(昭和47年11月24日付け47検第333号 建設大臣あて)
東北ほか5地方建設局(
注1)
が昭和46年度中に施行している高架橋等構造物の新設工事のうち、基礎をベノト工法(
注2)
による場所打ち鉄筋コンクリート杭(以下「ベノト杭」という。)で施工している青森高架橋下部工工事ほか26工事(工事費48億1092万円)について検査したところ、下記のとおり、予定価格の積算が適切でないと認められる事例が見受けられた。
このような事態を生じたのは、建設省で定めている「場所打杭積算資料」等の積算基準が施工の実態を十分反映していないことなどによると認められる。
ついては、同省においては、この種工事を今後も引き続き多数施行することが見込まれるから、施工の実態等を十分調査検討して積算基準の内容を整備し、予定価格積算の適正を期する要があると認められる。
記
各地方建設局においては、ベノト杭工事について、上記の「場所打杭積算資料」に基づいて積算基準を作成し、工事費の積算にあたってはこれを適用しているが、そのうち、ベノト杭の施工に伴う掘削土の運搬に使用するダンプトラックの運転経費(64,943,582円)、ベノト杭の鉄筋かごの現場継手作業のための溶接工経費(21,022,525円)の積算について、次のとおり適切でないと認められる点があった。
(1) 掘削土の運搬に使用するダンプトラックの運転経費については、ベノト杭1本ごとに、施工に要する時間中、常時、ダンプトラック(6t車または8t車)2台が稼働することとして算定している。
しかし、ベノト杭施工の工程には、掘削、鉄筋かご建込み、コンクリート打設等の作業があり、ダンプトラックによる掘削土の運搬作業は、これらのうち掘削作業を行なう際、これと併行して積込み、運搬、捨土作業が連続して行なわれるのであるから、前記のように、掘削作業以外の工程に要する時間を含んでいる全施工時間にわたって、ダンプトラック2台が常時稼働するとして一律に運転経費を算定しているのは、施工の実情に適合していないと認められる。
(2) 鉄筋かごの製作および建込みのための経費については、鉄筋かごを加工、組立する経費のほか、鉄筋かごを継ぎ足す作業のための経費として、ベノト杭1本ごとに、施工に要する時間中、常時、溶接工2人が配置されていることとして算定している。
しかし、ベノト杭施工の工程は前記(1)のとおりであって、鉄筋かごの継足し作業は、鉄筋かご建込みの際行なわれるもので、しかも、その作業内容は、あらかじめ現場で製作してある一定の長さの鉄筋かごを建込みの際所要の長さまで逐次溶接して継ぎ足すだけで、その作業時間もわずかなものである。そして、この作業は、別途に鉄筋かごの製作に従事している鉄筋工等がその作業のかたわら実施するのが通例であるから、鉄筋かごの加工組立費のほか、別途にその継足し作業のための経費を見込んでいるのは、施工の実情に適合していないと認められる。
上記について、施工の実情に即して積算したとすれば、積算額を相当程度低減できたと認められる。
(注1) 東北、中部、近畿、中国、四国、九州各地方建設局
(注2) ベノト工法 フランスのベノト社が開発した掘削機で地中に円筒形の穴を掘削し、かご状の鉄筋を建て込み、コンクリートを打設して基礎杭を造る工法検査の結果、本院の注意により、当局において処置を講じたものが次のとおりある。
( 国道を占用している有線音楽放送線について)
建設省が直轄管理している国道には、同省から国道占用の許可を受けた電力会社等(以下「電柱所有者」という。)が電柱を建植しているが、この電柱に有線音楽放送業者が同省の占用の許可を受けることなく有線音楽放送線を添加し、国道を占用して営業しているものが延長245,073m(昭和46年度末現在)あった。
このような事態を生じたのは、同省において、上記のような占用の実態を十分把握していなかったこと、電柱所有者等から有線音楽放送線の添加に関する情報を得る体制が整っていなかったことによると認められた。
上記について当局の見解をただしたところ、建設省では、有線放送事業の監督官庁である郵政省および電柱所有者と協議した結果、47年8月、電柱所有者は建設省が占用許可を与えた有線音楽放送線でなければ電柱に添加の承諾を与えないこととし、郵政省は有線音楽放送業者から設備設置等の届出があった場合電柱所有者との添加契約が締結されているものだけを受理することとするよう協議が整い、また、9月、各地方建設局等に対し、無断占用の実態把握に努めるとともに、協議に基づく適切な管理を行なうよう通達を発する処置を講じた。