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  • 昭和46年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 各所管別の事項|
  • 第5 農林省|
  • 意見を表示しまたは処置を要求した事項

意見を表示しまたは処置を要求した事項


(1) 展示会等に出品する素材の売渡しについて処置を要求したもの

(昭和47年10月17日付け47検第305号 林野庁長官あて)

 旭川ほか13営林局管内の中頓別ほか202営林署で、昭和46年度中、随意契約により、社団法人全国木材組合連合会ほか120名(以下「木材関係団体」という。)に対し、これらの者が主催する展示会等への出品用として秋田スギ、木曾ヒノキ、屋久スギ等の優良素材23,838m3 を総額8億5676万余円で売り渡しているが、これらの売渡しについて検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 すなわち、上記の展示用素材は、各営林局が木材関係団体からの申請の内容を検討のうえ各営林署に対して発した指示に基づき、各営林署が展示会の直前に木材関係団体に随意契約により売り渡したものである。そして、これらの素材は、展示会等の開催中に入札またはせり売りの方法により総額11億3243万余円で製材業者等の実需要者に転売されている状況であった。このような実情からみて、本件売渡し物件を展示会等において入札またはせり売りの方法により実需要者に直接売り渡したとすれば、上記の転売価額程度で売り渡すことができたと認められる。しかして、現在、展示会等において入札またはせり売りの方法による販売を行なっているのは展示会等の主催者だけであるので、展示会等において国が実需要者に直接売り渡す方法としては、主催者に入札またはせり売りを委託することが考えられ、この方法によったとすれば、委託手数料等の経費が必要となるが、その額は本件売渡価額と転売額の差額の2分の1程度にすぎないと認められる。

 しかして、展示用優良素材を実需要者に直接売り渡すことについては、林野庁においても、41年に各営林局長あて通達を発し、委託販売の方法によりこれを実施することを指示しているところであるが、その後も依然として前記のように随意契約により木材関係団体に売り渡している事例が多数見受けられるのは適切でないと認められる。
 ついては、今後全国の営林局署においてこの種優良素材を展示会等に出品する場合に実需要者に直接売り渡す方法が実行されるよう適切な処置を講じ、もって収益の増大を図る要があると認められる。

(2) 北淡路開拓建設事業の実施について処置を要求したもの

(昭和47年11月14日付け47検第329号 近畿農政局長あて)

 近畿農政局が昭和50年度完了を目途として43年度から実施している北淡路開拓建設事業(総事業費37億1500万円。うち46年度までの支出済額13億4758万余円)について検査したところ、次のとおり適切でないと認められる事例が見受けられた。
 すなわち、この事業は、兵庫県津名郡北淡町ほか2町において、付近の既存農家の経営規模を拡大することなどを目的として、これら3町所在の山林原野654ha を開墾するものであるが、現地の状況を調査したところ、46年度までの開墾済面積95ha のうち42ha は、農業を経営していない会社員、商工業者など(以下これらの者を「非農家」という。)が所有している土地で、本事業の目的どおりに利用されておらず、また、今後も利用される見込みがないと認められるものであった。
 このような事態を生じたのは、事業計画を策定した当時または事業の実施過程において、非農家が所有している土地をも事業実施の対象地に含めたこと、事業実施過程において、事業実施対象の土地が非農家に売り渡されている事例が多かったのに特段の対応策を考慮しなかったことなどによると認められる。
 ついては、本事業は現在なお実施中であり、今後の開墾予定地558ha のうちにも非農家が所有している土地が113ha 含まれているので、これら開墾予定地について開墾後の土地が農業の用に供される見込みがあるかどうかを十分調査するなどして事業計画を再検討したうえで今後の事業を実施する要があると認められる。

 検査の結果、本院の注意により、当局において処置を講じたものが次のとおりある。

(国内米の運送におけるトラック運賃の適用について)

 食糧庁では、国内米の運送に際してのトラック運賃の支払にあたって、貨物自動車運送事業運賃(各陸運局長認可)のうちの車扱距離制運賃を一律に適用している。
 しかして、国内米運送の実態を調査したところ、海上運送に伴う発着地におけるトラック運送については、本船の荷役機械等を使用するので積卸作業が能率的であり、また、運送区間が短距離で交通量の少ない港頭地域内で行なわれるため、通常の国内米運送に比べて効率的に反復して運送が行なわれている場合が多数見受けられた。そして、前記の認可運賃のうちには、トラック1日1台当りの運行回数が多い場合に車扱距離制運賃に比べて有利な車扱時間制運賃があるので、上記のように反復して運送が行なわれる場合についてこれを適用することとすれば多額の運搬費を節減できると認められた。

 上記について当局の見解をただしたところ、食糧庁では、昭和47年10月、車扱時間制運賃を適用する処置を講じた。

(国内米の売渡しについて)

 食糧庁では、倉庫業者等に寄託して保管している国内米の売渡しを各食糧事務所に行なわせており、食糧事務所では、各月の配給量について、卸売販売業者ごとに毎週2回から5回の現品引渡期日(以下「引渡期日」という。)を指定して売り渡している。そして、同庁が倉庫業者等に支払う保管料は、1箇月を営業倉庫については3期(注1) に、農業倉庫については2期(注2) にそれぞれ区分して計算することになっていて、引渡期日の属する期の分はその全額が支払われている。しかして、昭和47年中、北海道ほか17食糧事務所における売渡しの状況を調査したところ、北海道ほか13食糧事務所においては、各月の2期目、3期目の初日に当たる日を引渡期日として売り渡している事例が多数見受けられた。しかし、売渡価格決定の一要素となっている卸売販売業者の販売手数料には現品引取りが引渡期日の属する期を過ぎる場合もあることを考慮してその場合の保管料所要額が見込んであり、また、引渡期日は食糧事務所で調整することができるもので、少なくとも引渡期日が各期の初日に当たっている場合についてこれを繰り上げることは容易であると認められるので、このように配慮したとすれば保管料の支払額を相当程度節減できたと認められた。

 上記について当局の見解をただしたところ、食糧庁では、47年9月、引渡期日の繰上げに努めるよう全国各食糧事務所に通達を発し、食糧事務所では引渡期日を繰り上げて売り渡すよう処置を講じた。

(注1)  1日から10日まで、11日から20日まで、21日から月末までの3期

(注2)  1日から15日まで、16日から月末までの2期