(昭和48年11月16日付け48検第301号 日本道路公団総裁あて)
日本道路公団が昭和47、48の両年度に施行している高速道路の工事のうち、東北高速道路矢板舗装工事ほか15工事(工事費総額326億1940万円)について検査したところ、下記のとおり、アスファルト舗装工事の予定価格の積算が適切でないと認められる事例が見受けられた。
このような事態を生じたのは、同公団が定めている積算要領が施工の実態に適合していないことによると認められる。
ついては、同公団においては、この種の工事を今後も引き続き多数施行するのであるから、アスファルト舗装工事の施工の実態を十分調査検討し、積算要領の内容を整備して、予定価格積算の適正を期する要があると認められる。
記
1 東北高速道路矢板舗装工事ほか14工事では、アスファルト舗装に使用するアスファルト合材(以下「合材」という。)の混合、舗設費について、積算要領に基づき、合材の1t当たり単価を1,710円から3,542円とし、総量1,506,220t分で総額3,446,912,278円と算定している。
しかして、この積算要領では、1基当たりの合材標準混合能力が110t/時以下のアスファルトプラントについて、それぞれのプラントの規模ごとに混合、舗設(舗設はプラント1基ごとに1編成の舗設班(アスファルトフィニッシャ、マカダムローラ等の舗設機械と労務者の組合せによる編成)で行うこととしている。)の組合せを定めているが、これについて、次のとおり適切でないと認められる事例が見受けられた。
(1) 各工事は、いずれも120t/時以上の合材供給が必要であることから、標準混合能力110t/時(ミキサー容量1.6tから2t)以下のプラントを2基又は3基組み合わせて使用することとして積算している。しかし、近年、この種高速道路工事においては混合能力が120t/時から150t/時(ミキサー容量2t)又は150t/時から200t/時(ミキサー容量3t)の大型のプラントが多く使用されるようになってきており、本件各工事における施工の実態をみても、これら大型の機械が使用されている状況であった。そして、合材の混合、舗設費は、小型のプラントを組み合わせて使用する場合より大型のプラントを使用する場合の方が廉価になるものであり、前記15工事のうち近畿高速道路和歌山線和歌山南舗装工事ほか4工事においては、これらの大型プラントを単独で又は2基組み合わせて使用した場合の合材供給量を必要としているのであるから、この5工事については、大型のプラントを使用することとして積算すべきであったと認められる。
(2) バインダー工(注1)
及びサーフェース工(注1)
をホットジョイント工法(注2)
で施工する場合については、積算要領に基づき、一般のコールドジョイント工法(注2)
で施工する場合と同様にプラント1基当たり1編成の舗設班で舗設を行うこととしている。しかし、ホットジョイント工法の場合には、コールドジョイント工法の場合の1編成の2倍の主要機械や1.5倍の労務者を使用してコールドジョイント工法の場合の2倍の舗設幅を一挙に施工するのであって、この場合の舗設能力は、プラント1基当たりの合材混合能力を大幅に上回っている。したがって、ホットジョイント工法による場合でプラントヤード(注3)
1箇所の合計合材供給能力が上記の1舗設班当たりの舗設能力と同程度又はこれを下回る場合には、プラント1基ごとに1編成の舗設班が作業することとして積算しないで、プラントヤード1箇所について1編成とすることとして積算すれば足りたと認められる。
したがって、本件各工事の施行に当たって上記の点を考慮して積算したとすれば、積算額を相当程度低減できたと認められる。
2 東北高速道路矢板舗装工事ほか15工事では、サブベース工、ベース工及びアスフアルト舗装工の施工管理試験費について、積算要領に基づき、総額375,613,367円と算定している。
しかして、この積算要領では、試験に要する歩掛かりを各プラントの規模等の別に定めており、このため、上記の積算額は、プラント1基ごとに所要の試験を行う場合の試験費の額となっている。しかし、この試験項目の内容をみると、材料、舗装体等の試験は各プラントごとに行うものではなく、施工数量に応じて行うことになっているのであるから、積算に当たっては、プラントヤード1箇所当たりの合材の総量に対応した試験費を算定すべきであったと認められる。
したがって、本件各工事の施行に当たって上記の点を考慮して積算したとすれば、積算額を相当程度低減できたと認められる。
(注1) バインダー工、サーフェース工 アスファルト舗装の舗装体の名称。前者は、サーフェース工の下部に施工するもので、基層工とも呼ばれ、後者は、バインダー工の上部つまり舗装体の最上部に仕上げとして施工するもので、表層工とも呼ばれる。
(注2) ホットジョイント工法、コールドジョイント工法 アスファルト舗装の場合の舗設工法。後者は、舗設機械1編成(アスファルトフィニッシャ(アスファルト合材の敷きならし機械)1台と数台の転圧機械の組合せ)が縦列となって舗設を施工する一般的な工法であり、前者は、幅員の広い道路を継ぎ目なしに舗設するため、アスファルトフィニッシャ等の主要舗設機械を2台使用し、これをがん行させて全幅を一挙に舗設する特殊工法である。
(注3) プラントヤード プラントの設置場所
検査の結果、本院の注意により、当局において処置を講じたものが次のとおりある。
高速道路東京第一管理局ほか2箇所(注)
が昭和47年度に実施した東名高速道路等の料金収受機械保守整備について検査したところ、次のとおり、料金収受機械保守整備費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。
すなわち、上記の部局では、予定価格の積算に当たって、点検作業の際使用する試験用カードについては、料金所の出入口に設置されている料金収受機械(通行券発行機、通行券確認機)の全台数につき1枚又は2枚ずつを使用することとして、総枚数1001万余枚(価格748万余円)と算定していた。しかし、上記の高速道路における料金収受業務の仕組み及び実態からみて、試験用カードは入口の通行券発行機に使用したものを出口の通行券確認機に使用することができ、また、点検時にか働している機械については車両が通行する際に発行した通行券について立会い点検を行えば足り、わざわざ試験用カードを使用して点検を行う必要はないので、上記のように全台数について1枚又は2枚ずつの試験用カードを使用することとして積算したのは適切とは認められない。現に、業者もこのような方法で点検作業を実施している。
上記について、当局の見解をただしたところ、日本道路公団では、48年7月、積算の基準を改定し、作業の実情に適合した積算を行うよう処置を講じた。
(注) 高速道路東京第一管理局、同局八王子支局、高速道路名古屋管理局