科目 | (款)建設費 (項)新線建設費 |
部局等の名称 | 東京支社 |
工事名 | 武蔵野(南)線梶ケ谷第1工区路盤その他工事ほか3件 |
工事の概要 | 武蔵野線建設に伴い梶ケ谷貨物駅の路盤造成等を施工する工事 |
工事費 | 総額2,106,599,831円(当初契約額1,795,800,000円) |
請負人 | 株式会社青木建設ほか3会社 |
契約 | 昭和46年3月〜7月 指名競争契約 |
この工事は、貨物駅の路盤造成に必要な盛土用土砂の流用計画等が適切でなかったなどのため、約9800万円が不経済になったと認められる。
(説明)
この工事の設計および予定価格の内訳をみると、路盤造成のための盛土1,009,700m3
については、当初は本件工事と同時期に別途施行する生田および小杉の両トンネル工事から発生する土砂(以下「発生土」という。)を流用してこれに充てることとし、その経費として敷均し費、転圧費、土砂計量費等183,890,000円を計上していたが、その後、発生土だけでは盛土の必要量に足りないと判断して発生土のほかに山土100,000m3
を使用することとし、また、土質が軟弱な箇所について転圧効果を高めるため山砂22,610m3
を敷き込むこととして、これらの運搬に要する経費等を見込み、上記の経費を262,787,875円に増額して契約変更している。
しかして、この路盤造成工事について、次のとおり計画等が適切でないと認められる点があった。
(1) 当初計画においては、生田トンネル工事の発生土を約746,000m3
、小杉トンネル工事の発生土を約324,000m3
計1,070,000m3
と想定し、発生土のほぼ全量を本件工事に流用できると見込んでいた。その後、工事施工中に、生田トンネルのうち生田工区の発生土を運搬することについて付近住民の反対があったため生田工区の発生土約66,000m3
の流用を取りやめたこと、および盛土による地盤の圧密沈下が激しく、基準面まで盛土するためには当初計画の盛土量を増量する必要があることが見込まれたことから、両トンネルからの流用土だけでは盛土の全量に足りないと判断して、この不足分を補うため、前記のように、山土100,000m3
(工事費相当額56,500,000円)を使用することとした。そして46年12月、この山土のうち70,218m3
(工事費相当額39,796,580円)が搬入された時点で、それ以後の盛土は発生土を流用すれば足りると判断して、残りの山土の搬入を中止することにしている。
しかし、上記の盛土計画は、その基礎となっている前記両トンネルの発生土量1,070,000m3
の想定について次のように適切でない点があり、盛土材料として使用できる発生土は約1,231,000m3
と見込むべきであったと認められる。
(ア) 前記の両トンネル工事においては、設計断面の掘削のほかに約24,000m3 の余掘りを見込んでいるのに、流用計画の策定にあたってこの分を発生土に含めていない。
(イ) トンネル掘削箇所のうちには軟岩が約434,000m3 含まれており、この軟岩は、掘削後盛土して締め固めた後の体積が掘削前の体積の1.2倍程度になるものであるのに、掘削前の体積をそのまま流用盛土量としている。
(ウ) 本件工事で施工する土留擁壁等の築造工事において、根掘り等により約67,000m3 の不用土が発生するのに、これを盛土に流用することを考慮していない。
いま仮に、適切と認められる発生土量を見込んだとすれば、流用土だけで盛土量を十分充足することができることになるので、前記のように山土の使用を見込む必要はなく、山土70,218m3 の運搬費約2710万円を節減できたと認められる。
(2) 路盤の盛土に使用する土砂については、その重量を計量装置で確認することとし、この費用として32,492,678円を計上している。しかし、土砂の単位体積当り重量は土質や含水比によって異なるものであり、また、盛土工事においては、盛土の出来形により搬入された土砂の体積を確認すれば足りるのであるから、特に重量を確認することとする必要はないと認められる。
(3) 小杉トンネルからの流用土のうちに、掘削にあたってベントナイト(注1) を使用したためヘドロ状になっていたり、含水比が液性限界(注2) をこえていたりしているものが約50,000m3 あったため、これらを盛土する箇所には、前記のように、山砂22,610m3 を敷き込んで転圧効果を高めることとし、その山砂の費用を38,889,200円計上している。
しかし、日本鉄道建設公団の「土木工事標準示方書」等によれば、ベントナイトを使用した土砂は盛土に使用してはならないことになっており、また、含水比が液性限界をこえている土砂は乾燥のうえ使用しなければならないことになっているのであるから、上記のように、山砂を購入して、不適格な発生土をそのまま盛土に使用したのは適切とは認められない。
いま、本件盛土工事の施工にあたってベントナイトを使用した土砂は排除し、含水比が液性限界をこえている発生土は乾燥のうえ使用させたとすれば、上記の38,889,200円は見込む必要がなかったと認められる。
上記の各項のように適切と認められる方法によって施行したとすれば、工事費は2,008,105,793円で足り、約9800万円を節減できたと認められる。
(注1) ベントナイト 膨潤性が強く、吸水膨張してヘドロ状となる一種の粘土で、水と混和して泥水とし、場所打ち鉄筋コンクリート杭等の施工の際の掘削壁面の保護等に用いられる。
(注2) 液性限界 土は含水量が増してくると流動性を増し、含水量が少なくなると粘性を増す。土が液状から塑性状に変わる限界をいう。