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  • 昭和47年度|
  • 第3章 政府関係機関その他の団体の会計|
  • 第2節 政府関係機関その他の団体別の事項|
  • 第22 動力炉・核燃料開発事業団|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

動力炉等の建設事業にかかわる建築、土木工事の予定価格の積算について処置を要求したもの


動力炉等の建設事業にかかわる建築、土木工事の予定価格の積算について処置を要求したもの

(昭和48年12月1日付け48検第308 号動力炉・核燃料開発事業団理事長あて)

 動力炉・核燃料開発事業団では、昭和43事業年度から高速増殖炉の実験炉及び新型転換炉の原型炉(以下「原子炉」という。)等の建設事業を実施しており、47事業年度までの建設費の合計は778億9332万余円に上っている。
 しかして、上記の建設事業のうち、原子炉建て家等の建築及び土木工事計9件(工事費総額108億9948万円)について検査したところ、下記のとおり、予定価格の積算が適切でないと認められる事例が見受けられた。
 このような事態を生じたのは、積算に当たって関係資料の調査検討を十分行っていなかったり、施工の実態を十分は握していなかったりしていること、積算についての審査が十分行われていないことによると認められる。
 ついては、同事業団においては、今後も引き続き多額の資金を投下してこれらの工事を施行するのであるから、積算関係資料の調査検討や施工の実態のは握に努めるとともに、審査体制を整備して予定価格積算の適正を期する要があると認められる。

1 積算関係資料の調査検討が十分でないもの

(1) 新型転換炉原型炉建設工事のうち主建家主体及びタービン台建設工事において、建て家等のコンクリート総量94,343m3 は生コンクリートをコンクリートポンプ車(注1) で圧送して打設することととし、そのコンクリート打設費については、コンクリートのつき固め、ポンプ車の運転、圧送管の配管等に要する労務費を積算し、これに積算関係資料から採用したポンプ車の使用料金を加えて1m3 当たり単価を1,160円ないし1,410円計125,968,130円と積算していた。
 しかし、上記の積算関係資料に掲載されているポンプ車の使用料金にはポンプ車の運転や圧送管の配管に必要な労務費が含まれているのであるから、別途にこれらの労務費を積算する必要はないと認められる。

(2) 高速実験炉原子炉建家及び原子炉付属建家新築工事(1次、2次)ほか1工事において、建て家等の鉄筋コンクリートに使用する異形棒鋼総量10,121tのうち、6,948t(高速実験炉建て家工事分)については、日本工業規格SD35のものを使用することとし、平電炉メーカー(注2) ものの価格(1t当たり54,170円ないし55,710円)を採用して総額382,705,160円と積算し、また、3,173t(再処理工場建設工事分)については同規格SD30のものを使用することとし、高炉メーカー(注3) ものの価格(1t当たり44,400円ないし48,600円)を採用して総額143,708,700円と積算していた。
 しかし、それぞれの積算当時の市場価格を調査すると、SD35のものについては高炉メーカー製品が平電炉メーカー製品より1t当たり約9,500円低価であり、SD30のものについては、逆に平電炉メーカー製品が高炉メーカー製品より1t当たり約1,600円低価であったのであるから、積算に当たっては、それぞれ低価な方の価格を採用すべきであったと認められる。

(3) 高速実験炉原子炉建家及び原子炉付属建家新築工事(1次、2次)において、鉄筋等の資材の吊り上げ運搬に使用するタワークレーン(注4) の損料については、建設省の「建設機械等損料算定表」によることとし、この損料算定表にタワークレーンの損料率が記載されていないとして、耐用年数及び年間標準供用日数がタワークレーンと異なっているトラッククレーン(注5) の損料率をそのまま採用して、損料を供用日当たり13,500円、運転時間当たり4,100円、総額41,806,000円と積算していた。
 しかし、上記の損料算定表には、タワークレーンの損料率が記載されていて、この損料率により算定した損料はトラッククレーンに比べてかなり低いのであるから、これにより積算すべきであったと認められる。

(4) 新型転換炉原型炉建設工事のうち主建家主体及びタービン台建設工事において、鉄筋等の資材の吊り上げ運搬に使用するタワークレーン3基の損料については、タワークレーンの取得価格にマスト(高さ30mないし60m)の価格を加算した額を基にして損料を総額78,891,850円と積算していた。
 しかし、このタワークレーンの取得価格のうちにはマスト33m分の価格が含まれているのであるから、損料算定に当たっては、取得価格に33mを超える分のマストの価格を加算した額を基にすべきであったと認められる。

(5) 新型転換炉原型炉建設工事のうち土木工事(第5期)第1工区において、基礎岩盤グラウト用ボーリングを孔径46mmのダイヤビット(注6) で施工することとし、この費用については、1日当たりせん孔速度を5m又は6mとして、これに基づき、ボーリング費を1m当たり5,200円(孔深3mないし15mの場合)又は6,220円(孔深1.5mないし2mの場合)総額33,935,000円と積算していた。
 しかし、同事業団が本件工事に先立って本件工事と同一地点、同一レベルで行った地質調査ボーリングの実績によれば、孔径66mmのものでも1日当たりのせん孔速度は平均9.84mとなっているのであるから、積算に当たっては、この地質調査の資料を参考として適正なせん孔速度を見込むべきであったと認められる。

 上記の各工事について、上記のような点を考慮して積算したとすれば、積算額を相当程度低減できたと認められる。

2 積算が施工の実態に適合していないもの

(1) 高速実験炉原子炉建家及び原子炉付属建家新築工事(1次、2次)において、タワークレーンの補助として鉄筋等の資材の吊り上げ運搬に使用するトラッククレーンの損料については、作業半径40mで2tの資材を吊り上げることが可能な70t級トラッククレーンを使用することとし、この損料及び運転経費を1,080日分で90,238,096円と積算していた。
 しかし、このトラッククレーンはタワークレーンのか働範囲やさん橋の仮設計画からみて、作業半径は20m程度で足り、吊り上げ能力が1.5t程度あれば足りると認められるから、28t級ないし35t級のものを使用することとして積算すべきであったと認められる。

(2) 燃料集合体検査施設新築工事において、基礎掘削用山留め矢板工1,900m2 については、アースドリル(注7) で削孔してH鋼ぐいを建て込むこととし、この削孔費及びH型鋼建て込み費を10,732,537円と積算していた。
 しかし、この種の削孔に使用する機械としては、アースオーガ(注8) が一般に使用されており、アースオーガはスクリューの回転に伴って自動的に土砂を排出する(アースドリルは掘削した土をバケットで排出する。)ので、アースドリルに比べて削孔速度が速く、しかも、同一機械で建て込みもできて経済的であるから、これを使用することとして積算すべきであったと認められる。

(3) 新型転換炉原型炉主建て家及びタービン建て家地階の廃液処理を行うドレーン配管工事において、配管延長2,420mのすえ付け作業費については、鋼管を工場加工するのに4,387時間を要するとして、加工費を1時間当たり1,400円、総額6,142,300円と算定し、また、加工した鋼管のすえ付け作業は工場から従業員が出張して行うこととして、賃金に工場間接費等を加算して配管工1日当たり10,000円、人夫1日当たり8,000円延べ1,979人分で19,005,000円と積算していた。
 しかし、一般に、この種の配管工事は工場加工しないで現地で加工等を行うのであるから、工場加工費を計上する必要はなく、また、すえ付け作業はすえ付け専門の業者がこれを行っているのが通常であるから、すえ付け費は、工場間接費を見込むことなく当該工事現場地区における職種別賃金により積算すべきであったと認められる。

(4) 新型転換炉復水器冷却水管製作及びすえ付け工事において、冷却水管に使用する鋼管のすえ付け作業については、工場から従業員が出張して行うこととして、賃金に工場間接費等を加算して溶接工、配管工等1日当たり10,000円、雑工1日当たり8,000円延べ2,216人分で20,752,000円と積算していた。
 しかし、この種の配管工事は、上水道や農業かんがい用水の配管すえ付け工事と同程度の内容のものであり、この程度のものであればことさら工揚から従業員を派遣する必要はないから、すえ付け費は工場間接費を見込むことなく、当該工事現場地区における職種別賃金により積算すれば足りたと認められる。

(5) 新型転換炉原型炉建設工事のうち主建家主体及びタービン台建設工事において、打ち放しコンクリート面の補修費を1m2 当たり220円、103,366m2 分で22,740,520円と積算していた。
 しかし、この工事では、コンクリート打設に当たって打ち放し合板型わくを使用することとしていて、この型わくを使用してコンクリートを打設する場合は、通常型わくを取り外したコンクリート面が仕上げ面となり、しかも、このコンクリート打設箇所はタービン室等の機械室であって高度な仕上げを必要としないものであるから、特に補修費を積算する要はないと認められる。

 上記の各工事について、上記のような点を考慮し施工の実態に即して積算したとすれば、積算額を相当程度低減できたと認められる。

(注1)  コンクリートポンプ車 コンクリートポンプ(コンクリートをポンプのピストンによって管の中に送り込み打設場所まで圧送する装置)をとう載した作業自動車

(注2)  平電炉メーカー 銑鉄を高炉メーカーから購入し、平炉、電気炉で製鋼するメーカー

(注3)  高炉メーカー 溶鉱炉で銑鉄を製造し、これを転炉で製鋼する一貫メーカー

(注4)  タワークレーン 鋼材を組み上げた塔状のマストの上に、旋回する機械台とブームを取り付けたクレーン

(注5)  トラッククレーン トラックの上に旋回する機械台とブームを取り付けた移動式クレーン

(注6)  ダイヤビット せん孔機械の刃の一種。刃先に工業用ダイヤモンドを使用してあるので、硬岩のせん孔に適している。

(注7)  アースドリル シャフトの先端に取り付けた円筒状のバケット(底面に爪が取り付けてある。)を回転させて削孔し、バケットに土砂を貯留して排土する削孔機械

(注8)  アースオーガ らせん状をした長い軸(らせんの先端に爪が取り付けてある。)を回転させて連続的に削孔排土する削孔機械