(昭和49年11月5日付け490普第1753号 日本住宅公団総裁あて)
東京支社(旧東京支所)ほか2箇所(注) が昭和47、48の両事業年度に施行した住宅団地の土木工事49工事(工事費総額26億0491万円)について検査したところ、成田ニュータウン4−5−Aブロック土木工事ほか24工事(工事費総額20億1310万円)において、次のとおり、住宅団地内の空地の不陸整正費の積算が適切でないと認められる事例が見受けられた。
すなわち、上記の25工事は、いずれも、住宅団地内の道路及び排水管きょの新設並びに建物各棟間等の空地(建築工事の際不陸整正を施工する建物の周囲4m分を除く。)の不陸整正等を行うものであるが、これらの工事の予定価格の内訳のうち、不陸整正費についてみると、日本住宅公団の積算基準に基づき不陸整正をすべて人力により施工することとして25工事における不陸整正総面積684,115m2 分で42,843,082円と算定している。
しかし、これら各工事の施工現場の状況をみると、いずれも、ブルドーザ等による機械施工が可能な形状の箇所が大部分であり、その面積も7,000m2 から100,000m2 と広く、このような箇所で不陸整正を施工する場合には、人力施工よりブルドーザ等による機械施工の方が相当に経済的であるから、前記のように不陸整正をすべて人力で施工することとして積算しているのは適切とは認められない。
したがって、本件各工事の施行に当たって上記の点を考慮して積算したとすれば、積算額を相当程度低減できたと認められる。いま、北坂戸団地(賃貸)土木工事の場合を例に採ると、不陸整正施工面積11万m2 のうち10万m2 は機械施工が可能と認められ、これを機械施工することとして積算したとすると、不陸整正費積算額520万円を約380万円低減できたこととなる。
このような事態を生じたのは、近年、同公団における高層住宅の増加、公園、緑地面積の増大等によって住宅団地内の空地部分が従前より広くなっているのに、積算基準がこれに対応していないことによると認められる。
ついては、同公団においては、住宅団地の造成を今後も引き続き多数施行し、これに伴いこの種不陸整正工事も多数施工するのであるから、施工の実態を十分調査検討して積算基準を整備し、予定価格積算の適正を期する要があると認められる。
(注) 東京支社(旧東京支所)、関東支社(旧関東支所)、関西支社(旧大阪支所)
検査の結果、本院の注意により、当局において処置を講じたものが次のとおりある。
東京支社(旧東京支所)ほか3箇所(注1) が昭和48年度に契約した村上団地第4住宅建築工事ほか21工事について検査したところ、次のとおり、下請経費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。
すなわち、上記の各工事はいずれもH−PC工法(注2)
による高層住宅建築工事であるが、このような建築工事においては一般に請負人が工事内容の一部を専門業者に下請けさせていることから、
契約の際下請業者が必要とする経費を見込むのが例となっており、上記の各工事においても、予定価格積算の際下請経費として合計5億6714万余円を積算していた。そして、この下請経費の積算についてみると、日本住宅公団では、純工事費からくい打ち工費(下請けに要する経費相当額が既に合算してある。)を差し引いた額に同公団で定めている積算基準の下請経費率を乗じて算定しているが、その率は、同公団が施行しているPC工法(注3)
による中層住宅建築工事の予定価格を積算する場合の率(PC工法による標準的な型式における標準工事費に占める下請経費の割合を試算して定めたもの)と同率となっている。しかし、H−PC工法による建築工事は、PC工法による建築工事に比べて、鉄骨、H形鋼入りはり材等の材料費等特に下請けについての経費を見込む必要のない工費の純工事費のうちに占める割合が高く、したがって下請けさせる工事費の割合が低くなっているので、PC工法による工事の予定価格積算の場合の下請経費率と同率でH−PC工法の下請経費を積算しているのは適切とは認められず、適切と認められる率によって積算したとすれば、積算額を約1億4000万円程度低減できたと認められた。
上記について、当局の見解をただしたところ、日本住宅公団では、49年10月に通達を発してH−PC工法の下請経費率を引き下げるよう処置を講じた。
(注1) 東京支社(旧東京支所)、関東支社(旧関東支所)、中部支社(旧名古屋支所)、関西支社(旧大阪支所)
(注2) H−PC工法 H形鋼を組み込んだ軽量コンクリート製のはり材、はり材付き壁板、床版等の部材をあらかじめ工場で製作し、現場で主柱鉄骨と組み合わせて建て込む工法
(注3) PC工法 鉄筋コンクリート製の壁板、床版等の部材をあらかじめ工場で製作し、現場で建て込む工法