(昭和48年3月27日付け48検第69号 首都高速道路公団理事長あて)
首都高速道路公団が昭和47年度に施行している第555工区(その1)高架橋下部構造新設工事及び(受託)仲宿立体交差構造新設工事ほか14工事(工事費総額156億3474万円)について検査したところ、次のとおり、高架橋床版等のコンクリートを打設する場合の鋼製支保工費の積算が適切でないと認められる事例が見受けられた。
すなわち、上記の工事は、いずれも、中空床版橋又は開削式ずい道等を施工する工事であるが、これらの工事の予定価格の内訳のうち、高架橋の床版及び開削式ずい道の上床版のコンクリートを打設する場合の鋼製支保工費についてみると、同公団が定めた積算基準に示されている基準単価を適用して1空m3
(注)
当たり単価を596円から1,191円とし、前記各工事における鋼製支保工総数量497,529空m3
分総額395,048,202円と算定している。
しかして、上記の積算基準に示されている鋼製支保工単価は、同公団が多数施工している高架橋等の橋脚のはり部分のコンクリートを打設する場合の支保工費として計算されたものであって、その場合の支保工としては、橋脚のはり部分を脚部取付け部から末端にいくに従って下面が斜め上がりになるよう築造する設計になっているため、鋼製わく組み支保工の上部に木材や鋼材等を使用した複雑な構造の三角形のわく組みを架設する必要があり、その加工、製作、組立て、架設等の費用が基準単価の中に含まれている。
しかし、本件各工事で施工している高架橋の床版及び開削式ずい道の上床版はほとんどの場合下面が水平であり、そのコンクリートを打設する場合の支保工としては、鋼製わく組み支保工だけを架設すれば足り、橋脚のはり部分のコンクリートを打設する場合のように複雑な構造の三角形のわく組みを付加する必要はないのであるから、本件各工事の予定価格積算に当たって、高架橋の床版及び開削式ずい道の上床版について前記の積算基準をそのまま適用しているのは適切とは認められない。現に、本件各工事と同種の工事を施行している他団体においては、鋼製支保工について作業の実態に適合した積算基準を定めており、同公団の積算基準の単価算出の基礎となっている加工、製作、組立て、架設等の労務歩掛かりと、これら他団体の積算基準に示されている労務歩掛かりとを比較してみると、例えば、最も施工事例が多い支持荷重1m2 当たり2.5tから3tの場合、同公団の積算基準では1空m3 当たり0.159人であるのに対し、他団体の積算基準では0.041人から0.070人程度となっているように両者の間に相当の開差がある。
また、前記の積算額のうち、箱形ラーメン構造の開削式ずい道の上床版コンクリートを打設する場合の鋼製支保工費についてみると、同公団の積算基準にラーメン構造の場合には基準単価に25%の割増しをする定めがあるので、これに従って積算しているものがあるが、箱形ラーメン構造の開削式ずい道の上床版コンクリートを打設する場合の支保工費についてこのような割増しを特に行うことを必要とする理由は認められない。
したがって、本件各工事の施行に当たって、上記の諸点を考慮して積算したとすれば、積算額を相当程度低減できたと認められる。
ついては、同公団においては、この種の工事を今後も引き続き施行するのであるから、施工の実情を調査検討し、積算基準を整備、改定して、予定価格積算の適正を期する要があると認められる。
上記のとおり処置を要求したところ、首都高速道路公団では、48年4月に次のとおり積算基準を改定した。
(1) ずい道、中空床版橋等の構造物別に支保工単価を設定した。
(2) ラーメン構造の場合の割増しはしないことにした。
(注) 空m3 支保工や足場は、その構築される空間の体積を想定して数量が計算されるのが通常であり、この場合には特に「空m3 」という単位が使用されている。
(参考図)