昭和46事業年度に実施した事業のうち、住宅等建設事業では、賃貸住宅56,534戸、分譲住宅24,103戸計80,637戸を発注したほか、住宅等建設用地436万余m2 を取得している。住宅等建設費の債務負担済額は、予算現額3613億2691万余円に対し3192億8000万余円で、前事業年度に比べて540億4349万余円増加しているが、一方、住宅建設がはかどらなかったなどのため420億4594万余円を翌事業年度に繰り越している。しかして、住宅等建設事業についてみると、46事業年度の住宅建設計画88,000戸に対して実施計画は83,601戸(うち787戸は前事業年度に繰上発注済み)で、そのうち80,637戸(47事業年度計画分を繰上発注した840戸を含む。)を同事業年度に発注し、3,017戸を翌事業年度に繰り下げている。また、上記の46事業年度の発注戸数のうちには、第4四半期に発注したものが51,491戸、翌事業年度に入ってから着工する予定のものが39,429戸(うち38,047戸は第4四半期発注分)あり、これらのうちには発注から着工までに相当期間を要するものも見受けられる状況で、事業の実施が遅延していると認められる。これは、関係地方公共団体との調整および敷地の造成に日時を要したことなどによるものと認められる。なお、46事業年度末において、翌事業年度以降で使用する用地として保有しているものは920万余m2 1110億6250万余円であるが、このうちには関係地方公共団体との調整が十分でないなどのため、長期間使用できないと見込まれるものがある。
住宅管理事業では、46事業年度末の管理戸数は賃貸住宅393,604戸、分譲住宅223,422戸で、同事業年度の住宅管理および譲渡収入は1215億4871万余円(家賃収入487億7876万余円、分譲住宅収入526億1166万余円等)になっている。しかして、住宅管理の状況についてみると、同事業年度に新規に管理を開始した住宅のうちには、立地条件が良好でないなどのため相当期間空家になっているものが北本ほか5団地において相当数あり、また、住宅建設に際しての事前調査が十分でなかったり関係地方公共団体との連絡調整が遅れたりしたなどのため、住宅完成後も相当期間住宅の用に供することができなかったものがこま川ほか4団地8,399戸ある。
宅地造成事業では、269億0354万余円で造成工事等を施行し、造成用地531万余m2 を221億1444万余円で購入している。宅地造成費の債務負担済額は、予算現額765億5599万余円に対し537億7801万余円で、前事業年度に比べて55億5798万余円増加しているが、一方、用地買収がはかどらなかったなどのため226億9650万余円を翌事業年度に繰り越している。しかして、造成宅地の処分状況についてみると、46事業年度で住宅用地等367万余m2 を譲渡しており、造成後、未譲渡になっている住宅用地が同事業年度末現在で211万余m2 136億9671万余円になっているが、なかには地区の選定が適切でなかったなどのため長期間譲渡できないままになっているものがある。
検査の結果、本院の注意により、当局において処置を講じたものが次のとおりある。
昭和46事業年度に首都圏宅地開発本部が施行した戸頭地区第1工区排水工事ほか12工事について検査したところ、次のとおり予定価格の積算が適切でないと認められる事例が見受けられた。
(1) 排水管を埋設するための床掘りについてみると、掘削断面がある程度以上の大きさの場合には、通常、0.6m3 級機械ロープ式バックホウを使用することとして工事費を積算しているが、0.6m3 級バックホウには、機械ロープ式より経済的に掘削作業ができる油圧式のものが普及しているから、これを使用することとして積算すべきであると認められる。
(2) 排水管を設置した後の掘削土の埋めもどしについてみると、すべて人力により施工することとして工事費を積算しているが、本件のような埋めもどし作業を行なう場合には、ブルドーザ等を使用すれば人力に比べて相当に経済的であるから、配管に悪影響を及ぼすおそれがない範囲内で機械施工をすることとして積算すべきであると認められる。
このような事態を生じたのは、いずれも積算基準が適切でないことによると認められたので、当局の見解をただしたところ、日本住宅公団では、47年9月、とりあえず、今後この種工事を施行する場合には、床掘りには0.6m3 級油圧式バックホウを使用することとし、また、埋めもどしは配管に悪影響を及ぼすおそれがある部分を除いて機械施工とすることとして積算するよう通達を発するとともに、積算基準を改訂するための資料の収集、解析に着手した。