(昭和47年5月12日付け470普第747号 首都高速道路公団理事長あて)
首都高速道路公団が昭和46年度に施行した首都高速道路1号線および2号線桁落下防止装置補強工事(その1)ほか3工事(工事費3億7460万円)について検査したところ、次のとおり、桁落下防止板の工場製作に要する費用の積算が適切でないと認められる事例が見受けられた。
すなわち、上記の工事は、いずれも、既設道路高架橋の主桁と主桁を連結する桁落下防止板を製作しこれを既設のものと取り替える工事であるが、この工事の予定価格の内訳について桁落下防止板A型(以下「防止板」という。)の製作に要する直接労務費等をみると、防止板1t当りの製作工数を10工数とし、これを基にして防止板1t当り55,814円、前記各工事における所要量708t分総額39,568,105円と算定している。
しかして、上記直接労務費等の算定の基礎となった製作工数のうちの約半数を占める孔明工数は、1孔当り0.015または0.012となっている。しかし、防止板の孔明作業は、鋼橋梁の桁を製作する場合の孔明作業と特に異なるとは認められないものであり、同公団や他団体で鋼道路橋桁の製作工事費を積算する場合に一般に採用されている孔明工数が1孔当り0.005程度であることからみて、本件積算は過大であると認められる。
また、防止板の製作に要する副資材費についてみると、桁製作の場合の副資材費積算の基準として同公団が定めている1t当り5,000円を適用して、総額3,987,719円と算定している。しかし、この単価のうち2分の1程度は溶接棒等溶接作業に要する副資材の価格であり、一方、防止板を製作する場合は、鋼板を切断して孔をあけるだけで溶接作業を全く行なわないのであるから、本件工事費の積算にあたってこの基準をそのまま適用したのは適切とは認められない。
したがって、本件工事の施行にあたって上記のような点を考慮して積算したとすれば、積算額を相当程度低減できたと認められる。
ついては、同公団においては、この種工事を今後も引き続き施行するのであるから、施工の実態を十分調査検討のうえ、実情に適合した積算ができるよう適切な処置を講ずる要があると認められる。
上記のとおり処置を要求したところ、首都高速道路公団では、47年7月、製作工数および副資材費の積算基準を設定した。