(昭和50年11月14日付け50検第403号 建設大臣あて)
建設省の補助を受けて埼玉県ほか40事業主体が昭和48、49両年度中に施行している荒川右岸流域下水道新河岸川幹線管渠築造工事ほか152工事(工事費総額349億3117万余円、国庫補助金186億1148万余円)について検査したところ、次のとおり、薬液注入費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。
すなわち、上記の153工事は、下水道の管きょ等を新設するもので、これに伴って管きょ布設箇所等周辺の地盤強化や湧水の防止を図るための薬液注入を施工しているものであるが、これらの工事について各事業主体が作成する予定価格の内訳についてみると、薬液注入費については、地方公共団体が施行するこの種工事に適用するものとして47年に同省が定めた積算基準に示されている作業班1編成の1日当たり標準薬液注入量1,800lを適用して総額46億9508万余円と算定している。
しかして、上記の積算基準に示されている標準薬液注大量は、小規模な薬液注入工事の例が大多数であったと認められる42年から45年までの注入実績等を考慮して定められたものであるが、本院が前記の各工事について施工の実態を調査したところ、近年では施工規模の拡大、作業機械の改良等に伴って作業能率が向上し、作業班1編成の1日当たりの注大量は前記の標準注入量の約2倍から3倍程度となっている状況であって、前記の積算基準の標準注入量は施工の実情に適合していないと認められる。そして、本件各工事の施行に当たって施工の実態を考慮して積算したとすれば、薬液注入費積算額を相当程度低減できたと認められる。いま、横浜市が施行した戸塚処理区戸塚右岸幹線下水道整備工事(その3)の場合を例に採ると薬液注入費積算額4465万円を約950万円(国庫補助金570万円)程度低減できたと認められる。
このような事態を生じたのは、同省が定めている積算基準が最近の施工形態の変化等に適合して整備されていないことによると認められる。
ついては、下水道整備の計画的推進が図られている現在、同省の補助を受けて地方公共団体が施行するこの種工事が今後ますます増加することが見込まれるのであるから、同省において施工の実態を十分調査検討の上積算基準を早急に整備し、これにより各地方公共団体の予定価格の積算を適切なものにさせ、もって国庫補助金予算の効率的執行を図る要があると認められる。
(昭和50年11月27日付け50検第410号 建設大臣あて)
建設省及び北海道開発局が昭和49年度中に直轄施行している電源開発等を含む多目的ダム建設事業は、大渡ダムほか10ダム(有効貯留量17,800千m3 から95,000千m3 )で、この建設に要する総事業費は、基本計画では総額2098億円(44年1月から49年10月までの間に公示)、49年度末では総額2812億8000万円に上っており、このうち、事業開始から49年度末までの間に910億0962万余円を支出(うち、49年度支出額195億0543万余円)し、東北電力株式会社ほか6会社及び岩手県ほか2県から電源開発分の負担金として24億1680万余円(うち、49年度分8億8921万余円)、このほか上水道用水などの使用権設定予定者からの負担金30億4228万余円(うち、49年度分11億1008万余円)を徴収している。
しかして、上記の負担金は、特定多目的ダム法(昭和32年法律第35号)等の関係法令及びこの法令の規定を受けて同省が関係行政機関と行った協議に基づいて算定されており、その負担割合は、電源開発分0.5%から16.2%、上水道用水分など0.4%から18.8%、治水分79.2%から99.5%となっている。このうち、電源開発分について、次のとおり、その算定が適切でなく、ひいては国が過大な事業費を負担する結果になっていると認められる点が見受けられた。
すなわち、上記の法令によれば、多目的ダムの建設に要する費用は、ダムの使用権設定予定者がそれぞれの負担割合に応じて負担することになっており、このうち、電源開発及び治水の負担割合は、身替り建設費又は妥当投資額のいずれか低い額を基にして所要の計算を行い算出することになっている。そして、電源開発分については、上記の負担割合を算定する場合の妥当投資額は、山元発電単価(注) に当該ダムの設置により発生する有効出力及び有効電力量を乗じた額を基礎として算定することになっており、更に、この山元発電単価については、建設大臣が関係行政機関と協議して定めることになっている。
上記の法令の規定を受けて、同省では、42月6日に関係省庁と協議して山元発電単価を定め、前記の11事業においては、それぞれ基本計画策定時に、この山元発電単価の数値を適用して電源開発関係の妥当投資額を算定し、この額が別途計算した身替り建設費の額を大きく下回っていたことから、電源開発分については妥当投資額による(国が負担することになる治水分については身替り建設費による)こととして、これにより算定した比率で負担割合を決定している。
しかして、上記の山元発電単価は、40年度の9電力会社事業報告書に示されている電気料金の総括原価を基として定めたもので、その後現在に至るまでそのまますえ置かれている。
しかし、同省が行った前記の協議によれば、同単価は、電気料金の算定の基礎となった総括原価を基準として算出することになっており、この総括原価は、49年6月に電気料金の大幅な値上げ(平均56.8%)が一斉に行われた際の基礎資料によれば、40年度当時に比べて大幅に上昇しているのであるから、これにより山元発電単価を適正なものに改めて負担金を算定したとすれば、電源開発分の負担割合は相当に増加し、これに対応して国が負担する治水分の負担割合は減少することになると認められる。
ついては、同省が現在施行している前記の各事業は残事業費が多額に上っており、更に今後引き続き多数の多目的ダムの建設が見込まれている状況であるので、速やかに関係行政機関と協議の上山元発電単価を改定し、もって事業費負担の適正を期する要があると認められる。
(注) 山元発電単価 各電力会社の総括原価のうち、発電部門の総原価を有効出力当たり、有効電力量当たりに換算したもの
検査の結果、本院の注意により、当局において処置を講じたものが次のとおりある。
関東地方建設局が昭和49年度中に施行している三郷排水機場ポンプ設備製作その1工事ほか10工事について検査したところ、次のとおり、一般管理費等の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。
すなわち、上記の各工事の予定価格の内訳のうち「一般管理費等」(積算額合計3億8483万円)についてみると、同地方建設局が定めた「機械設備積算要領」に基づき、工事に使用する資材のうち空気圧縮機等の機械単体及び軸受等の部品で1個の価格が100万円以上のものについてはその価格の2分の1を、また、100万円未満のものについてはその価格の全額をそれぞれ対象として所定の一般管理費等率を乗じて算定していた。しかし、機械単体及び部品は価格の大小にかかわりなく、それを取り付けたりすえ付けたりするだけで、特段の加工をしないものであるから、100万円未満のものについて鋼板等一般の材料と同様にその価格の全額に一般管理費等率を乗ずるのは適切でないと認められ、建設本省及び他地方建設局の積算基準をみても、機械単体及び部品、特殊な二次製品については金額の区分なくその購入価格の2分の1を一般管理費等の計算対象としている。いま、前記の各工事について適切と認められる計算により積算したとすれば積算額を約1200万円程度低減できたと認められた。
上記について当局の見解をただしたところ、関東地方建設局では、50年6月に「機械設備積算要領」を改め、機械単体及び部品等について金額の区分を設けることなくすべてその購入価格の2分の1を一般管理費等の対象とすることとする処置を講じた。