会計検査院は、国、政府関係機関等の昭和48年度の歳入、歳出等に関して、歳入の徴収、歳出の支出等の事務を行う職員から提出された計算書23万4千余冊、その証拠書類6206万余枚について書面検査を行い、また、48年11月から49年10月までの間に、上記の職員が所在する局所等のうち約3,100箇所について、4万2千余人日をもって実地検査を実施した。なお、検査に伴い関係者に対して発した質問は約1,800事項である。
(不当事項)
検査の結果不当と認めた事項は、この検査報告に不当事項として、所管、政府関係機関等の別に記載してあるが、その件数を分類して示し、また、概要を態様別に説明すると、次のとおりである。
所管 | 租税 | 保険 | 計 |
大蔵省 |
件 1 |
件 |
件 1 |
厚生省 | 2 | 2 | |
労働省 | 1 | 1 | |
計 |
1 | 3 | 4 |
租税収入の徴収額が不足していたものなど | 1件 |
891百万円 |
租税を徴収するに当たって、納税者から提出された申告書に記載されている所得金額や税額が誤っていたのにこれを発見できなかったこと、法令の適用や税額の計算などを誤ったこと及び課税資料の収集や活用が適切でなかったことによって、徴収額に過不足を生じたものである。この過不足額については、本院の注意によって、すべて徴収決定等の処置が執られた。
保険料収入の徴収額が不足していたもの | 3件 |
61百万円 |
厚生省所管の健康保険、厚生年金保険及び船員保険並びに労働省所管の労働保険に関するもので、いずれも、保険料を徴収するに当たって、保険料算定の基礎になる被保険者の報酬についての調査が十分でなかったなどのため徴収額に不足を生じたものである。この不足額については、本院の注意によって、いずれも徴収決定の処置が執られた。
所管、政府関係機関等 | 工事 | 保険 | 補助金 | 計 |
総理府 (防衛庁) |
件 1 |
件 | 件 | 件 1 |
文部省 | 8 | 8 | ||
厚生省 | 14 | 14 | ||
農林省 | 1 | 60 | 61 | |
通商産業省 | 10 | 10 | ||
郵政省 | 1 | 1 | ||
労働省 | 1 | 1 | ||
建設省 | 41 | 41 | ||
日本国有鉄道 | 2 | 2 | ||
日本鉄道建設公団 | 1 | 1 | ||
公害防止事業団 | 1 | 1 | ||
日本私学振興財団 | 2 | 2 | ||
計 |
7 | 1 | 135 | 143 |
工事の設計が適切でなかったため、不経済になったもの | 1件 |
2百万円 |
工事の施行に当たって、検討が適切でなかったため不経済な結果になったもので、次のとおりである。
総理府(防衛庁)で、照明設備新設工事の施行に当たって、必要以上の導体断面積の電力ケーブルを使用することとしたもの
工事費の積算が適切でなかったため、契約額が割高になったもの | 2件 |
21百万円 |
工事の施行に当たって、配慮が十分でなかったため予定価格が過大になり、ひいては契約額が割高になったもので、これを所管等の別に示すと、次のとおりである。
郵政省
エレベーター設備等新設工事の契約変更に当たって、工事費積算の基礎となる資材単価等の決定が適切でなかったもの
日本国有鉄道
変電所建設の基礎工事の工事費の積算に当たって、土留め工費の算定が適切でなかったもの
工事の監督、検査が適切でなかったため、施工が設計と相違していたものなど | ||
4件 |
54百万円 |
工事の施工に当たって、監督、検査が十分でなかったため出来形が設計どおりでなかったのに、設計どおり施工されたとしていたものなどで、これを所管等の別に示すと、次のとおりである。
農林省
ずい道工事において、覆工コンクリート等の施工が設計と相違していたもの
日本国有鉄道
こ線橋新設工事において、ガードレールの施工が設計と相違していたもの
日本鉄道建設公団
線路防護設備新設工事において、落石止めさくの基礎コンクリートの施工が設計と相違していたもの
公害防止事業団
敷地造成工事において、実際の盛土施工量を上回った数量で工事費を精算していたもの
保険金等の支給が適切でなかったもの | 1件 | 71百万円 |
労働省所管の失業保険に関するもので、失業保険金等の支給に当たって、給付の原因になる事実についての調査が十分でなかったため、支給が適正に行われなかったものである。
補助事業の実施及び経理が適切でなかったもの | 135件 |
273百万円 |
国から補助金の交付を受けて地方公共団体等が施行している各種事業において、事業の実施及び経理が適切でなかったもので、これを所管等の別に示すと、次のとおりである。
文部省
公立小学校校舎新増築事業等において、補助の対象とは認められないものを含めて事業を実施していたものなど
厚生省
臨床研修事業において、事業費を過大に精算していたもの
農林省
土地改良、災害復旧等の公共事業において、工事の設計が適切でなかったもの、工事の施工が設計と相違していたもの及び工事費を過大に精算していたものなど
農業構造改善事業等において、補助の目的を達していないもの、工事の施工が設計と相違していたもの及び事業費を過大に精算していたものなど
農業改良資金の貸付けが不当で補助の目的に添わない結果になっていたもの
通商産業省
重要技術研究開発事業において、事業費を過大に精算していたもの
中小企業設備近代化資金の貸付けが不当で、補助の目的に添わない結果になっていたもの
建設省
公共土木施設の新設、改良等の公共事業において、工事の設計が過大になっていたもの及び工事の施工が設計と相違していたもの
日本私学振興財団
私立大学等経常費補助金が不実の報告に基づいて交付されていたもの
所管 | 不正行為 |
郵政省 | 件 |
職員の不正行為による損害を生じたもの | 5件 |
18百万円 |
郵政省で、集金事務等に従事している郵便局の外務員又は現金の受け払い事務に従事している特定郵便局長が、その取扱いにかかわる現金を領得したものである。
(意見を表示し又は処置を要求した事項)
会計検査院法第34条の規定により意見を表示し是正改善の処置を要求した事項が次のとおりある。
総理府
(防衛庁)
F−86F航空機用部品の管理に関するもの
(科学技術庁)
委託事業により取得した物品の管理に関するもの
通商産業省
輸出保険特別会計の保険料の徴収等の経理に関するもの
運輸省
防波堤等築造工事におけるケーソンのえい航、すえ付け費の積算に関するもの
郵政省
郵便振替口座計算用会計機(甲)の保守料金の算定に関するもの
建設省
道路、河川構造物工事における鉄筋コンクリート用型わく支持材損料の積算に関するもの
橋りょう塗り替え工事における塗装費の積算に関するもの
日本国有鉄道
変電所等の電気設備工事における空気配管工費の積算に関するもの
車両工場等と地方資材部との間の資材準備要求等にかかわるデータの授受に関するもの
工場製作品を材料として多量に使用する工事の施工に関するもの
潜函工事における掘削沈下費の積算に関するもの
路盤鉄筋コンクリート工事における突起コンクリートの型わく費の積算に関するもの
日本電信電話公社
引上げ用ガス隔壁付きケーブルの仕様に関するもの
日本住宅公団
住宅団地内土木工事における不陸整正費の積算に関するもの
日本道路公団
高速道路等工事における敷砂層等の材料の選定及び施工管理に関するもの
日本鉄道建設公団
潜函工事における掘削沈下の設計に関するもの
以上の不当事項及び意見を表示し又は処置を要求した事項のほか、検査の結果、本院の注意により、当局において是正又は改善の処置を講じたものが次のとおりある。
総理府(防衛庁)
艦船とう載用アスロック調整要具及び試験器の調達に関するもの
航空機用T64エンジンの調達に関するもの
文部省
くい打ち工事を含む工事の予定価格の積算に関するもの
農林省
ダム工事の岩石採取等に使用する機械の燃料費の積算に関するもの
輸入麦の保管等に関するもの
日本国有鉄道
ケーブル防護管の配管工費の積算に関するもの
特種広告料金の徴収に関するもの
日本電信電話公社
とう道築造工事における配線工費の積算に関するもの
空気調整設備工事における矩(く)形風道の仕様及び製作取付け費の積算に関するもの
日本住宅公団
H−PC工法による高層住宅建築工事の下請経費の積算に関するもの
日本道路公団
トンネル工事の側壁型わく費の積算に関するもの