(昭和47年7月14日付け470普第1270号 阪神高速道路公団理事長あて)
阪神高速道路公団が昭和46年度から施行している大阪湾岸線の高速道路建設工事のうち、南港第2工区下部工事ほか4工事(工事費32億5850万円)について検査したところ、次のとおり、地盤改良に要する費用の積算が適切でないと認められる事例が見受けられた。
すなわち、上記の各工事は、いずれも、高架橋下部工を施工する工事であるが、現場の地質が軟弱なため圧縮砂杭(以下「砂杭」という。)による地盤改良を行なったうえ橋脚等を施工することとしている。しかして、これらの工事の予定価格の内訳について、砂杭圧入の機械運転経費をみると、75kw振動機付きの圧入機械を使用すると想定し、砂杭1m当り984円または1,181円、前記各工事における砂杭の総延長128,700m分総額129,975,025円と算定している。この砂杭1m当りの運転経費は、圧入機械の1日当り運転経費として算出した金額を1日当りの施工能力で除したもので、施工能力については、他団体から聴取した施工能力の基準や、同公団が先に施行した築港第5工区下部工事において施工した地盤改良の施工実績等を参考にして、機械1台の1日当り圧入可能の砂杭の延長を120mまたは100mとしている。
しかし、上記の他団体から聴取した施工能力の基準は、本件積算の際想定した機械より小型な37kw振動機付きの機械を使用する場合のものであると認められ、同団体の積算基準においては、75kw振動機付きの機械の施工能力は、地質、作業条件等が本件工事とほぼ同様の場合、1日当り150m前後となっている。また、築港第5工区下部工事で施工した地盤改良は、本件積算の際想定したのと同種の機械を使用していたとはいえ、本件工事の施工箇所のような軟弱な地盤に比べてはるかに締っている地盤を対象としたものであるから、その施工実績は相当に低く、これを本件工事の積算の参考としたのは適切とは認められない。
したがって、本件工事の施行にあたって、適切な施工能力を見込んで積算したとすれば、積算額を相当程度低減できたと認められる。
ついては、同公団においてはこの種工事を今後も引き続き施行するのであるから、施工の実態を十分調査検討のうえ、実情に適合した積算ができるよう適切な処置を講ずる要があると認められる。
上記のとおり処置を要求したところ、阪神高速道路公団では、47年9月、積算基準を改訂し、使用機械を75kw振動機付きの圧入機械とし、地質条件等を考慮した杭長別の施工能力を新たに設定した。