ページトップ
  • 昭和49年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 所管別の事項|
  • 第6 農林省|
  • 不当事項|
  • 補助金

公共事業関係補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの


(13)−(31) 公共事業関係補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)農林本省 (項)土地改良事業費(項)農用地開発事業費(項)農業施設災害復旧事業費(項)北海道農用地開発事業費
(組織)林野庁 (項)林道事業費
(組織)水産庁 (項)漁港施設災害復旧事業費(項)北海道海岸事業費
部局等の名称 農林省、林野庁、東北ほか4農政局等(注)
補助の根拠 土地改良法(昭和24年法律第195号)、農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律(昭和25年法律第169号)等
事業主体 道県2、市町村8、その他7 計17事業主体
補助事業 北海道斜里郡斜里町知布泊漁港海岸保全施設整備等19工事
上記に対する国庫補助金交付額の合計 252,379,795円

 上記の19補助事業において、工事の設計が適切でなかったり、工事の施工が設計と相違していたり、補助の対象とは認められないものを含めていたりなどしていて、国庫補助金20,910,479円が不当と認められる。
 これは、北海道ほか40府県で全国の工事箇所100,448のうち5.0%に当たる5,116(工事費115,826,722,413円、国庫補助金66,718,457,266円)について検査した結果である。
 これを道県別に掲げると、別表 のとおりである。

 (注)  東北、関東、近畿、中国四国、九州各農政局、及び北海道

(説明)
 前記の17事業主体においては、土地改良、林道開設及び災害復旧等の公共事業19工事を施行するに当たって、工事の設計が適切でなかったため施工した構造物の耐久性が低くなっていたり、積算が適切でなかったため工事費が過大となっていたり、監督及び検査が適切でなかったためコンクリートの強度等が設計に比べて不足していたのに設計どおり施工されたとして処理したり、補助の対象とは認められないものを含めて工事を施工したり、実際の費用より多額な事業費を要したことにして精算したりなどしていた。
 いま、上記の19工事について不当の態様別に示すと次のとおりである。

工事の設計及び積算が適切でないもの 2工事 不当と認めた国庫補助金 2,606,646円
工事の施工が設計と相違しているもの 14工事 不当と認めた国庫補助金 14,131,862円
補助の対象とは認められないものなど 3工事 不当と認めた国庫補助金 4,171,971円

(別表)

道県名 工事 事業主体 工事費 左に対する国庫補助金 不当と認めた工事費 不当と認めた国庫補助金 摘要

(13)北海道

斜里郡斜里町知布泊漁港海岸保全施設整備

北海道
千円
9,180
千円
5,508
千円
1,126
千円
675

護岸の異形コンクリートブロック工事の施工不良
(14) 同 天塩郡豊富町瑞穂南部地区農地開発事業農道開設 41,788 29,251 1,708 1,195 道路盛土等運搬工事費の積算過大
この工事は、農道延長765mを新設するため切土37,816m3 、盛土22,068m3 等を施工したもので、道路中間点の終点寄りの盛土10,399m3 については道路中間点前後で切土する土砂をブルドーザで終点方向に平均70m押土して盛土することと想定していた。しかし、ブルドーザの押土作業は押土距離が大きいとはなはだしく能率が低下して押土費が大幅に割高となるものであり、かつ、上記の10,399m3 は土捨場直近の箇所で切土するものであるので、これをそのまま土捨場に押土して捨土することとし、これに代わる盛土材としては、起点付近で切土してトラックで運搬捨土することと想定している15,748m3 のうちから所要量を使用することとしたとすれば、トラックによる運搬距離が若干増加するが、ブルドーザの押土距離が40mとほぼ半減し、工事費を相当程度低減できたと認められる。いま、これにより工事費を修正計算すると40,080,000円となり、本件工事費はこれに比べて約1,708,000円割高となっている。
(15) 同 苫前郡苫前町苫前漁港47年災害復旧 北海道 11,030 8,824 967 774 護岸根固めコンクリート工事の施工不良
北海道計 61,998 43,583 3,801 2,645
(16)岩手県 岩手郡滝沢村滝沢地区草地開発事業用排水施設設置 社団法人岩手県肉牛生産公社 45,080 20,286 5,761 2,592 用排水施設設置工事の施工不良及び設計過大
この工事は、牛のふん尿水の貯溜槽2基、ふん尿水を草地に圧送するための圧送用ポンプ及び塩化ビニールライニング鋼管延長645m等を施工したものである。しかして、設計によると、上記のうち塩化ビニールライニング鋼管については、内水圧16kg/cm2 に耐える規格のものを使用し、更に、圧送の際ふん尿水中の繊維分が管の接合部分を閉そくするのを防止するため、管の接合にはフランジ型継ぎ手(管の両端を密着させ周囲を締めつけて固定する継ぎ手)を使用することとなっていた。しかるに、鋼管には内水圧10kg/cm2 までしか耐えられない規格のものを使用しており、接合にはソケット型継ぎ手(両端に管をそう入して固定する継ぎ手。ソケット内で管の端と端が密着しない。)で施工していて、いずれも施工が設計と著しく相違している。
 また、圧送用ポンプについては、貯溜槽1基について1日当たり圧送能力604tのポンプを予備とも2台、貯溜槽2基で計4台設置することとしている。しかし、故障の際の予備としては、両貯溜槽をパイプで連結し共通分として1台を設置すれば足りたと認められる。
(17) 同 岩手郡玉山村巻堀地区飼料基盤整備事業隔障物設置 岩手中央酪農業協同組合 10,152 4,538 1,380 591 工事費の精算過大
岩手県計 55,232 24,824 7,142 3,183
(18) 秋田県  秋田市猿田地区第2期ほ場整備 上北手猿田土地改良区 19,848 7,939 5,109 2,043 U型コンクリートブロック水路工事の目的不達成
この工事は、ほ場整備の幹線用水路延長1,706m等を新設したもので、設計によると、U型コンクリートブロック水路上幅45cm延長378mは勾配940分の1で、また、上幅50cm延長832mは勾配2,000分の1で施工することになっていた。しかるに、測量及び丁張りを行わないまま施工したため、前者はうち290m、後者はうち380mの勾配が著しく設計と相違していて、なかには逆勾配となっている箇所さえあり、いずれも用水路としての効用を果たしていない。
(19)福島県 耶麻郡北塩原村林道場の沢線開設 北塩原村 18,760 7,504 3,638 1,455 路側擁壁コンクリート工事の施工不良
この工事は、林道延長1,019mを開設したもので、設計によると、路側擁壁コンクリートは、セメント使用量230kg/m3 、スランプ8cmで圧縮強度140kg/cm2 以上となるよう施工することになっていた。しかるに、第5号路側擁壁354m3 のうち264m3 は、セメント使用量が少なく、かつ、水を多量に使用したなどのため、採取した試料32個のうち31個の圧縮強度が69kg/cm2 から130kg/cm2 (平均103kg/cm2 )となっていて、強度が著しく低いものとなっている。
(20)茨城県 水戸市山根地区料基盤整備事業草地造成 水戸市 100,727 45,325 1,816 815 補助の対象外
(21)栃木県 塩谷郡栗山村奥鬼怒地区国営等草地開発附帯事業隔障物設置 栃木県 6,495 2,598 1,826 730 追い込み柵等工事の施工不良
(22)静岡県 静岡市牧ケ谷水路49年災害復旧 静岡市 5,100 4,977 704 687 底張りコンクリート工事の出来高不足
(23) 同 沼津市西浦久連農道47年災害復旧 沼津市 1,057 958 1,057 958 土留め練り積み石垣工事の施工不良
静岡県計 6,157 5,936 1,761 1,646
(24)兵庫県 神戸市 谷地区畜産経営環境整備事業肥培かんがい施設等設置 財団法人神戸市緑農開発公社 28,594 14,297 5,531 2,765 補助の対象外及び工事費の精算過大
この工事は、畜産経営環境整備事業肥培かんがい施設として深井戸2箇所及び貯溜槽等を施工したこととして工事費を精算していた。しかし、契約額8,465,000円で請負により施工したとしている深井戸のうち、1箇所(契約額相当額4,762,000円)は、実際は、別途の畑地かんがい用として本件補助の申請前既に工事費3,665,000円で施工済みのものであり、また、他の1箇所(契約額相当額3,703,000円)は、実際は契約額3,300,000円で施工したものである。
(25) 同 津名郡北淡町常盤水路49年災害復旧 北淡町 30,151 30,090 784 782 コンクリート水路の基礎ぐり石工事の施工不良
兵庫県計 58,745 44,387 6,315 3,548
(26)鳥取県 米子市二番川地区かんがい排水 受益者共同施行 5,720 2,574 3,135 1,411 水路の護岸コンクリートブロック空積み工事の設計不適切
この工事は、排水路延長320mを改修したもので、設計に当たって、その護岸延長636mのうち523mは、間知ブロックの4段空積みとし、その胴込め材には砂を使用することにし設計どおり完成していた。しかし、間知プロック空積みの胴込め材にはプロックを固定し背面地山の地下水を排除するなどのため、ぐり石、砂利などを使用しなければならず、胴込め材に砂を使用した本件護岸はその耐久性が著しく低いものとなっている。
(27)島根県 大田市大平地区農道47年災害復旧 大田市 2,293 2,221 731 709 土留め擁壁コンクリート及び路側コンクリートブロック練り積み工事の施工不良
(28)徳島県 鳴門市鳴門地区農業公社牧場設置事業家畜保護施設設置 社団法人徳島県畜産開発公社 51,240 20,492 1,756 702 鉄筋コンクリート飼槽工事の施工不良
(29)福岡県 八女郡広川町梯地区農地開発事業畑地造成 受益者共同施行 38,239 21,031 1,320 726 土留めえん堤のえん体コンクリート工事の施工不良
(30)長崎県 北松浦郡吉井町小井手川水路47年災害復旧 吉井町 8,979 8,781 632 618 護岸コンクリートブロック練り積み及び底張りコンクリート工事の施工不良
(31)宮崎県 東臼杵郡南郷村林道備中谷線開設 南郷村 27,600 15,180 1,228 675 土石切り取り等工事の出来高不足
合計 462,033 252,379 40,215 20,910