(昭和47年11月24日付け47検第332号 農林漁業金融公庫総裁あて)
農林漁業金融公庫では、農林漁業経営構造改善資金融通制度の一環として、農地もしくは採草放牧地または林地を取得しようとする者に対し、その取得に必要な資金を貸し付けており、昭和46年度末貸付金残高は、農地等取得資金1802億7777万余円、林地取得資金301億9625万余円になっている。
しかして、47年中、上記の資金の貸付けについて検査したところ、次のとおり改善を要する事態が見受けられた。
1 農地等取得資金について
農地等取得資金は、農業経営の規模の拡大によりその経営の改善を図ろうとする農業者に対して貸し付けることになっている。そして、借入申込者の貸付適格認定申請書に添付されている農業経営改善計画(以下「改善計画」という。)について、農業委員会の審査を経て、それが適正であり、かつ、達成の見込みが確実であって、その土地の取得に必要な資金の貸付けを受けることが適当であると都道府県知事が認定したものに貸し付けることになっている。また、貸付後においては、都道府県および農業委員会が、借入者の改善計画の達成について、必要な指導を行なうことになっている。
しかして、北海道ほか13県下の44年度から46年度までの貸付け1,909件20億3900万余円について調査したところ、次のとおり、融資目的にそわないと認められる事例が152件1億3900万円見受けられた。
(1) 貸付適格認定申請前において、借入申込者が、公共用地への提供等特別の理由がないのに、貸付対象農地とほぼ同面積またはこれを上回る経営農地を縮小していて、この資金を借り受けて農地を取得しても、経営規模が拡大されているとは認められないもの
77件 | 72,810,000円 |
(2) 貸付後において、借入者が、貸付対象農地とほぼ同面積またはこれを上回る経営農地を縮小していて、改善計画の達成が図られているとは認められないものなど
75件 | 66,190,000円 |
このような事態を生じたのは次のような理由によると認められる。
(ア) 借入者に対する本資金融通制度の趣旨の周知徹底が十分でないこと
(イ) 農業委員会における借入者の経営農地の増減状況等の把握が十分でなく的確な
意見書が道県に進達されていなかったり、道県および農業委員会における借入者の改善計画達成についての指導が欠けていたりしているのに、このような現状についての把握が足りず、その適正を期するため関係行政庁と連絡調整するなどの努力が十分でないこと
(ウ) 借入者の現況把握が十分でないため、借入者の改善計画達成の見込みがない場合の対応策が考慮されていないこと
ついては、今後、同公庫においては、借入者に対する本制度の趣旨の周知徹底を図るとともに、関係行政庁と連絡調整を密にして、都道府県および農業委員会の適切な審査および指導、都道府県知事が改善計画達成の見込みがないと認めた場合などの通知の励行等を確保し、また、改善計画達成の見込みがない場合にはこれに対応した処置をとるなど、適切な処置を講ずる要があると認められる。
2 林地取得資金について
林地取得資金は、林業経営の改善を図ろうとする林業者に対し、森林組合を通ずる転貸により貸し付けることになっている。このうち、造林のための土地の取得資金については、貸付基準により、その取得の日から2年以内に植栽の予定のないものは貸付けの対象にしないことになっている。
しかして、北海道ほか14府県下の42年度から45年度までの貸付け864件5億9372万余円について調査したところ、造林のための土地を取得して2年以上経過しているのに、その全部または一部について植栽を実施していないで、融資目的にそわないと認められる事例が145件1億0360万円見受けられた。
このような事態を生じたのは次のような理由によると認められる。
(ア) 森林組合が、転貸予定者の林業経営の現状把握や、植栽計画の検討を十分行なわないまま借入申込みをしている場合が多いのに、このような実情についての認識が十分でなく、特段の処置を講じていないこと
(イ) 植栽の実施状況の把握が十分でないため、林地取得後2年以上経過しても植栽を実施していないものに対する適切な処置がとられていないこと
ついては、今後、同公庫においては、借入者等に対する本制度の趣旨の周知徹底を図り、森林組合等に対し、植栽計画の検討や、貸付後における植栽の実施についての調査指導を適確に行なわせ、また、植栽状況を十分把握して、林地取得後2年以上経過しても植栽を実施していないものについてはこれに対応した処置をとるなど、適切な処置を講ずる要があると認められる。