を期する要があると認められる。
記
1 架空用線路の木柱の建植については、共通仕様書等に階段式工法(土砂を階段状に掘削した穴に木柱を建植する工法)しか示されていないため、大部分がこの工法によることとして工事費を積算している。しかし、建植工法には、階段式工法のほかに丸穴式工法(土砂を丸形に掘削した穴に木柱を建植する工法)があり、後者は前者に比べて掘削土量が少ないため建植費用が低価になるのであるから、建植箇所の地盤が軟弱であるなどのため丸穴式工法によることができない場合を除いては、原則として丸穴式工法によることとすべきであると認められる。
また、算定要領に機械施工による建植の歩掛りが示されていないため、建植はすべて人力により施工することとして積算しているが、施工箇所のうちには建柱車による機械施工が可能と認められる箇所が相当にあるのであるから、これらの箇所については、人力施工に比べて経済的な機械施工の丸穴式工法によることとして積算すべきであると認められる。
2 木柱の支線の取付けの工法には打込式アンカー工法(地中にアンカーを打ち込んでこれに支線を接続する工法)とロット式工法(土砂を掘削してコンクリートブロックを埋設しこれに支線を接続する工法)とがあり、前者は後者に比べて作業能率が高いため工事費も後者より低価であるが、算定要領に示されている打込式アンカー工法の歩掛りがロット式工法の歩掛りより高くなっているなどのため、打込式アンカー工法で施工する設計としていながら歩掛りはロット式工法のものを採用したり、打込式アンカー工法の歩掛りにさらにロット式工法の歩掛りの2分の1を加算したりして積算し、積算額が割高になっている事業が多い。
3 鋼心入屋外線については、共通仕様書等にその規格が明確に示されていないため、心線径0.8mmのものを使用している事業があるが、接続有線放送電話設備の技術基準(昭和38年日本電信電話公社公示第103号)等からみて、0.65mmのものを使用することとすれば十分であり、これによると工事費を相当程度低減できたと認められる。
検査の結果、本院の注意により、当局において処置を講じたものが次のとおりある。
( 魚雷の調達について)
防衛庁調達実施本部では、海上幕僚監部の要求により、対潜水艦用の魚雷(艦船および航空機から発射または投下する。)を毎年度相当数(昭和45年度契約分63個、46年度契約分90個)購入している。この魚雷は、海上自衛隊の航空基地および艦船基地に配備されるものであるが、調達にあたっては、艦船の魚雷発射管から発射する場合にだけ必要な機器であるジャイロモーター等(購入価額相当額1個当り約20万円)を全数に装着したものを納入させていた。
上記のようなことから、各航空基地では、配備された魚雷からこの機器を取り外して使用している状況であるので、航空基地配備の分についてはこの機器を装着してないものを調達しても支障はないと認められた。また、各航空基地では、上記のような理由により、使用の見込みがないこの機器を相当数保有しているので、これを艦船基地配備の魚雷用として活用すべきであると認められた。
上記について当局の見解をただしたところ、海上自衛隊では、航空基地配備の分については、47年9月、調達仕様を改め、今後この機器を装着してないものを調達することにし、また、艦船基地に配備する分についても、同年10月から、各航空基地で保有しているこの機器を活用することにした。