(昭和49年11月28日付け49検第356号 航空幕僚長あて)
航空自衛隊では、F−86F航空機及びRF−86F航空機(以下総称して「F−86F」という。)の修理の際使用する専用部品を組部品として又は子部品で約11,000品目保有し、使用した結果保有数量が必要見込数を下回るものについては毎年度その補充調達を行っている。そして、F−86Fは長年にわたって使用されて老朽化したため、同自衛隊では、48年3月、向う数年間に全機を廃止することを決定しているので、上記の専用部品は、特に過剰在庫となっているものについては、F−86F全機が廃止されるまでの間に使用されないものの発生が予想され、その場合には未使用のまま不用品として廃棄処分されることとなるものである。
しかして、本院が49年中、上記の専用部品の管理状況を調査し、F−86Fの今後の就役見込みと対比して検討したところ、これらの専用部品のうちには消費実績が予測を下回ったなどのため、過剰在庫となっているものが相当多数あることもあって、F−86F全機が廃止される時期に至ってもなお相当の未使用残数を保有することが見込まれる品目が少なからず見受けられた。そして、これら全機廃止時に未使用のままとなることが見込まれる品目については、全機廃止の方針及び廃止予定時期が決定された後すなわち48年度以降における補充調達の際適切な考慮を払えば、未使用残数の減少と、補充調達経費の節減とをもたらす余地が次のとおりあると認められる。
すなわち、48年度に、同自衛隊が調達実施本部に要求して又は第二補給処で主脚ブレーキほか3品目(価額1億7848万余円、いずれも複数の組部品又は子部品で構成されている組部品)を補充用として調達しているが、上記の未使用残が見込まれるもののうちにこれら補充調達品を構成している組部品又は子部品と同一のものがクランプほか17品目79,517個あるのであるから、このうちから補充調達品の製造に必要な23,569個を官給材料として活用したとすれば、未使用残が減少するとともに、補充調達の経費を約2000万円節減できたと認められる。
また、49年度においても、調達実施本部に要求して主脚ブレーキほか2品目の補充調達が予定されているが、この補充調達時から前記のような配慮をしたとしても、クランプほか19品目17,639個が官給材料として活用でき、これにより補充調達の経費を約1900万円節減できることとなる。ついては、上記の事例にかえりみて、現在、同自衛隊が管理している修理用専用部品のうち、全機廃止時に未使用残となることが見込まれるものについて利活用の方途を講じ、もって、使用可能品が廃棄される不経済な事態を極力回避するよう努めるとともに、補充調達経費の節減を図る要があると認められる。
検査の結果、本院の注意により、当局において処置を講じたものが次のとおりある。
(航空機用T64エンジンの調達について)
調達実施本部では、海上幕僚監部の要求により、PS−1航空機及びPS−1改航空機(以下「PS−1等」という。)並びにP−2J航空機にとう載するT64エンジンを毎年度相当数(昭和46年度55基、47年度45基、48年度45基)調達している。
しかして、上記の調達に当たっては,プロペラブレーキ(エンジン停止中のプロペラを空転させないようにするための装置。 48年度における調達価格1個当たり約27万円)を装着したものを調達することとしている。しかし、上記の航空機のうちPS−1等については、46年5月、機体の重量軽減対策の一環としてプロペラブレーキ作動用の油圧配管等を装着しないことと決定し、既に納入済みのものについてもこれを取り外しているのであるから、46年度以降調達の同機用エンジン56基についてはプロペラブレーキを装着したものとする必要はなかったと認められ、また、45年度以前の調達分で既に納入された同機用エンジン39基についてはプロペラブレーキを取り外して今後調達するP−2J航空機用エンジンの支給材として転用することとしてその活用を図る必要があると認められた。
上記について、当局の見解をただしたところ、海上幕僚監部では、49年10月以降、PS−1等用エンジンについてはプロペラブレーキを装着しないものを調達することとし、また、P−2J航空機用エンジンについては、当分の間、納入済みのPS−1等用エンジンから取り外したプロペラブレーキを支給してこれを装着させたものを調達することとするとともに、11月現在契約済みで未納入となっているPS−1等及びP−2J航空機用エンジンについても上記の方針による処置を講じた。
(艦船とう載用アスロック調整要具及び試験器の調達について)
調達実施本部では、昭和47、48両年度に、海上幕僚監部の要求により、艦船にとう載するアスロック用(注)
の調整要具及び試験器73式型5セットを調達しているが、このなかにテストセットMK432MOD2改(以下「テストセット」という。)及びプリセッター(価額合計931万余円)を含めていた。
しかして、テストセットは、魚雷をアスロックとしてその発射装置から発射する場合に、水中攻撃指揮装置(コンピュータで攻撃データを分析して魚雷をコントロールする装置)から魚雷へ調定データが十分伝達されていることを確認するためのものとして、また、プリセッターは、水中攻撃指揮装置による魚雷への捜索深度の調定等が十分でないときに手動によりこれらを調定するためのものとして、同幕僚監部で定めている仕様書に基づいて調達要求したものであるが、魚雷をアスロックとしてその発射装置から発射する場合は、このテストセット及びプリセッターの電線が魚雷に接続できないなどのため使用できないと認められた。
上記について、当局の見解をただしたところ、海上幕僚監部では、49年9月にこの仕様書を廃止して、今後の調達を取りやめることとするとともに、既に調達した分については魚雷発射管から発射する場合の魚雷用として転用するよう処置を講じた。
(注) アスロック Anti Submarine Rocketの略。潜水艦が所在する海域まで飛しょうさせるためのロケットを装着した魚雷。(下図参照)