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  • 昭和49年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 所管別の事項|
  • 第6 農林省|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

水路トンネル工事の設計積算について処置を要求したもの


水路トンネル工事の設計積算について処置を要求したもの

 (昭和50年11月26日付け50検第408号 農林大臣あて)

 農林省が土地改良事業又は農用地開発事業として直轄で施行している水路トンネル工事のうち、昭和49年度実施にかかわる母畑開拓建設事業導水トンネル第3工区その他工事(その2)ほか40工事(工事費総額102億0917万余円)について検査したところ、下記のとおり、掘削、覆工コンクリート量等の設計、積算が適切でないと認められる事例が見受けられた。
 このような事態を生じたのは、同省が48年2月に水路トンネル工事の設計、積算に適用する土地改良事業等標準歩掛表及び積算施工参考資料(以下「標準歩掛かり」という。)を定めるに当たって、実績調査(46年実施)の方法等が適切でなく、その実績データ処理にも誤りがあったのに、そのデータをそのまま採用したこと、その後同省において水路トンネル工事を多数施行しているのに、これらの工事の実績を標準歩掛かりに反映させていなかったことなどによると認められる。
 ついては、同省においては、水路トンネル工事を今後も引き続き多数施行し、その工事費も多額を要するのであるから、速やかに施工の実態等を十分調査検討して標準歩掛かりの内容を整備し、もって予定価格積算の適正を期する要があると認められる。

1 本件各工事(水路トンネル総延長は31,565m)は、トンネル掘削及び覆工コンクリートの設計、積算に当たって、掘削の余掘厚(注1) 、覆工コンクリートの余巻厚(注2) については、同省が46年度に施行した水路トンネル工事37工事について実施した調査結果の数値に支保工の建て込み誤差分を加算してその数値を決定し、これにより掘削総量を288,555m3 、覆工コンクリート総量を78,719m3 と算定している(掘削費及び覆工コンクリート費の積算額総額27億7790万余円)。
 しかして、上記の設計、積算に当たって適用した標準歩掛かりの基礎となった実績データの内容についてみると、データの集計において誤算、転記誤りがあったり、掘削断面について測定位置や箇所数が区々であったり、特定の事業又は工事に片寄りすぎているものがあったり、1工事1データとデータ数の少ないものがあったり、異常値の棄却をしていなかったりなどしていて、その数値は標準的な施工実績として適当でないと認められる。また、支保工の建て込み誤差等については、本院が31工事について調査した結果によると、その建て込み誤差は微小で余掘りの範囲に含まれる程度のものとなっていて、この分をことさら加算する必要はないと認められる。
 いま、上記の点を考慮して歩掛かりを適正なものに修正し、これにより余掘厚、余巻厚を決定したとすれば、掘削総量は269,081m3 、覆工コンクリート総量は69,548m3 となり、積算額を約2億3000万円程度低減できたと認められる。

2 名取川農業水利事業上堀幹線用水路野田隧道工事ほか14工事(トンネル延長4,978m)は、掘削費の積算に当たって、支保工の1設置間隔を1掘削作業区間とし、これに要する掘削、ずりの積み込み、運搬及び支保工の設置時同等を合計した時間を1サイクルタイムとして、これを基に掘削費総額を2億5327万余円と積算している。
 しかし、上記のトンネルはいずれも土砂トンネルであって、このようなトンネルは、人力で少量ずつ掘削するのであるから、掘削作業と並行してずりの運搬作業を行うことができ、したがって、サイクルタイムの算定に当たっては、短い方のずり運搬時間を除いて計算すべきであると認められる。
 いま、上記により計算したとすれば、サイクルタイムは相当に短くなり、積算額を約1500万円程度低減できたと認められる。

 (注1)  余掘厚 設計上必要な覆工コンクリートの設計巻厚を確保し支保工を施工するためにやむを得ず生ずる掘りすぎ分の厚さ。

 (注2)  余巻厚 掘りすぎ分に対するてん充コンクリートの厚さ。

 

 検査の結果、本院の注意により、当局において処置を講じたものが次のとおりある。

 (飼料用小麦から生産するふすまの歩留りについて)

 農林省では、飼料需給安定法(昭和27年法律第356号)に基づき、飼料の需給及び価格の安定を図るため、外国産小麦を輸入し、これを製粉工場に売り渡して(49年度118万余t、395億1883万余円)ふすまを生産させているが、近年、低品質の小麦の輸入が困難となり、飼料用にも食糧用と同じ品質のものを使用していることもあって、飼料用小麦の買入れ価格が大幅に上昇しているのに対し、その売渡価格は比較的小幅な上昇にとどまっており、このため買入れ価格が売渡価格を大幅に上回り、多額の財政負担を生じている。

 しかして、飼料用小麦の売渡価格は、売渡しの際の条件となっているふすまの歩留り(47年4月以降60%としている。)、生産されるふすまの販売価格(工場渡し価格を1t当たり22,567円(49年8月以降は24,000円)と指示している。)、生産される小麦粉の販売価格(評価格1t当たり約68,000円)等に基づいて決定されているが、ふすまの歩留りについてみると、(ア)上記のように飼料用にも食糧用と同じ品質の小麦が使用されていて、ふすまの歩留りを引き下げればふすまより高価な小麦粉の生産量が多くなること、(イ)ふすまの歩留りをある程度引き下げても栄養上格別問題はなく、また、小麦粉の減少分は低価な他の飼料で代替できること、(ウ)製粉工場の実態からみてふすまの歩留りを引き下げ小麦粉の歩留りを高めることが可能であること、(エ)過去においてふすまの歩留りは、飼料の需給状況、飼料用小麦の売買価格差等を考慮して55%又は60%としてきたことなどを考慮すれば、ふすまの歩留りを引き下げて小麦粉の生産増による利益の増加分だけ飼料用小麦の売渡価格を引き上げることによって、財政負担の軽減を図ることができると認められた。

 上記について当局の見解をただしたところ、農林省では、51年度から飼料用小麦を売り渡す際ふすまの生産条件を改め歩留りを55%に引き下げることとし、これに伴う代替飼料及び小麦粉の需給調整等の対策の具体化に着手した。