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  • 昭和47年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 各所管別の事項|
  • 第4 文部省|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

病理解剖にかかわる経理について処置を要求したもの


病理解剖にかかわる経理について処置を要求したもの

(昭和48年11月17日付け480普第1652号文部事務次官あて)

 昭和48年中、北海道ほか12大学の経理について実地に検査したところ、北海道ほか(注) 11大学では、47年度に公私立病院等から医学部病理学教室等が依頼を受けて病理解剖902件を実施し、うち115件については病理学教室等で依頼者から1,990,000円を、また、405件(病理学教室等の受領件数と4件重複している。)については教官等が4,322,759円をそれぞれ任意に受領して賃金の支払及び消耗品の購入等に充てるなど予算外に経理している状況であった。
 しかして、上記の病理解剖は、その実態をみると、大学の教官等が大学で又は依頼者のもとに赴いて各種検査材料の採取等行ったうえ、国の施設、設備等を使用して診断し、その結果を依頼者に通知するものであるから、大学の教育研究にも役立つが、依頼者の利益となるものであって、大学が外部からの委託を受け公務の受託研究として取り扱っている各種の研究と異なる種類のものではないと認められた。
 なお、前記の病理解剖902件に要した費用は、消耗品、光熱水料等の直接的な経費に限ってみても、各大学の試算によっても約1580万円に上っている。
 受託研究の取扱いについては、44年11月18日付け44検第262号をもってその取扱いの適正化について処置を要求したところであり、その結果、文部省においても各国立学校長に対して学内規程の整備を図るよう処置を講じるなどしているところであるが、前記の各大学においては、病理解剖について、教育研究に役立つ面だけに着目していたためこれを受託研究として取り扱わず、ひいては前記のような事態が生じているものと認められる。
 ついては、病理解剖についても、受託研究として各大学において学内規程を整備するとともにこれを教官等に周知徹底ずるよう適切な処置を講じ、経理の適正を期する要があると認められる。

(注)  北海道、弘前、東北、東京医科歯科、金沢、岐阜、三重、京都、大阪、徳島、九州、鹿児島各大学

検査の結果、本院の注意により、当局において処置を講じたものが次のとおりある。

(鉄骨工事の予定価格の積算について)

 文部省及び北海道ほか4大学(注1) が昭和47年度に施行した高エネルギー物理学研究所大実験室その他新営工事ほか10工事について検査したところ、次のとおり、鉄骨工事費(積算額合計7億8344余万円)の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。

(1) 鉄骨の現場加工費について、文部省が定めている「積算指針(建築工事)単価算出要領」(以下「要領」という。)に定められているびょう打ちの歩掛かりを適用して算定していた。しかし、近年では一般に、この種工事における鉄骨部材の接合は高カボルト本締め工法(注2) で施工されており、この工法はびょう打ち工法(注3) に比べて作業能率が高く、歩掛かりはかなり低いのであるから、これによることとして算定すべきである。

(2) 鉄骨を工場で溶接する場合の溶接費について、要領に定められている手溶接法の歩掛かりを適用して算定していた。しかし、近年では、この種工事における鉄骨の工場溶接は自動溶接法で施工するのが通例となっており,この溶接法は手溶接法に比べて作業速度が早く、歩掛かりはかなり低いのであるから、これによることとして算定すべきである。

(3) H形鋼の工場加工組立て費について、要領に定められている一般の形鋼等の場合の歩掛かりを適用して算定していた。しかし、一般の形鋼等の工場加工が鋼板等に複雑な加工を加えるものであるのに対し、H形鋼の工場加工は鋼材に切断や穴あけを加える程度の簡単なものであって、このようなものについて一般の形鋼等の場合の歩掛かりを適用しているのは適切でない。

(4) 鉄骨の工場加工組立て費、建て方費、現場加工費及び運搬費について、鋼材の設計数量にロス量を加えた量にそれぞれの単価を乗じて算定していた。しかし、工場加工組立ての費用は、単価からみて設計数量分の鋼材についてだけ算定すればよいものであり、また、建て方、現場加工及び運搬の費用は、設計数量分の鋼材についてだけ必要となるものであって、ロス量についてまでこれらの費用を見込んでいるのは適切でない。

 このような事態を生じたのは、要領の整備が十分でなく、近年一般に使用されるようになった工法や施工の実態に適合した歩掛かりを定めていなかったことなどによると認められたので、当局の見解をただしたところ、文部省では、48年10月、要領を改定し、施工の実態に適合した歩掛かりを新たに定めるなどの処置を講じた。

(注1) 北海道、東北、東京、岐阜、鹿児島各大学
(注2) 高力ボルト本締め工法 高張力鋼(普通の鋼に比べて引っ張り強度が高い。)製のボルトを使用して鉄骨を接合する工法
(注3) びょう打ち工法 赤熱したリベットをびょう打ち機で打撃して鉄骨を接合する工法